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第4話あの日
横には、強い眼差しで前だけを向いている琉生
早い吐息が零れ落ち、疲れている様子が容易に想像できた
それでも足を止めない
サンダルだから、走りにくいだろうに
よく見ると、足の小指がサンダルに擦れて、傷ついている
それでも前だけ見ている
本当に、力強い眼で
短いようで、長い道のり
やっと着いたこぢんまりとした神社
ここを見ると、やっぱりあの日のことを思い出してしまう
〈…ここで、初めて琉生にあったんだよね、〉
〈あの時の琉生は可愛かったなぁ…、w〉
と、苦笑い
あの日、私はこのまちに引っ越してきたばかりだった
丁度近くで時期の少し早い夏祭りがあると聞き、荷解きの合間に見に来ていた
______________________
〈ふぅ…!〉
〈取り敢えず、粗方荷物は部屋に入れれたね〉
〈お母さんー、そっち大丈夫?〉
私は一回で荷解きをする母に声をかける
《私は大丈夫だよー》
《夕華は終わった?》
〈まだに決まってるでしょ…w〉
少し呆れ顔
なにせ、先程こちらに着いたばかりなのだから
〈んー…!〉
〈疲れたよ〜…〉
と、座りながら背伸び
数十分とはいえ、座って作業ばかりなのは性に合わない
〈あっ、そういえばお母さん〉
〈さっき車から夏祭りのチラシが見えたよ!〉
〈息抜きに行ってきてもいいかなぁ…?〉
うるうると、母に懇願
実質、一刻も早く明日の自分に丸投げしたいからである
《うーん…そうねぇ…》
《お父さんー?いいかしら、?》
{んー、まあいいんじゃないか?}
と、奥の部屋から了承の声
〈やったぁ!〉
〈早速、もってきた浴衣に着替えるね!〉
《はしゃぎすぎよ、w》
《自分で着替えられる?》
〈もちろんでしょ!〉
パァァっと、満遍の笑み
母は苦笑いだったが、私は知らない
もう目の前の楽しいことに集中することしか考えられなくなっていた
〈じゃーんっ!〉
〈どう?一人で着られたでしょ?〉
《いいじゃない!》
{…まあ、1時間はかかってたけどな…}
と、父がぼそっと言う
だが私の耳は聞き逃さなかった
〈ちょっとーっ?〉
〈お父さん??〉
〈1時間でも、着られたんだからいいじゃんっ!〉
ぷんぷんと、いかにも起こっているという表情で言う
{ごめんって〜…w}
私は怒りつつも、内心笑っていた
〈じゃあ、行ってくるね〜!〉
《いってらっしゃ~い、気をつけてね!》
〈はーい!〉
いつものように元気よく、玄関を開けた
扉の先は、まだ見ぬ世界
星空と街灯が光り、私を照らしてくれる
ゆっくり、ゆっくりと歩く
街を観察するように、ゆっくりと
〈チラシだと、この辺だけど…〉
少し先に明るい鳥居が見えた
〈あ!絶対あそこだ!〉
嬉しさか、楽しみな気持ちが早ったのか、少しばかり駆け足になる
すると、私と同じくらいの年頃の男の子達が浴衣を着て鳥居に入っていくのを見た
(やっぱりここなんだ!)
でも、一つ疑問
その男の子達は、手を繋いでいたこと
……いや、手を繋いでいた、というよりかは、引っ張られていたみたいな感じだったこと
〈なんだったんだろ…〉
小声でひと言
でも、そんなことすら鳥居の中を見たときには忘れていた
〈わ〜っ!✨️〉
(すごいっ!こんなに屋台がいっぱい…!)
(人も沢山…!迷わないようにしないと…)
まずは、私の大好物の林檎飴
それから、たこ焼きも美味しそう…!
