ジーク「ただいま。」
アリィ「おかえり、ジーク。弓の調子はどう?」
ジーク「はい。」
そう言ってジークはアリィに弓を差し出す。
アリィ「うん、いい感じだね!」
ジーク「まだ調整が終わってないらしくて…何日もかかるがいいか?」
アリィ「それで、一旦帰ってきたんだね。」
ジーク「ああ」
アリィ「構わないよ。ノアの調子も良くならないし…それに…」
ジーク「それに?」
アリィ「…ジーク。」
ジーク「?」
強くアリィは拳を握りしめる。
アリィ「…ジークはさ、ここで、暮らさない?」
ジーク「え…?」
アリィ「…ここに来てからずっと考えてたんだ。…私はきっとどこに逃げても殺されるんだと思う…でもジークは…ここにいれば…もう追われることは無いと思う。」
ジーク「…アリィはどうするんだ?」
アリィ「…私は遠い遠い所に逃げるよ。ここにずっと居ても私は迷惑をかける。ジーク、あなたは…私と一緒に居続ける必要は無い。…ここで…」
ジーク「嫌だと言ったら?」
アリィ「…どうしてそこまで…私さえ居なければ、ジークは、ジークは…」
ジーク「アリィ」
アリィ「…。」
ジーク「アリィ、これ以上自分を責めないでくれ。俺はお前が自分を責める度に苦しくなる。」
アリィ「でもだって…」
ジーク「でもじゃない、この世に生まれてきた事が罪なヒトなんて居ちゃダメなんだ。…アリィ、俺から直接、俺がお前から離れたいなんて聞いたか?」
アリィ「…聞いてない…。」
ジーク「だろ?周りのことなんか気にする必要は無い。俺は好きでお前と一緒にいるんだから。」
ジークがそう言うと、アリィの顔が赤くなる。
アリィ「じ、ジークは恥ずかしいこと言ってる自覚ある…?」
アリィがそう指摘すると、ジークはアリィ以上に顔を赤くし、必死に弁解しようとしていた。
ジーク「ちが!こ、これはだな…!」
そんな2人の様子を扉の向こうから、盗み聞きしてる人物が居た。
マリア「何してるのベツレヘム。」
盗み聞きしていたベツレヘムをノアとマリアが呆れた目で見つめる。
ベツレヘム「い、いやぁ面白そうで…」
マリア「はぁ…。」
ベツレヘム「そ、それより!私凄いことに気付いちゃいました…!」
マリア「なに?」
ベツレヘム「あの二人…あれで付き合ってないらしいですよ…。」
ノア「は!?あれで!?」
1番驚いていたのはノアもといポルポルだった。
ノアの声を聞きつけたのか勢いよく部屋の扉がバンと音を立て開いた。ドアから出てきたのは顔を真っ赤にしたジークだった。
その後3人は追い出された。
次の日は村がとても騒がしくなっていた。
アリィ「ねぇ、アカネ君。ここ最近村が騒がしいけど何かあったの?」
アカネ「アリィさん。実は村の付近に悪魔が出たんです。」
アリィ「それまずいんじゃ!?」
アカネ「今までこの村が悪魔に気づかれたことはありませんが、念には念をといった行いですので安心してください。」
ジーク「何か手伝えることはあるか?」
アカネ「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫ですよ。」
ジーク「それならいいが…」
アカネ「…問題は悪魔じゃないんですよ」
ジーク「?」
アリィ「何かあるの?」
アカネ「…お二方、しばらくは研究所から出ないで置いて欲しいんです。」
アリィ「安全確保の為?」
アカネ「そうですそうです。」
ジーク「まぁ何も手伝えないみたいだし、分かったよ。」
ジーク達が了承すると、遠くからどぉんと大きな音が鳴る。
アリィ「大暴れだねぇ。」
ジーク「これ魔法ぶっぱなされて、森林火災とか…」
アカネ「あ、たまにあります。」
ジーク「あるのか…しかしまぁ悪魔以外も使えたら今頃楽だろうになぁ…」
アリィ「…確かに全員が使えたら平和になるだろうね。」
アカネ「まぁこればっかりは仕方がありません。魔法は悪魔だけが使える代物と割り切るしかありません。」
ジーク「俺達は部屋にいるな。」
アカネ「はい。」
ジークとアリィが踵を返して、部屋に戻ろうとした時だった。玄関の方からマリアと誰かの言い争う声が聞こえてきた。
マリア「いきなり押しかけてきて何なのよ、貴方達。」
マリアの口調は変わらなかったが、声色が低くなっており、かなり怒っているようだった。
アカネはマリアの声を聞き、ハッとした顔を一瞬したかと思うと、すぐに2人の手を引いて走りはじめた。
アリィ「わっ!な、なに!?」
アカネ「後でご説明します。今は隠れていてください。」
そういい2人を机の下の木箱に押し込む。
アカネ「その木箱は開発中のものでして、見た目より広くなってると思います。僕が開けるまで、出てこないで静かにしていてくださいね。」
ジーク「?あ、ああ…。」
木箱の中は暗く、何も見えなかったがアカネの足音が遠ざかるのを感じた。
アリィ(…一体なにが…)
どれだけ長い時間木箱の中にいただろう。
マリアの声が近づく。
マリア「だから何も無いと言ってるでしょう!急に押しかけてきて家中のものひっくり返して…!」
「何も無いわけないだろう!」
マリアと誰かが会話しているのだろう。複数人の男の声が聞こえる。
男達「悪魔を渡せ!」
その言葉を聞いた瞬間、アリィの顔が一気に青ざめる。見えなくてもわかるくらい身体が震えていた。
アリィ「ジーク…」
アリィは半ば助けを求めるような声で、小さな声でジークの名を呼ぶ。
ジーク(…俺達の居場所が割れたのか…)
ジーク「大丈夫、俺が守るから。」
ジークは小さな声でアリィを安心させると、意を決した様な顔をし、上着の下からナイフを取り出す。
ジーク(…どうしてマリアさん達が庇うのか分からないが…)
今まで何度も味方をしてくれようとする人が居た。だが、そのほとんどは裏切り騙して売られることがほとんどであり、いつの間にかお互い以外に壁を作るようになった。
ジーク「これで…」
ナイフを握る手が震える。
ジーク(なに震えてるんだ…!今までに、2人もヒトを、しかも親を殺してるんだ…できる…)
男達「とぼけるんじゃない!村の外の悪魔が証拠だ!悪魔は他の悪魔まで呼び寄せる!」
マリア「そんな話聞いたことないわ。」
男達「村中見たが、居なかった。後はここだけだぞ!」
マリア「は…?あなた達はどこまでも…!」
ガチャっとドアの開く音がする。
アカネ「お母さん、」
マリア「アカネ!?来ちゃダメって…!」
アカネは驚いた顔をして、耳がぺしょっとなる。
男達「お前はあの時の…!ああ…なんてことだ…まさか生きていたなんて…!この魔女め!」
マリア「…まさか自分達が私の子供を殺したことも覚えていないの…?」
マリアがぐるるると低い唸り声をあげ、飛びかかろうとした時だった。男の1人が倒れた。
後ろには血塗られたナイフを持ったベツレヘムが立っていた。
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