テラーノベル
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地下へ続く階段は、どこまでも長かった。
壁には古い照明が等間隔に取り付けられているが、その多くは切れている。残った明かりも赤く点滅し、階段を下りるたびに、まるで施設全体が警告を発しているようだった。
先頭を歩くのはK-T。
そのすぐ後ろにレイが続き、メバル、マサカゲ、ミステー、カキ、アオノが続いている。
「中央塔地下駅って、地下に駅があるってこと?」
メバルが小声で尋ねた。
「見れば分かる」
K-Tが答える。
「そういう問題じゃないよ。何で訓練施設の下に駅があるの?」
「軍用輸送路だ」
アオノが端末を確認しながら言った。
「過去の地図に記録がある。地下鉄ではなく、軍用車両と物資を運ぶための専用路線」
「そんなものが町の下に?」
マサカゲが険しい顔をする。
「使用記録は二十年前に途絶えている」
アオノが続けた。
「しかし、電力と通信設備は現在も稼働している」
「誰かが使っている」
レイが言った。
階段の先に、巨大な鉄扉が現れた。
K-Tが近づくと、扉の横に設置された認証装置が赤く点灯する。
『管理者認証を確認』
扉が左右へ開いた。
その先に広がっていたのは、地下駅だった。
長いホーム。
線路。
錆びた案内板。
壁に残る古い紋章。
そして、ホームの向こう側で点滅する無数の警告灯。
「本当に駅だ……」
カキが呟いた。
「でも、列車が来る気配はないね」
メバルが線路を覗き込む。
その瞬間、遠くから機械音が響いた。
ゴウン、ゴウン、と、重い車輪が回る音。
「来る」
ミステーが言った。
「何が?」
「寂しい列車」
「列車に感情を持たせないで!」
暗い線路の奥から、装甲列車が現れた。
車体は黒く、窓はすべて塞がれている。前面には小型の砲塔が取り付けられ、側面からは折りたたまれた機械の腕が伸びていた。
列車はホームへ入ると、扉を開いた。
内部から警備ロボットが一斉に降りてくる。
「警備反応、多数」
アオノが言う。
「数は?」
「二十七体」
「多すぎない?」
カキが後ずさる。
K-Tが拳銃を抜いた。
「全員、訓練の通りに動け」
「訓練じゃなくて実戦だよ!」
メバルが叫ぶ。
「だからだ」
ロボットの一体が銃口を開いた。
K-Tが前へ出る。
銃弾を防弾チョッキで受けながら、トンファーでロボットの腕を弾いた。続けて拳銃を抜き、関節部へ二発撃ち込む。
ロボットが崩れた。
「メバル、左」
レイが叫ぶ。
メバルは反応し、左から迫ったロボットの攻撃を剣で受け流した。
以前なら、そこで足が止まっていた。
しかし、メバルは刃を斜めに滑らせ、攻撃の方向を変えた。そのまま一歩踏み込み、ロボットの胸部へ剣を叩き込む。
装甲がへこみ、ロボットが倒れた。
「今の、できた!」
「喜ぶのは後だ!」
レイの大剣が、メバルの頭上を通過した。
その背後にいたロボットが、真っ二つに切断される。
「後ろにいたの!?」
「敵は待ってくれない」
レイは大剣を折りたたみ、短い形へ戻した。
別のロボットが、レイの懐へ飛び込む。
レイは大剣の柄で受け止め、身体を回転させた。ロボットを投げるように横へ流し、マサカゲの前へ送り出す。
「マサカゲ!」
マサカゲはすぐに反応した。
倒れかけたロボットの腕をつかみ、腰を入れて投げる。
ロボットは別の二体へ衝突し、三体まとめて床へ転がった。
「今の動きはいい」
レイが言った。
「投げた相手を利用した」
マサカゲは頷く。
「仲間の位置も確認した」
「なら、次は足元を見る」
レイが指摘した。
マサカゲの足元へ、床から小型ドローンが飛び出した。
ミステーの矢が、そのドローンの中央を射抜く。
「足元は確認した」
ミステーが言った。
「私が先に射た」
「助かった」
マサカゲが答える。
ミステーは次の矢をつがえた。
列車の屋根から、砲台が展開する。
「上方に敵」
アオノが言う。
ミステーは空を見上げた。
砲台が銃口を向ける。
しかし、射線上にはメバルとマサカゲがいた。
ミステーはすぐには撃たなかった。
周囲を確認する。
砲台の角度。
仲間の位置。
矢が外れた場合の方向。
そして、撃つべき瞬間を待つ。
「今」
ミステーが矢を放った。
矢は砲台の銃口へ入り、発射された弾丸を押し返すように内部へ突き刺さった。
砲台が火花を散らして停止する。
「すごい!」
カキが叫ぶ。
「今のは撃っていい場面だった」
ミステーが答えた。
「ちゃんと考えてたんだ」
「いつも考えている」
「歌ってるときも?」
「歌っているときは、もっと考えている」
「そうなんだ……」
カキの前へ、二体のロボットが迫った。
カキは拳銃を構えた。
指を引き金から離したまま、標的を見る。
一体目の背後には壁。
二体目の後ろには、メバルがいる。
そのまま撃てば、外れた弾がメバルへ向かう可能性がある。
カキは一歩横へ移動した。
メバルとの射線を外す。
「カキ、撃てるか?」
K-Tが尋ねる。
「撃てる。でも、今は撃たない」
カキは銃を下げ、近くに落ちていた鉄棒を拾った。
ロボットの攻撃を鉄棒で受け、体勢を崩す。
その隙に、メバルがロボットの腕を斬り落とした。
「今の判断は正しい」
マサカゲが言う。
