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みら

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kaede🍁
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みら

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その日、阿部と渡辺は女性向け雑誌の撮影に参加していた。
二人での特集企画。
撮影は順調に進み、スタッフの笑顔も絶えない。
「二人とも、すごくいい表情です!」
カメラマンの声がスタジオに響く。
休憩に入り、渡辺は自動販売機へ向かった。
「あったかいコーヒーにしようかな。」
飲み物を二本買い、撮影スペースへ戻る。
すると、ソファに座る阿部が目に入った。
スマートフォンを見つめるその表情は、いつもと変わらない。
穏やかで、落ち着いていて、優しい笑顔。
「あべちゃん。」
「はい?」
「コーヒー。」
「ありがとう。」
阿部は笑って受け取る。
その笑顔を見て、渡辺の胸の奥に小さな違和感が残った。
(嫌な予感がする。)
長年一緒に過ごしてきた勘が、小さく警鐘を鳴らしていた。
「次お願いしまーす!」
スタッフに呼ばれ、二人は再び撮影へ戻る。
カメラの前へ立つ。
「いきます!」
フラッシュが何度も光る。
パシャッ。
パシャッ。
その瞬間だった。
阿部の身体が、ほんのわずかに揺れた。
ほんの一瞬。
誰も気づかないほど小さなふらつき。
けれど渡辺だけは見逃さなかった。
(今……。)
阿部はすぐに姿勢を立て直し、何事もなかったように微笑んでいる。
撮影はそのまま続いた。
___________
「お疲れさまでした!」
スタッフの拍手が響く。
阿部は笑顔で挨拶をし、荷物を持って出口へ向かおうとした。
「あべちゃん。」
渡辺が呼び止める。
「ん?」
「ちょっと待て。」
「どうしたの?」
「帰る前に少し話そう。」
阿部は少しだけ目をそらした。
「今日は大丈夫。」
「また今度。」
そう言って歩き出そうとする。
渡辺は静かに阿部の腕をつかんだ。
「あべちゃん。」
「……。」
阿部の肩が震える。
「っ……。」
呼吸が浅くなる。
「はぁ……。」
「あべちゃん!」
渡辺はすぐ近くのベンチへ阿部を座らせた。
「ゆっくり。」
「息吐け。」
「大丈夫。」
阿部は肩で息をしながら何度も深呼吸を繰り返した。
渡辺は何も急かさない。
背中をゆっくりさする。
数分後。
阿部の呼吸は少しずつ落ち着いていった。
「……ありがとう。」
小さな声だった。
「話せるか?」
阿部は静かに頷く。
「実は……。」
少しだけ目を伏せる。
「映画が終わってから。」
「役が、まだ抜けない時があるんだ。」
渡辺は黙って聞いていた。
「今日も。」
「フラッシュを見た瞬間。」
「映画の撮影現場を思い出しちゃって。」
阿部は苦しそうに笑う。
「少しずつ良くなってると思ってたんだけどね。」
渡辺は静かに頷いた。
「めめは知ってるのか?」
阿部は首を横に振る。
「言ってない。」
「なんで。」
「めめ。」
「あの映画のあと、すごく自分を責めてたから。」
『一番近くにいたのに気づけなかった。』
そう言っていた目黒の顔が浮かぶ。
「これ以上。」
「心配させたくない。」
渡辺は少しだけため息をついた。
「一人で抱えるのは、お前らしい。」
阿部は苦笑する。
「否定できない。」
渡辺は阿部の肩を軽く叩いた。
「今日は俺が知った。」
「それで十分。」
「今すぐ目黒に言えとは言わない。」
「でも。」
「また苦しくなったら。」
「一人で帰ろうとするな。」
阿部は渡辺を見る。
渡辺は優しく笑った。
「俺でも。」
「ふっかでも。」
「佐久間でも。」
「誰でもいい。」
「ちゃんと頼れ。」
「メンバーは、そのためにいる。」
阿部の目に涙が浮かんだ。
「……うん。」
「ありがとう。」
渡辺は立ち上がると、いつものように少し照れくさそうに笑った。
「ほら。」
「今日は俺が送ってく。」
「途中で倒れられたら困るし。」
阿部も少しだけ笑顔を取り戻す。
「過保護?」
「違う。」
渡辺は肩をすくめた。
「ただの仲間思い。」
そう言って歩き出す渡辺の背中を見ながら、阿部は心の中で思った。
(やっぱり翔太は。)
(昔から、誰よりもメンバーを守る人だ。)
その日、阿部は久しぶりに「一人で抱え込まなくてもいい」と思うことができた。
コメント
1件
みぅ🤍🥀です。読んだよ。 第4話、切なくて、でも温かい話だった。渡辺が阿部の小さなふらつきを見逃さなかったところ、胸がぎゅっとなった。長年一緒にいるからこそ気づける違和感ってあるよね。阿部が「役がまだ抜けない」って打ち明ける場面、すごくリアルで、役者さんの苦しみを想像しちゃった。そして「ただの仲間思い」って照れくさそうに言う渡辺、かっこよすぎる。一人で抱え込まなくていいって思えた阿部の気持ち、じんわりきた。美しい友情だなあ。次も読みたいです🌙