ラディと母がいなくなってから2年がたった。
俺は毎日のように父から暴力を振るわれていた。
父は母が病んでラディが母について行ったことを怒っていた。
お前じゃなくてラディが良かったっていつも言ってきた。
父「なんで、出来損ないのお前がッ」
ボコッガゴッドンッガンッ
らだお「ガハッ、ゴホッゴホッ、」
殴られすぎて痛いという感覚もなくなってきた。
精神が狂ったのか、ただ俺が馬鹿だっただけなのか、ある日俺は突発的なことをした。
いつものように殴られ暴言を吐かれている時だった。
俺の中から急に怒りという感情が溢れた。
今まで抑えていたものが全部出る感覚。
殺してやるという感情。
俺の中の理性が壊れる。
ガンッ
父「ガハッ、おい、!!待てッ!」
俺は父に1発食らわせ台所に向かう。
そういやラディと一緒に格闘技とか言って遊んでたっけ。
らだお「ははっ、まさかここで役立つなんて」
俺はそう小声で言いながらキッチンの外に出ているナイフを持った。
父「おい、待て、何するつもりだ」
父はいつもより焦っていた。
父の焦る顔を初めて見た俺は面白くて面白くてつい笑ってしまった。
らだお「あはっ笑何その顔笑面白いね笑」
父「何を笑っている」
ラディ、俺今ならできる気がするよ。
ラディ「兄貴、」
らだお「ん?」
ラディ「いつかさ、殺せる日が来たら一緒に殺そ笑」
らだお「それはありだね笑」
一緒に遊んだ日を思い出す。
頭が痛い。
らだお「今からお前を殺すじゃあな」
父「何をッ」
らだお「地獄に堕ちろ」
俺は父をナイフでさす。
俺の勢いの反動で父の方に倒れる。
何度も何度も何度も何度も、父親を刺した。
今までの分全部ナイフでさして殺した。
完全に殺してから俺は笑い叫んだ。
自分でもおかしい事に気づけるくらい今の状況がやばかった。
らだお「ぁ゙ッあ゙あああ゙ッーー、」
俺がその状況を理解するのは気絶して数分たった頃だった。
目を開ける。
真っ暗な部屋。
鉄の匂いが部屋の中をただよう。
グチャ、
床では無い感触に俺は下をみる。
そこには父親がいた。
もう息のない父親がいた。
心臓から血が出ていた。
俺は手を見る。
父の血で俺の手は汚れていた。
俺の横には血で汚れている包丁。
俺は瞬時に理解する。
らだお「あはッ、は、あは、ははははッー」
俺が殺したんだ。
やっと、やっと殺せたんだ。
反射で何故か笑ってしまった。
これでもう暴力を振るわれることない。
これできっとラディに被害は及ぶこともない。
これで、これで守ることができた。
俺はまた気を失った。
ピーポーン、
ピーポーン
家のチャイムの音で俺は起きる。
手はまだ血で汚れていた。
乾燥していて少し気持ち悪い。
部屋は生臭くて、父親の死体はまだそのまま、ハエがたむらっていた。
俺は何となく歩き玄関のドアを開ける。
らだお「ばい、」
叫んで笑って何も食べて飲まなかったせいか喉がカラカラだった。
ドアの隙間から少しの光が差し込む。
「あの、ーッ!!」
「君、ッ?!」
外にいたのは警官だった。
女性の警官1人と男性の警官1人。
多分父が仕事に行かず、携帯電話も繋がっていなかったから警察が来たのだろう。
心配されるのは父。
俺じゃなくいつも父だった。
俺はリビングに戻る。
警官2人は俺に着いてきた。
ガチャ、
リビングのドアを開けるとまた生臭い匂いが漂った。
「ッ?!、これは、 」
「何、これ、」
警官2人は俺が殺した父の死体を見て驚いていた。
そりゃそうか。
だって子供が一回り大きい大人をナイフでぶっ刺して殺してそのままにしてるんだもん。
俺はその状況に笑えてきた。
らだお「あはっ笑、あはは、笑」
「ッ、」
俺は今迄の経緯を話す。
精神がぶっ壊れてるんだろうか、ラリっているのだろうか、笑いが止まらなかった。
らだお「俺、俺が殺したんだぁ笑、ねぇ、すごいでしょ?笑、あはっ笑、だって子供がこんな大人をッ笑笑すごいでしょ?笑褒めてよ笑」
らだお「あはは笑」
そんな俺を見ておかしいという目で警察の2人は見てきた。
まぁこの状況を見たら誰もがそう思うだろう。
「ッ、…」
「ネル、救急隊にいや、医者に連絡を、できるだけ仲の良い奴にしろ、」
「はい、」
1人の警官が医師に連絡をとっていた。
もう遅いのに、どうせ助けられないのに。
そう思った。
「…」
警官の男の人が俺に近づいてくる。
そして手を伸ばす。
らだお「ッ、何をするつもりだッ、」
一瞬で今迄の記憶が蘇る。
あの暴力と暴言でまみれた日常。
俺はこの状態では何も出来ずただ覚悟して目をつぶった。