カキは息を切らしながら頷いた。
「撃たなくても、戦える」
「銃を使う者が、銃に頼らないのは悪くない」
レイが答えた。
一方、アオノはホームの端にある管理端末へ接続していた。
列車の警備システムを停止させるためだ。
しかし、端末へアクセスした瞬間、画面に大量の暗号が流れ込んできた。
「外部から干渉されている」
「停止できるか」
K-Tがロボットを蹴り飛ばしながら尋ねる。
「誰かがこちらの侵入を認識した」
アオノの画面に、戦闘中の全員の映像が表示された。
メバルが左から斬り込む。
マサカゲが敵を投げる。
ミステーが矢を放つ。
カキが銃を下ろす。
レイが大剣を展開する。
映像の横には、それぞれの行動予測が表示されていた。
『メバル――左から攻撃』
『マサカゲ――足元を狙う』
『ミステー――上方へ射撃』
『カキ――武器を狙う』
『レイ――大剣を展開』
「誰かが、私たちの動きを読んでいる」
アオノが言った。
「戦闘中の行動をすべて予測している」
「なら、予測できない動きをしろ」
K-Tが答えた。
K-Tは、突然ロボットへ背を向けた。
「Kさん、危ない!」
メバルが叫ぶ。
ロボットがK-Tへ銃を向ける。
しかし、K-Tはその場でしゃがみ込んだ。
銃弾は背後から迫った別のロボットへ命中する。
K-Tは倒れたロボットを踏み台にして跳び上がり、列車側面の装甲へ飛び乗った。
予測画面が乱れる。
『行動パターン、再計算』
レイが理解した。
「過去の動きを使わないつもりか」
「記憶されていない動きを使う」
K-Tは列車の側面を走り、砲塔の死角へ回り込んだ。
紫色の鞘から刀を抜く。
刀身が砲塔の接続部を切断した。
砲塔が線路へ落ち、火花を散らす。
レイが大剣を展開した。
「なら、私も変える」
レイは大剣を振り下ろさず、刃を途中で折りたたんだ。
短くなった刃を使ってロボットの脚部を切り、倒れた敵を足場にしてさらに奥へ進む。
メバルも、正面の敵を倒すのではなく、剣で攻撃の方向を変えた。
ロボット同士が衝突する。
マサカゲは投げたロボットを盾にし、敵の銃撃を防いだ。
ミステーは、射るふりだけをして敵の照準をそらした。
カキは銃を構えたまま、撃たずに敵を誘導する。
アオノはそのすべてを見ていた。
「行動予測の精度が下がっている」
「今だ」
K-Tが言う。
アオノは管理端末へコードを入力した。
列車の警備システムが停止する。
残っていたロボットが一斉に動きを止めた。
駅に、静寂が戻る。
しかし、アオノの画面には、別の情報が表示されていた。
『中央塔地下駅――侵入者確認』
『管理者Xへ報告』
『予測モデルを更新』
「誰かに報告された」
アオノが言った。
K-Tは列車の奥を見つめた。
「Xはここにいるのか」
「反応は一つ。列車の内部」
アオノが答える。
K-Tが列車の扉へ近づく。
レイが隣に立った。
「先に行く」
「俺が行く」
「一人で行くな」
レイの言葉に、K-Tが止まった。
メバルたちも武器を構える。
「今回は、みんなで行こう」
メバルが言った。
「誰か一人に頼る戦い方は、もうやめるんでしょ?」
K-Tは仲間たちを見た。
そして、列車の扉を開けた。
内部は暗く、座席はすべて取り払われていた。
壁には、無数のモニターが並んでいる。
そこには、K-Tとレイの過去の戦闘映像が映し出されていた。
若いレイが大剣を振る。
K-Tが杖を構える。
ショットガンの発砲。
武器が破壊される瞬間。
そして、記録の最後に、現在の六人の姿が映る。
『新規戦闘記録を取得』
『対象:K-T』
『対象:レイ』
『予測誤差、拡大』
列車の奥で、誰かが拍手をした。
ゆっくりとした、乾いた拍手だった。
「予測できない動きは、やはり興味深い」
低く、穏やかな声が響く。
長いコートの人物が、暗闇の中から姿を現した。
金髪。
右目に刻まれた「✘」の傷痕。
穏やかな表情。
そして、右腕を隠すように揺れる長いコート。
「初めまして、と言うべきかな」
その人物はK-Tを見つめた。
「俺は、お前をよく知っている」
K-Tが刀を構える。
「何者だ」
男は微笑んだ。
「その質問は、もうすぐ必要なくなる」
列車の照明が一斉に点灯する。
男の姿が、はっきりと浮かび上がった。
彼はK-Tとよく似た立ち方をしていた。
ただし、右袖だけが不自然に垂れ下がっている。
男は、静かに告げた。
「俺はX」
K-Tの刀が、わずかに揺れた。
Xはその動きを見逃さなかった。
「そして、お前の二十年後だ」
#K-Takasaka
K-Takasaka
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K-Takasaka
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コメント
1件
「わあ、第8話めっちゃ熱かった…!!🔥✨ 地下駅での実戦訓練が一気に本格的な戦闘になって、しかもXの登場で物語ががらっと変わる感じがエモすぎる😭💕 特に「予測できない動きをしろ」ってK-Tの判断と、みんなで連携して戦う姿がかっこよすぎて感動したよ…!ラストの『お前の二十年後』って台詞、マジで衝撃的すぎて鳥肌立った…!! 続きが気になりすぎる😳🌟」