⚠過去作って放置していたものです。
⚠長いです。
「はぁ、はぁ、」
息が続かない。
寒い。
こんな真冬に飛び出してきた自分は認めたくはないが阿呆だと思った。
ごめんなさい
2時間前に遡れたらそう言いたい
ーーー
滅多に人が家に泊まることなんてない
だから普通に考えて何も用意していないものだろう。けれど今日に限ってあいつは 「泊まる」 と言い出した。
終電の時間を逃すまで一緒にゲームをやっていた俺は、自分も悪いという自覚があるので泊めてやることにした。
髪を切ってサッパリとし、 赤い襟足が無い こいつを泊めるのはかなり久しぶりだ。
うっしーとガッチさんは愛する家族のいる家へと遅くならない内に帰って行ったのだ。
その時に「このゲーム何?」と珍しく声を発 した馬鹿に説明をしてやると 「やろう」と言 い出した。
まだ自分もやってはいない未プレイのゲームだったのでたまには、二人でやるのも案外悪くない、 それを了承した。
ピコピコ。 ドカドカ。
無機質な機械音が部屋に響き渡る。
二人で真剣にやっているといつも黙ってしまう。
「ね、 腹減った」
またもや声を出しやがった。 だが、こいつが腹減るというのはいつものことだし。
俺の腹もまあまあな具合に何かを欲してい た。
「そうね。 何食べる?」
そう聞いてもぼーっとしていた彼の名前を呼ぶ
「キヨ君?」
「え、あ、ごめん。 で? 何?」
「お前何も聞いてなかっただろ」
「うん」
「はぁ…..」
自分から切り出した話題の癖に何も聞いていないとはそんなに重要な悩み事があるの だろうか。
俺は晩飯を食べるときにでも聞いてみるこ
とにした。
ーーー
家の冷蔵庫はみごとに空っぽ 「何があるの」 そう聞かれていなかったらこの有様に気づけていなかった。
「どうしよ」 そんな言葉をかけても相手には分からないのに無駄口を叩いてしまった。
しかしキヨ君は 「出前は?」 と提案した。
あ、なるほど。 いいアイデアだし、いつもとっているのに忘れてしまっていた自分が 恥ずかしい。
アイデアをだしてくれたそいつに「ありがとう」と俺らしくもないお礼を告げると 「ん」といつも通りの返事が返ってきた。
ピンポーン
待ってましたと言わんばかりのチャイム音が響いた。
それに出るとリビングまで持って行く。
そうするとリビングにはキヨ君がスマホを片手にテーブルの前にチョコンと座って食 べる準備を態度で示していた。
「はい、おまちどおさま」
「うん」
「「いただきます」」
まだ温かい、出来たてであろうものを俺は口へと運ぶ。
俺がうどん。 あいつがオムライス。
俺のうどんには綺麗に型抜きされた花形のにんじんがちりばめられており、それを麺と一緒にすすると口の中で卵のまろやかなだしが口いっぱいに広がった。
肉もいいアクセントで卵とマッチして肉の甘みが際立った。
相手の方はもう半分以上食べていて味わうことを知らない様子だ。
そんな俺を気にもとめず「ごちそうさまでした」と完食した皿に手をあわせていた。
ぐうぅぅぅぅうう
間抜けな音が思いっきり耳に入る
「あ、やべ」
どうやらまだ腹が減っているようだ
「俺のちょっと食べる?」
「じゃあ…うん。 お言葉に甘えて」
「ちょっと待って」
俺はキッチンへ向かい小皿を取る。
そして「どうぞ」とそいつの目の前に皿をコトンと置く
その小さな皿に出汁を入れ、 うどんとにんじん、 肉を均等にのせていく。
「ありがとう」
「感謝しなよ?」
「もちろん」
軽く笑って駄弁る。
いつも通りのこの在り来たりがまた、 面白 い。
「ごちそうさまでした。」
ほぼ同時に食べ終わると 「美味しかったね」 「ね」 とザックリとした感想を述べ合う。
「そういえばキヨ君」
「ん?」
「悩み事、 あるの?」
ーーー
俺は出来る限りの優しい声色で囁いた
「冗談だけ……… ど?」
返事がなかなか返ってこないので冗談で済まそうと思ったのにどうやら図星みたいで 手に持っていたスマホを床へと落としていた。
「え、 あるの?」
コクリと頷いていた。 いつもよりも圧倒的に口数が減っている。
パクパクとそいつが口を動かしていて、かすれ声だけどやっとで声が聞こえた。
「… 人間関係、 なんだよね…」
ソファの上で体育座りへと体制を変えて顔をうずめながら教えてくれる。
いつも、 相談事はあまりしてくれないから 驚きも混じりながら聴いていた。
「仲…. 悪いの?」
ふるふると弱いような、けれど、しっかりと首を横に振る。
「仲は全然。 むしろ仲いいほう。 そういう ことじゃないんだ。」
「え…..……?」
じゃあ、もしかして、 最俺のだれがと喧嘩 しちゃったのか…?
