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「西条って、めっちゃ性格悪いらしいよ!」「斉藤さんのこと突き飛ばしてたらしいよ、終わってるよねー」
「あー、見た見た! ちょっと顔が良いからって、調子ノリすぎだし! キモいよねぇ」
あの騒動の翌朝には教室中がそんなウワサで溢れていて、昨日のことを聞いてきた子に否定すれば、話はすんなり終わると思っていた私はどこまでもバカだった。
このクラスには、二年一組全員が入っているグループメッセージ以外にもう一つトークルームがあったみたいで、そこに友達三人が入ってて言いふらすなんて思いもしてなかった。
麗華が登校してくる前に悪口を止めてもらおうと、友達三人に話があると屋上に来てもらって……。いや正確には、クラス内で目立つぐらいに頼み込んで、なんとか屋上に続く階段へと来てもらうことが出来た。
「ちょっと、教室で騒がないでよっ! 悪目立ちするじゃん!」
「何ぃ? 寒いんだけどぉ!」
莉緒と紗枝の刺さるような声に一瞬怯んでしまうけど、今はそんな場合じゃない。
「あれは私が勝手に転んだだけ! 西条さんは何もしてないよ!」
言葉にすると余計に苦しくなるけど、三人に必死に説明して、間違いだったと訂正してと頼み込む。
だけど、何度話しても、「そんなウソつかなくていいよ」って軽く返してくるだけで、ぜんぜん取り合ってくれない。
違う、ホントに違うんだよ!
後でゆっくり思い返して分かっているのは、麗華は何もしていない。
確かに私のスマホを手に取ろうとしてきたけど、体には触れてないし、尻もちをついたのは私が勝手にバランス崩して倒れただけ。
普通の人なら転けることもなく「どうしたの?」と聞けるのに、これほど話が大きくなってしまったのは、私がとことん鈍臭いせいだった。
ダメだ、このままでは埒が開かない。クラスに戻ってホントのことをみんなの前で言おう。
クラスで声を上げる自分を想像すると息がどんどんと苦しくなっていくけど、すうっと息を吸って吐き、階段を降りようと一歩を踏み出す。
すると急に体がフラッとして、またしても尻もちをついてしまった。
「……えっ?」
打ちつけた腰の痛みより背中にゾワっと感が襲ってきたのは、腕をガシッと掴まれたとハッキリ分かっていたからだ。
「あー、ごめんごめん。そんなことよりさ、クラスのみんなに『あれは間違いだった~』とか言う気ぃ?」
昨日は転けた私を気遣ってくれたはずなのに、今日は「そんなこと」と軽く流され、打ってないはずの頭がガンガンと痛くなってくる。
腕を強く引っ張られて転けさせたと、私でも分かるぐらいにあからさまだったから。
「……あ、だって……」
「そんなことされたらさ、私らの情報網は当てにならないってクラス中に言いふらすようなもんじゃん! ふみぃ、私ら貶める気ぃ?」
「お、貶めるって何?」
パッと振り返ると屋上に続く階段は照明がなくて薄暗く、上から見下ろしてくる三人のギラギラとした目があった。
「大丈夫、大丈夫! 私らに任せといたら、間違いないから!」
「さっ、授業始まるよっと!」
私の前に回り込んできた莉乃に手を引かれ、紗枝、真希に背中を押されて階段を降りていく。
#普通
野々さくら
552
芙月みひろ
705
#ざまぁ
まぁ
33,979
#謎解き
井川奎
42
その冷たい手が言っているような気がした。
「余計なことしないでよね。もしもの時は、分かっているよね?」と。