と、次々に買っていく
(こんなに買って食べきれるかな…)
そう、思いもしたが、家には両親もいるので余ればあげればいいと、私の中で解決した
〈うーん…、人が多すぎてベンチ空いてないし…〉
〈食べ歩きは危ないし……〉
〈何処か休める場所はないかな…〉
と、隅のほうで独り言
すると、横に座っていたお婆さんが
{向こうの林の奥に開けた場所があるよ}
{そこなら、座れるし休める}
〈えっ、お婆さんは行かないんですか…?〉
そんなところがあるなら、お婆さんも行きたいだろうに…
{私はいいよ、この腰だと林を抜けられん}
{少し遠いからね}
と、昔話をしてくれた
{あの場所は、私が昔若かった頃に爺さんと会ったところだよ}
{私も今のお前さんのように、ここで休む場所を探してた…}
星を眺めて言う
{あそこの景色は何処よりも綺麗だった…}
{お前さんも、きっといい思い出ができるよ}
私はお婆さんに軽くお辞儀をし、教えてくれたほうへ歩き出してみる
お婆さんの言う通り、林の奥は深く、奥が見えない
でも、お婆さんを唸らせた絶景を見るため、休む場所を得るため、草をかき分けていく
パアァァ___
林を抜けたようだ
ドンッ__
と、景色を見る間もなく、花火が打ち上がった
間髪入れず打ち出された花火玉は、空で砕け散り、花となって咲く
〈綺麗……〉
ただひと言。
でも、それだけで伝わる言葉
それしか出てこなかった
ぼーっと、空を眺めていると、私の前に一人の男の子がいることに気づいた
それは、先程鳥居の前で見かけた手を引かれていた男の子だと気づいた
〈君、どうしてこんなところに?〉
気づいたときには声をかけていた
何故か、君に惹かれたから
キラキラとした眼で花火を見つめて、すごいと、ひと言だけ言う貴方が、私に似ていて
照らされた横顔が眩しく見えて
「えっ、えっト!!」
酷く緊張しているかのように、彼は返事をした
びっくりしたのはもちろん、その反面可愛らしくも思えた
私は思わず、顔に気持ちが出ていたらしい
彼が私の顔を見るなり、あたふたとしている様子が捉えられた
〈君!wおもしろいねぇ!ww〉
咄嗟に出た言葉だった
失礼だったろうか
沈黙が私には似合わなくて、つい
「は、?」
そりゃそうだよね、そういう反応になる
私でもそうなると思う
でも、やっぱりみんな私のテンションが嫌いなのかもしれない
私はポジティブすぎるから
それに合わない子も多い
それでも、私は貴方と話してみたい
仲良くしてみたい
こんな私でもいいのかな、?
〈だってさぁ?そんな緊張して話し始めた人早々いないんだもん!ww〉
と、少し笑いながら
流石に踏み込みすぎただろうか
加減がわからない
〈ねぇ!君もここに花火を見に来たのかい?〉
素朴な疑問だ
ここは、私もお婆さんに教えられてきたところだ
地元の人すら、知っているとは限らない
ましてや、私と同い年のような子が知っているとは思えない
「え?」
この反応から、やはり偶然だったことがわかった
先程、お婆さんに言われた言葉を思い出す
(きっといい思い出ができる、か…)
そうかもしれない
偶然でも君と出会った今が、私の中で一番のいい思い出になったかもしれない
「い、いや…ち、ちがう…けど……」
〈そんなおどおど話すことないよ〜w〉
〈気軽に!ね?〉
本当におどおどと話す子だ
何かに怯えているかのように
何かに影響されているかのように
でも、この言葉は私の知らない所で地雷を踏んでしまったらしい
今思えば、本当に不躾な言葉だったと思う
〈あ!君!名前は___〉
「教えたくないです……、」
放たれた言葉は、思ったより私の心に刺さった
さすがに、初対面だったもんね…
気を許せる人のほうが珍しい、か…
そのまま彼は草むらの方へ走り出してしまった
無意識に伸ばした手は、誰にも掴まれることはなかった
ふいに、後ろを振り向く
崖の下のお婆さんの言っていた絶景を見る
〈なぁんだ…、お婆さんの嘘付き〉
〈全然綺麗じゃないじゃん…〉
と、座り込む
さっきまで綺麗だと思っていた花火も、もう何も感じなかった
まるで、大切な何かを落としてしまったみたいに
一人になった寂しい草むらの中でただただ明るいだけの花火の音と光の余韻だけが残った
次回第5話➾手紙
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おっふ、