よく喋っているイメージがあるのはもちろ んフジ君。 うー…ん…… 喧嘩しそう……
「メンバーの誰かと喧嘩?」
それもまた首を振る。 なんなんだこいつ。
「じゃあ何?」
はぁ… と小さく溜息をついて聞いてみる
「 ………………言わなきゃダメ?」
今更だなあ…
「出来れば。 」
ふぅ…..と息を吐きそいつがまだ顔をうずめてモゴモゴと喋る
「…………………………………….恋」
「え?」
「 ……..恋……….. なんですけど」
こいつから恋愛相談だと?! 恋愛映画しか見ないと思っていたのに…
「ふぅん」
「 ……興味なさそ」
「そうではないけど。 意外だな」
「は?」
「片思いなの?」
「 ……分かんない」
「…………..は?」
「…いや、 友人がその人のことを見ちゃった りその人のこと考えたら恋だよ。 って…… 本に書いてたことを言ってきたから…..」
「 そんな相手いたかなぁとか………….」
「それ、あの人かなぁ……とか思ってる内 に…」
「 …………恋なのかなあって思ってぼーってしてた」
「ガチ?」
「おう」
意外と恋愛初心者的なことで悩んでいて正直に言うと頭がパニクっていた。
ショートしてぼけーっとしていながらも理性を保ち質問を続けた。
「その子と会ったのは? いつ頃?」
んーと目線をそらしながら考えている。
なんか….. 修学旅行みたいだなぁ
「10、 1、 2年くらい前?」
「ヘー」
俺はもうロボットのように棒読み一直線でセリフを読み上げた。 なぜか冷や汗がだらだら垂れている。
俺は目を丸くしたまま心を落ち着かせる。
ときメモをしていても、 恋愛相談はハートが飛びすぎていてすっげぇ苦手かも知れない。
俺はさっき注いできたカフェオレを手に持って呆気にとられていた。
「……………レトさん。 こう言う相談事苦手
でしょ?」
ははっと照れくさく笑いながら心を読んでいるかのように尋ねてくる
「……まあ…… そうね…..」
「やっぱり」
「… どんな人なの? そんな長年一緒にいるな らそれぐらい分かるでしょ?」
話をそらす
この空気に耐えられない。
「…….えぇ….そこまで言わないとダメェ~……… ?」
一気にキヨ君の耳が真っ赤になって口を尖らせて文句を言われた。
「ここまで教えといてそれは無しでしょ」
「……………えー…………でもぉ…..……………」
「なんかやましいことでもあんの?」
「この話にやましいことがないとでも?」
「そりゃそうだけど」
「.……ん…ー……….」
「か、可愛いよ。 カッコいいところもなん か、あるし…… あ、 後ね! 笑顔がいいよ ね! 尊敬できるところもある…………。」
「… 学校の先輩とか?」
「… そ….んなかんじ…..かな」
「…そっか」
「キヨ君が相談することなんてないから俺にまた相談していいよ。」
少し微笑んでキヨ君に呼びかける。
「はぁ…..」
「なんで溜息なんだよ」
「馬鹿だなあって」
「喧嘩売ってる?」
「ははっ」
「……. 告白は ? 」
「え?今そんな流れじゃないでしょ」
「いいじゃん」
「…………した方がいいかな……?」
「…そりゃあ… まあした方が良いでしょ」
「…そうだよね」
ーーー
カタンとキヨ君がテーブルからコップを手に取る。
「今でも……迷惑じゃないかな……」
「は?」
「…… いやもうさ….. 決心出来たから…….」
「うん….. いいんじゃない?」
「…けど」
「……ふられたら…. どうしよう……。 迷惑かけたらどうしよう………。 嫌いになられて友達 にももどれなかったら………」
そうだった。
人一倍裏では人のことを考えている彼にとっては自分のことと同じぐらいに相手のことも考えてしまうんだった。
優しい…..けれど……
それはおかしい。
「キヨ君」
バシッ
「いってぇ?!」
「何すんの…?」
流石元ヤン。 こっわ
「お前見ててイライラする。」
「は? マジでなんなの?」
怖くて足が震える。 最初にあったときよりもっと、怖い。
「…..失礼。最低。 優しいとでも…思ってる
の?」
「……..いい加減にして……. 我慢がきかないから…」
相手の顔はこちらをにらみつけてきていて、本当にムシャクシャしていた。
そいつがその時立った事もあってか、10cm
以上も差がある圧に耐えれなかった。
生温い水が頬をつたる。
相手もかなり動揺していた。
そんなことはどうでもいい。
言わなきゃ。
あいつが幸せになれない。
ーーー
「だってさ….. キヨ君が、 好きになったひと は……………….そんな… 酷い人じゃないでしょ…?」
「何年も、 何年も、 一緒にいたんでしょ?」
「そんな……生温い決心…. 返って失礼。 優しさでもなんでもない。… … 最低。…. そんなに好きなら、 最後まで突き通せよ…、 …こんな馬鹿、 誰がすきになるんだよ……。」
バンッと壁に手をつかれて壁ドンの体制になる。
言い過ぎた。そう、瞬時に理解した。
「黙れ。 レトさんでも許さない。」
常識がまだ整っているこいつでも堪忍袋の緒が切れたようだった。
俺はまた、違う線が切れた。
止まらないほどの量の涙が零れてくる
一つ
二つ
三つ
ゴンッ
鈍い音がして、思いっきり肩を跳ね返す。
俺は靴を適当にはいて、 その場を去ることにした。
ーーー
あんなに怖いキヨ君、 見たことがない。
あんな顔させたくなかったし、見たくもな
かった。
人との喧嘩は何年ぶりなんだろう
よりによってキヨ君。
一番喧嘩はしたくなかった。
知らない。 あんなキヨ君は。
ごめんなさい。
ーーー
続きが読みたいって人はコメント下さい。
ここで過去作は終わっているので。
(後、いつか書き直してそっと更新するかもです)
コメント
6件
続き見たいです!キヨこっっわ…さすが元ヤン…