テラーノベル
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村の外れに、一本の古い木があった。名前はなかった。誰も名付けなかった。名付けてしまうと、そこに理由が生まれてしまうからだ。
その木は、村ができるよりずっと前からそこに立っていたらしい。
嵐でも折れず、火事でも燃えず、雷が落ちても焦げるだけで、翌年には同じ枝を伸ばした。
人々は言った。
「あれは呪われている」と。
けれど、村が飢えた年、木の根元から清水が湧いた。
疫病が流行った年、木陰だけは不思議と静かだった。
戦火が近づいたとき、敵はなぜかその木を越えなかった。
だから人々は言い直した。
「あれは守り木だ」と。
矛盾を抱えたまま、木はそこにあり続けた。
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