コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
???「今あいつそんなことになってんの……?」???「…………ついにそんなことに……」
???「ほんと馬鹿。あいつ。」
???「まぁまぁ今は大人しくしてくれてますし」
ここは、死神組本拠地。「不山橙」と「桃時」が「紫雲雨花」について「兎白」と「瑠璃人」に説明していた。この二人には説明すべきだと橙も桃時も想ったからである。
橙「雨花さんは、「神魂滅裂」という技を習得するためにあんな無茶苦茶な修行をし続けているんです。自分という存在を完全に消し去るために。」
桃時「アタシたちがどんな言葉をかけてもあいつはやめるつもりはないみたい。あいつ………本当に強情。そして面倒臭い。本当に……はぁ……」
瑠璃人「あいつ自分のこと。何でそんなに消し去りたいんだ?それも教えてくれないのか?」
橙「確か前に兎白さんに聴きましたよね?雨花さんの過去について。」
兎白「あいつがどうやって、どんな罪を犯したのか。本当は本人の口から聴きたかったが、このままだとあいつの事を何も知らず、終わってしまうかもしれない。俺の知ってる雨花のこと。全て話そう。」
橙・桃時・瑠璃人「…………」
兎白「雨花は……生前、小学生の頃からよく人を傷つけてしまったみたいなんだ。足をひっかけたり、殴ったり、叩いたり、もちろん本人はそれをいわゆる「いじめ」をしているとは微塵も想ってなかった。悪ふざけのつもりだった。でももちろん、そんなことをすれば周りは雨花を遠ざける。その頃の雨花は何故人が離れていくのか分からなかったようで、人を傷つけてしまい続けたこと。そしてそれにほんの少しも気づかなかったこと。そのこともあって雨花は完全に自業自得だと想っている。前に雨花が言った「不可抗力とかじゃなく本当に自分の意思で傷つけてしまった」というのはきっとこういうことを言っていたんだと想う。雨花は自分が悪いことをしているとは当時は本当に想えてなかった。人が嫌だと言っても勝手にそれは冗談で言っていると思い込んでやり続けて……そんな奴な自分は大罪人。許されるべき存在じゃない。魂がどう変わってもどう消えても自分は何らかの形式で罰が下されるべき。本来なら罰を下されて楽になることも許されない。でも何もしない訳にもいかない。なら罰を貰って自分を戒め続ける。それぐらいとひたすら謝り続けることしかできないと感じてる。そして、雨花がこれらのことをそう強く想わせたのは……」
橙「想わせたのは?」
兎白は一呼吸いれた。そして……
兎白「すまないが、ここまでしか俺は知らない。」
桃時「そうなのね……」
兎白「でも、そのことが主なきっかけで雨花が自分を大罪人だと感じるようになった。今まで友達ができなかったのも、全部全部人を傷つけ続けてしまっている自分のせいだと。自分は取り返しがつかないことをし続けてしまっていると。自分はクズにすらなれないと。」
橙・桃時・瑠璃人「…………」
橙も桃時も瑠璃人も兎白もしばらく黙っていた。しかし……
桃時「……やっぱり昔から雨花は雨花なのね。どうしようもなく弱くて、どうしようもなく馬鹿で、どうしようもなく優しい。それが雨花なのよね。「人を傷つける」ことで感じる罪の意識が本当に恐くて、そして人を傷つけてしまったらその人の生き方を変えてしまうとちゃんと分かってる。」
橙「そうですね。人を傷つけてしまった。でもそれを悪いこととちゃんと認識できたんですから。それで充分です。大切にしたいならこれからは大切にしていけば良い。それに「自分の意思で傷つけた」と雨花さんは言ったようですが、それを悪いことと認識しておらず、傷つけようとして傷つけた訳じゃないなら、「自分の意思」ではないと想います。」
瑠璃人「なんか難しくてよく分からないけど、次はもうしないようにすれば良い。簡単な話じゃね?」
兎白「お前たち……」
桃時「あんたはどう想ってんのよ」
兎白「俺は……」
兎白はしばらく考えて、言葉を発した。
