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大事な相棒である真にキスをしてしまった俺は、急いで家を出た後公園のブランコで途方に暮れていた。
「終わった…….」
真のことをそういう対象として好きなのは不器用なりに…段階を飛ばしすぎないように伝えているつもりだった。
だが好きな人が自分の家で自分の服とエプロンを着て一緒に食べるご飯を作ろうとしてくれている事実に耐えられなかった。
(…やってしまった事はもう取り返しがつかないから…良くてタッグ解消…悪くて絶交…かな)
悪くて絶交。だけどそれより最悪の事態は、俺の軽率な行動によって真の心に深い傷ができる事だ。俺のしたことは信じていてくれた真への裏切りに他ならない。
(…真は幼くして実を亡くしてるし、実自身残してきた兄に信頼できる友ができるのを望んでいるはずだ。実は何だかんだ俺の気持ちを見透かしているような気はしていたけど、それでも容認されていい行動じゃない。)
立て。震えていいのは俺じゃない。謝りに行かなきゃ。どんな罵詈雑言が待っていたとしても、それは至極当然の意見なのだ。
そう決意して立ち上がったとき、時刻は6時を回っていた。
「…よし….走ろう」
そう言葉を発して1歩目を踏み出した時だった。
「ッ弦!!!!!!!」
「….は?」
荒々しく掠れた声に振り返ると、全身から汗を垂れ流しながらゼーハーと息をする真がいた。
「えっ…真…..」
事態を理解するまで体感2秒程お互いを見つめ合い、俺はすぐさま土下座した。
「っごめん!!!!!!…本当に…ごめんなさい…あまりにも軽率で…傷つけたと思う….何回殴ってくれてもいい、視界にうつるのが嫌ならタッグ解消だって転校だってなんだってする…俺が言うのは無責任だし信憑性もないと思うけど….真の心に傷が残らないように…..したいんだ…..ごめん…」
昔から、思っていることを言葉にするのが苦手だった。頭では言いたいことが樹形図のように辻褄を合わせて完成されているのに、言葉に紡ぐとどうしても詰まってしまう。
それでも、何も気にせず嬉しそうに聞いてくれたのが真だった。真と出会ったのはもう随分前で、4,5歳だっただろうか。少し一緒に遊んだ程度だったが、コンプレックスだらけだった俺にとっては真の笑顔が鮮明で、希望そのものだった。
そんな世界で1番大切で、自分の命なんか霞んで見えるほど大きな光を、俺は裏切ったんだ。
俺の言葉を聞いた真は、大きく息を吸った。
「ッッッッだぁぁぁぁあああぁ!!!!!」
「!?….ま、真…?」
「お前なァ!!!!なんかもう….クソッ!!」
真は頭を掻きむしった後、大きく右腕を振りかぶって俺の頬を殴った。
「っ…….ごめん….」
「はァっはあッ….うううぅぅうああぁ…」
真は俺を殴ってすぐ、大泣きし始めた。
雨野さんのときよりも、ずっと大粒の涙だった。
「ま、真!!!!ごめん、本当にごめん….信じられないと思うけど…泣かせたい訳じゃなかったんだ…..本当に…気が済むまで殴るなり蹴るなりしてくれ」
尻もちをついたままの俺の両足の間に、真は号泣しながら入り、さっきとは打って変わって力なくぽかぽかと俺の胸を叩いた。
「お”れッ….お前のこと大事に思ってだのに”よ”…何でもでぎでッ”“…いけ好かないときもあるけど…お前の傷が増えると泣きたくなるし…笑った顔がキラッキラ光るから….大事なんだよ….」
「…真……..?」
「なのに何でッ…何ッでタッグ解消とか言うんだよ…..転校するとか言うんだよッ….!!!クソ野郎ッ!!!!」
真の俺を殴る手に威力はちっともなくて、泣きたくなるほど弱々しかった。
「真….ごめん…..俺のしたことは間違いなく裏切りだから…….汚いんだ、俺は。咄嗟にしたことだったけど、そこに俺の意思はちゃんとあって。…好きなんだ、真が。幸せにしたいとかそういう…やつでさ。この気持ち自体が裏切りだって、本当は気付いてた。そばに居ちゃいけない。ごめん。」
「…お前は神か何かかよ…..?誰がその気持ちを裏切りだッつったんだよ..?誰が傍に居ちゃいけねェなんて言ったんだよ…?ンなこと言うやつ俺が殴り殺してやる….」
「ま、真…..?」
「ていうか….俺も謝んなきゃいけねェ。ごめん。お前の気持ち、気付いてねェフリしてた。自分すら納得できねぇような文言並べて、安全圏に留まらせようとしてた。いちばん辛かったのはお前だよ、弦。」
優しく、だけど申し訳なさそうに眉を八の字にして微笑む真を見て、張っていた糸がプツンと切れた気がした。
「っごめん…俺が泣いていいわけない…すぐ止めるから…….ごめん…」
「泣いてていいから聞いてくれ、弦。お前がちゃんと向き合って、拳震わせながら打ち明けてくれたから俺も逃げずに言うよ。」