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政府軍本部
トレーニングルーム
シャツ姿の柳木が、汗だくになりながらランニングマシンを使用していた。
「ふぅ……こんなかんじかな」
彼は一度イスに座り、持ってきていたペットボトル飲料を飲む。
彼が強さを保てるのは、やはり毎日の鍛錬が関係している。速く走るためにランニングマシン、筋力アップのためにダンベル上げなど……。
その時、彼に声をかける者がいた。
「……お前もいんのかよ」
それは、不機嫌そうに彼を睨みつける女性。政府中佐「鳥矢崎サキネ」だった。
「あ……! 鳥矢崎中佐、お疲れさまです!」
柳木は立ち上がって敬礼する。
「そういうのいいから」
鬱陶しそうにそれをスルーすると、鳥矢崎は持っていた物をイスに置いた。
そしてなんと、服を脱いで着替え始めたのだ。
「ちょっ、中佐! ここで着替えるんですか!?」
「は? あんたが出ていきゃいいだけの話でしょ?」
その時彼女が見せたのは、柳木を襲う鋭い目つき。
「そ、そうですね。失礼いたしました!」
彼は荷物を持って部屋から出た。
(鳥矢崎中佐……強いけど、怖いんだよな……)
実際、鳥矢崎は誰にでも強く当たるため一部の上官からも怖がられているのだ。
「まあ、どっちみち部屋に戻るつもりだったし」
彼は一度浴場で汗を洗い流したあと、自室へと戻った。
数時間後。
柳木が自室で報告書を作っていた時だった。部屋の扉がノックされた。
「柳木、いる?」
聞こえてくる声は、鳥矢崎のもの。
「はい、います」
柳木は報告書を一度しまうと、扉の方へ向かう。
──珍しいな、僕の部屋を訪ねてくるなんて。
そう思いつつ、彼は扉を開ける。そこに立っていたのはやはり鳥矢崎だった。
彼女は何かをつき出す。
「これ、トレーニングルームに忘れてたわよ」
それは、柳木が服用している薬だった。
「あぁ! ありがとうございます! とても大事なものですので……」
彼は鳥矢崎から薬を受け取ると、頭を下げた。しかし、彼女はまたもや鬱陶しそうに髪をかきあげた。
「はぁ……ほんとにそういうのいいから。上官が部下のために動くのは当然よ」
そして彼女は踵を返しその場から去ろうとしたが、突如何かを思い出したかのように振り返った。
「そうそう、あんたにいい知らせよ。明日、あんたの大好きな野津少佐が帰ってくるそうよ。じゃ、私はこれで」
今度は足早に去っていく鳥矢崎。彼女が言っていた野津という名前。
「野津少佐……ついにか」
柳木の顔には、心なしか嬉しそうな表情が表れていた。
野津大賀。若くして政府軍少佐の地位についた男。実は、柳木を拾い政府軍に入れたのも彼であり、柳木に戦闘術を教えたのも彼だ。
そんな彼は、2年前ほどから任務のために広島県へ遠征に行っていた。何の任務かは柳木も知らないが、とにかく恩人が帰ってくることは彼にとって喜ばしいものだった。
「……おっと、いけない。報告書の続きを作らないと」
彼は中に戻り、もう一度書類に向き合った……。
その夜。
静まり返った廊下を歩く、一つの影があった。歩幅が広く、そのスピードも歩きでは早いほうだ。
影が歩く先にあるのは、元帥の執務室。扉の隙間から光をもらすその部屋は、まるで影を待っていたようにも見える。
そして、扉の前についた影がノックをする。
「入れ」
聞こえてきたのは、威厳ただよう渋めも声だった。影は中に入ると、ビシッと敬礼をした。
「予定より早めの帰還だな……野津少佐」
「はい。安全に車をかっ飛ばしましたので」
元帥は野津を座らせるとカップラーメンにお湯を入れ、それを差し出した。
「お疲れさまだったな。ほら、醤油味だ」
醤油ラーメンの香りが執務室に広がる。よほど腹を空かせていたのだろう。野津は3分経つ前にフタを開けて麺をすすりだした。
「……それでだ、野津」
途端、元帥の顔が厳しくなる。
「ヒバゴンの事は、何か分かったか?」
「……えぇ」
ヒバゴン。広島県の比婆山に生息する未確認生物だ。
実は、日本が大災害に襲われたあの日以来、未確認生物の目撃情報が増加したのだ。
ヒバゴンも全く姿が見られなくなっていたのだが、その日から一ヶ月に一回は必ず見つかるようになったのだ。
野津がこの2年広島に言っていたのも、その調査のためだった。
「ヒバゴンですが……結果を言うと、大繁殖しておりました。私が確認しただけで20頭は軽く超えていますね」
政府軍の頭を悩ませているのは、空銃時会だけでなく未確認生物もであった。
未確認生物はやはり詳しいことがさっぱり分からない。中には積極的に人を襲う種もいる。調査をし、対策を練る事も軍の仕事であるのだ。
「明日、詳しいことを聞く。今日はゆっくり休め」
そして、元帥は野津を退室させた。
「未確認生物とか勘弁してくれ……空銃時の奴らの相手だけで手一杯なのに……」
一人、元帥の嘆きが執務室に響いた。
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