兎白「俺はあいつの姿をここにいる奴らよりはずっとみてきた………つもり。あいつはもう充分苦しんだと想う。あいつのことはまだ知らないこともあるけど、それも含めてあいつなんだろうなと想ってる。俺はちゃんと受け入れたい。あいつのことを。もっと。近くで。」
???「何で……?」
橙・桃時・兎白・瑠璃人「!」
◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎
目の前にいるのは、包帯やガーゼまみれの雨花だった。
桃時「ちょっとあんた怪我……!」
雨花「みんなは……何……で……」
橙「雨花さん……!私は!」
雨花「わたしは!!!!まだ何も言ってない!!!!」
橙・桃時・兎白・瑠璃人「!」
雨花は叫び出す。自分の想いを。
雨花「わたしは……!!!!まだ何も言えてない……みんなは…………まだ……まだ……知らないだけで……!!!!みんながみていれられないような過去だって……まだまだ沢山持ってる!!!!みんなが受け入れられないような本当に胸糞悪くなる過去だって持ってるんだよ!!!!それなのに……わたしは優しくなんてない!!!!クズにすら分類できないどうしようもない奴なの!!!!本当に……本当に……気持ち悪いんだよ!!!!わたしは!!!!」
ぎゅっ
雨花「何……して……るの……?」
橙は、雨花を抱きしめた。
橙「もう充分です。雨花さん。」
雨花「…………っ!離して!!!!」
雨花は橙から離れる。
橙「痛っ……」
雨花「…………あっ……」
橙「大丈夫ですよ。雨花さん。」
雨花は、橙たちに叫ぶ。
雨花「もうやめて!!!!わたしの邪魔しないで!!!!わたしは……消えたい……もう罪も罰も戒めも責任も……全部全部全部全部放り投げて楽になりたいの!!!!もう離れてよ……わたしの前に……現れないでよ……もう……もう……わたしは……許されないの……もう……人を傷つけたら……もう遅いんだよ…………もう何も取り返さない…………どうすることも……できない……次しないように……するなんて……わたしが傷つけてしまった人は……どうなるの?その人たちは……ずっと……その傷を負って、生き方を変えられて……生きていかなくちゃいけなくなる……わたしのせいで…………その責任の取り方なんてもの……ない……罰を貰って楽になるのもダメで……でも何もしないのもダメで……誰も罰してくれないなら……自分で自分を罰するしかなくて……でも…………本当はそれにも…… 疲れてて……だから……もう楽にさせてよ……お願いだから……」
桃時「いやよ。消えるなんて許さない。」
瑠璃人「おい桃時……」
桃時「せっかくあんたそうやってやっと本音を言ってくれるようになったのに、誰が消えさせるものですか。あんたは消させない。あんたには絶対幸せになってもらうから。」
橙「雨花さんの過去も何もかも。確かに私たちはまだ何も知りません。でも、それでも、私たちは受け止めたいです。その時こそちゃんと雨花さんが「幸せ」を手に入れられるように。」
瑠璃人「雨花は良いなぁ。こんなに橙に愛されてて〜でも、オレもちゃんと雨花のこと大切な奴だと想ってるよ。幸せになって欲しい。」
兎白「俺たちは雨花を幸せにしたい。俺たちは「雨花を救い隊」だな。」
橙・桃時・瑠璃人「ダサいです・ダッサ・ダサいっすね」
兎白「えっ?」
雨花「…………」
雨花は、呆然と立っている。
雨花「どうして……そこまで……」
桃時「そんなの決まってるでしょ?」
「「あなた・あんた・お前が好きだから!!!!」」
雨花は言葉を失う。そして……
雨花「……馬鹿な人たち……あはは…………あはは…………はは…………はぁ…………」
雨花はしばらく黙ったが、こう告げた。
雨花「止められるものなら止めてみなよ」
橙・桃時・兎白・瑠璃人「!」
「「望むところです・よ・だ・だぜ!!!!」」
外には二日月が登り、暗い闇夜に細く小さい。しかし、確かに灯った光が証を示すように辺りを照らしていた。
しかし……重い雲の陰に隠れたのだった。