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キュルノ
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#学園
キュルノ
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蒼月
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その事件は、新緑が深く濃くなり始めた初夏の夜、一本の切迫した電話から始まった。「……渚、起きてるか」
夜の11時過ぎ。オカ研の部室で九条先輩から借りた『医療オカルティズムと心理的痕跡』の文献を読み込んでいた私のスマホに、低く引き締まった峯岸さんの声が飛び込んできた。背景には、病院特有の機械音と静寂が混ざり合った独特なノイズが響いている。
「峯岸さん? こんな時間にどうしたの」
「〇〇大学医学部附属病院だ。……今すぐ佐藤と車で迎えに行かせる。着替えろ」
いつもの軽口や煙草の匂いすら感じさせない重いトーンに、私は背筋を凍りつかせた。
「……何が起きたの?」
「ここ一ヶ月で、心臓血管外科の集中治療室(ICU)に入院していた患者が3人、相次いで急死した。全員、経過は良好で明日にでも一般病棟へ転床予定だった患者だ。死因は急性心不全……だが、執刀医も監察医も首をかしげてる。心電図のデータにも、血液検査にも、致死的な異常(サイン)が一切残ってねぇ」
「原因不明の……連続不審死……」
「病院側は医療事故や噂(怪談)としての揉み消しを図ろうとしたが、今日の夕方、4人目の患者が急変して亡くなった。……その直前、付き添っていた遺族がこう言ったんだ。『部屋の隅に、白い服を着た黒い影が立っていた』とな」
受話器の向こうで、峯岸さんが短く息を吐き出す音が聞こえた。
「事件(ヤマ)だ。それも、薬品を使った高度な毒殺か……あるいは、人為的な『ナニカ』だ。監視カメラにも、ICUの電子カルテのログにも不審な点はない。……渚、お前の力を借りたい」
「……分かった。すぐ降りる」
通話を切ると、ソファーの向かいでパイプを燻らせていた九条先輩が、静かに眼鏡のふちを押し上げた。
「附属病院か。あそこは昔から『開かずの旧病棟』や『消えたカルテ』の都市伝説が多い場所だ。……気をつけるといい、皐月さん。病院という場所は、人の生と死の執着が最も色濃く渦巻く『磁場』だ。普通の人間の殺意以上に、重い残留思念が君を苛むことになる」
「大丈夫です。……慣れてますから」
黒いブレザーを羽織り、私はサークル棟を飛び出した。
キャンパスのロータリーには、すでに赤色灯を消したいつもの黒いセダンが待機していた。後部座席のドアを開けると、運転席の佐藤さんが青ざめた顔で振り返る。
「渚ちゃん! 夜遅くにすみません……! でも、今回の現場は本当に異様なんです。病院の医師も看護師も、みんな何かに怯えていて……」
「佐藤さん、病院へ急いで」
車が夜の首都高へと滑り出す。
窓の外を流れる街灯の光を見つめながら、私は自分の右手を固く握りしめた。
大学でのあの飛び降り事件から数ヶ月。再び覚醒したこの能力は、休む間もなく私を次の深淵へと引きずり込んでいく。
白い巨塔の裏側に潜む、目に見えない悪意。
命を救うはずの場所で起きている「透明な殺人」。
病院の消毒液の匂いと、冷たい死の気配が、遠くから私を呼んでいる気がした。
コメント
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うわ、第9話めっちゃ引き込まれたわ…! 夜の病院、連続不審死、しかも「白い服の黒い影」ってのがもう完全にホラーの王道でしょ。峯岸さんの電話の緊迫感と九条先輩の「磁場」発言が重すぎて、自然と背筋伸びた。病院の消毒液の匂いと死の気配が遠くから呼んでるってラスト、設定の解像度高すぎて痺れる。続き気になる🔥