ギュッ
らだお「へ?」
「辛かったね、君に何があったのかわかんないけど、僕たちが来たからにはもう大丈夫だよ、大丈夫、大丈夫だから、」
そう言いながら俺の頭を撫で、ハグをしてくる警官。
精神が安定し始める。
そして
らだお「ぅ゙ッグッ、あ゙ッ、ぁ゙ぁ゙ッ〜ッ、」
らだお「づらがった、ッ、辛かったよ゙ッ〜」
俺は子供みたいに泣いた。
声を出して泣いた。
初めてだった、泣くってこんな感じなんだなって思った。
「ッ、大丈夫、大丈夫だよ 」
らだお「ぅ゙ッ、ぅ゙ッ」
「君名前は?」
らだお「青井、らだお、高一」
「そっかまだまだ子供じゃん、僕はハクナツメって言うんだ、まだ警察になったばっかなんだぁ」
ナツメという警官は新人には見えないほど経験と知識があった。
らだお「ナツメさん、」
ナツメ「うん、なに?」
俺はナツメさんに聞く。
優しく応答してくれるナツメさんに俺はまた泣きそうになる。
らだお「俺、これからどうすれば、ッいい?」
ナツメ「夢はあるの?」
俺はそう聞かれ少しだけ悩んでしまった。
だってあのトラウマが蘇ってきたから。
らだお「…ない、」
悩んだ末ないと答えた。
そう答えた方が楽だと思ったから。
ナツメ「君、警察になりなよ、もう少ししたら警察学校にも行けるし、ここには警察署もある。」
ナツメと言う警察から聞いた言葉は意外なものだった。
ずっと憧れてきた警察。
夢だった警察。
らだお「ッ、俺、警察になってもいいの、?」
人を殺した俺に資格はあるのだろうか。
警察になる資格は、
ナツメ「なってもいいんだよ?夢があることは悪いことじゃない、らだおくん、君はまだ子供だよ。まだ学ぶことの多い子供だよ。」
ナツメ「もっとわがまま言ってもいいよ?夢を見つけ夢を追え、それは苦しくてもきっと楽しかったと思えるものになる」
ナツメさんから貰った言葉にまた心が暖かくなる。
目からはもう涙が出ていて止められなかった。
らだお「ゥ゙ッ、ゔッ、〜ッ、」
ナツメ「ここで、この街で働きたくないなら僕のところにおいで、ここよりかはいい街だから」
らだお「ゔん、ッ、ありがと、ございますッ、」
この人はなんて優しいんだ。
俺はまた泣けてきてしまった。
しばらくするともう1人の女性警官と医者らしき人がやってきた。
ネル「戻ったよ」
ナツメ「この子の手当を先に、こっちはもう死んでいるだろう」
ネル「いや、でも」
警察官ふたりが俺から離れ小さな声で話しているようだった。
俺には何も聞こえない。
聞こえなくてもいい。
もう終わったのだから。
ナツメ「ネル、あの子供見て何を思う」
僕はネルに聞く。
ネル「父を殺してしまって精神が不安定な子供」
ナツメ「なぜ父親を殺したかわかる、?」
ネル「…」
僕は気づいていた。
あの子は
ナツメ「父親からの虐待」
ネル「え、」
ナツメ「さっき落ち着かせようとハグしようとした時の怯えた顔、複数のあざ、そしてあの頭の良さ」
ナツメ「彼は、らだおくんは、警察になるべき存在だ」
彼こそ警察になるべきだと思った。
夢を諦め、虐待を受け、それでも生きてきた彼は絶対幸せになるべき存在だ。
ナツメ「今度はあの子が、らだおくんが幸せになる番なんだ」
ネル「、ナツメ、」
ネル「…わかった先に子供を処置するようお願いする」
ナツメ「ありがとう」
話している様子を見ればナツメさんは警察になったばっかとは思えなかった。
あの判断力と観察力。
優れるものが多かった。
現場を沢山見てきた人にしか分からないことをしているような人だった。
話が終わったようなのか俺に手当をしてくれた。
バックから取り出す道具を見て本格的な医者では無いと直感的に思った。
しかし技術は確かで手早く手当をしてくれた。
その後医者らしき人はすぐに帰っていき警察は俺を保護した。
俺は少年院に行くと思っていた。
だけどそれはなかった。
街のニュースを見ると、俺のことが書かれている内容はあるが、名前も年齢も載っておらず、児童虐待の方が大きく報道されていた。
街にとってはNO.1の医者が虐待をしていたというのが大変な事実なんだろう。
ナツメさんがやったのだろうか。
俺を守るためだろうか、それとも将来警察になる可能性を俺に見込んだのか。
俺は決めた。
俺は絶対に警察になると。
絶対にナツメさんに会うと。
to be continued…
コメント
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なんか...嬉しさと悲しさとほっとした気持ちとかが混ざりあって変な感情ですw