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#長編
教会本部の図書館。
知見を広めるためにもその国の本を読むことで得られる知識はかなり大きい。なにより私は祖国以外の知識を知らない。そんなわけでアルベルト様に「見てみたい」と言ったらその翌日に教会に赴くこととなった。
朝食を食べ終わったタイミングでアルベルト様に「教会案内がてら行くぞ」と腕を掴まれ、薄い灰色の街――教会本部に転移したのだ。
「ここでは俺から離れないように。いいか、絶対に手を離すな」
(モフモフの時との温度差! モフモフは甘えてくるのから凄く可愛いのに、人の姿だとこれがデフォ……)
もっともアルベルト様が不機嫌なのには色々理由がある。本来なら私ひとりでも転移回廊を使って薄い灰色の街にいけるのだが、他の人外たちが転移先を変えることが勃発。その結果、ハナちゃんと、クロちゃんと遭遇して今に至っている。
私が歩くと、人外の絆もちが増えると考えている節がある。心外だ。
(私のせいではない。たぶん、きっと!)
***
転移の先はおとぎ話のような豪華絢爛な城よりも、数十倍ものスケールを持った荘厳の建物が目の前に広がっていた。降り立ったセレニテ広場は楕円形の形をしており、大理石の石柱がいくつも並んでいる。足場の石畳は芸術的で目を楽しませた。
(すごい……圧巻の一言だわ)
「ここが正面入り口のセレニテ広場だ。正面奥にあるのがメディカモン大聖堂、右にあるのは宮殿で教皇の公邸。その奧が機密文書館に、中庭、セレニテ美術館がある」
「建物はどれも白を基調としているのですね」
「ああ。大聖堂の裏は庭園と修道院に礼拝堂なども含めて、教会本部の敷地内だ。この教会本部を中心に薄い灰色の店や住宅街がある」
アルベルト様は手を繋いだまま再び転移を踏む。次に荘厳の建物――メディカモン大聖堂が視界に映ったのを見るに、どうやら裏側に飛んだようだ。
真っ白なモミの木に囲まれた場所に、その修道院はあった。左右対称の灰色の美しい建造物の中は、思った以上に天井が高い。
室内に入るとフロアマップがあった。
礼拝堂、教会堂、食堂、集会場、部屋などを見る。本来であればシルヴィアが共同生活をする施設だとか。図書館は別館で独立しているらしい。
(思ったよりも生活水準は高そう……?)
食堂のバイキング形式となっている白い料理を見て「ないな」と力強く頷いた。
見る限り清潔は保たれており、生活水準もフォルトゥナ聖王国と大差なさそうだ。
「お前とこうやって歩きながら説明するのも楽しいな」
「そう言うのは誰にでも?」
「まさか。手を繋いで直々に案内したのはシルヴィアだけだ」
ちゃっかり普通に手を繋いでいるのを恋人繋ぎし始めた。
「!?」
「外堀から埋めていくのも良いと思ってな」
(この男、ガチだわ)
爽やかにかつ確実に周知の事実となる実績を積み上げていく。というかなぜに対抗心を燃やしているのか不明だ。ハナちゃんも、クロちゃんも仲良しではあるが恋愛関係など微塵も感じていない。
(ベルナール様? いや家族だし。アルベルト様は何と戦っているか)
それとも呪いが解けかけ始めたことで独占欲や執着あるいは、第六感的に奪われるかもしれないと恐れているのだろうか。
(かといって話して勘付かれるのもよくない)
その後も修道院内を見て回る。さすが本部と言うだけのことはあって広い。中庭のある回廊の柱一つ一つが芸術的で、思わずキョロキョロと見回してしまう。
(一度行ってみたいと思っていた海外の建築物に似ているから、観光気分で訪れるのは良いかもしれない)
歩きながらも周囲の視線がヒシヒシと感じられた。この教会で最高責任者と初めて姿を見せた聖女候補なら、注目されても当然かもしれない。
それは気にならないのだが、なぜかアルベルト様も私をチラチラと見てくる。それが思いのほか気になった。
「……人のことをジロジロと見て何です?」
「いや、そういえば今日は聖女候補の服だなと思って」
今日の服装は、ゴシック・アンド・ロリータ寄りの白の修道服に黒い革のブーツ姿だ。スカートの裾は歩きやすいように膝下までにして、袖の裾が長い部分には、金の刺繍をふんだんに使った竜と柊など植物などの幾何学模様に描かれており、ベルナール様曰く防護術式が編み込まれているという。
「よく似合っている。……綺麗だ」
(こ、この人は!!)
さらっと恥ずかしげもなく告げて、頬にキスをする。周囲から黄色い声が上がったが、気にしない。気にしてもしょうがないと悟った。
「なにするのですか」
「虫除けと、警告だ。……お前が俺に惚れているではなく、俺がお前に求愛していると見せつけておかなければ勘違いする連中もいるだろうからな」
「今までの女癖のせいでしょうが」
毒づいたら「ぐう」と図星だったのか、ちょっと凹んでいた。これは今まで適当に遊んでいた彼の自業自得だ。
(記憶を奪われた喪失感で自暴自棄になった……とかあるかもだけど、モテるアルベルト様の恋人関係となる場合、確実に火の粉が掛かる! そんな面倒なのは嫌だわ)
「……お前に求愛するに当たって、ちゃんと今までの関係は清算している」
「へえ。そうですか」
単調な声が出た。とりあえずそのあたりはキッチリしているのは、感心した。ほんの少しだけれど。
「信じられないかもしれないが……信じて貰えるように尽力する」
「がんばって」
「……本来の姿の時との温度差」
「モフモフは正義だもの」
軽口を叩いたが、アルベルト様はムッと反応する。
コメント
1件
第23話読み終わったよ!アルベルト様の温度差、モフモフのときはあんなに甘えてくるのに人間形態だとクールででも手は恋人繋ぎしてくるギャップがたまらん😂 教会本部の描写が細かくて世界観にどっぷり浸かれたし、「俺がお前に求愛してる」って宣言するアルベルト様のストレートさにこっちまで照れるわ。シルヴィアの「モフモフは正義」返しも可愛くて、今後の二人がどうなるか楽しみ!