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ネクロマンサーのこともそうだが、フィーサは何かを知っているようだ。町の名前が分かった以上、不明なことははっきりさせておかなければ。
「何がやっぱりなんだ? フィーサ」
「……イスティさま」
「ウニャ? どうしたのだ?」
「はぇ? 何です~?」
「グライスエンドは末裔がひっそりと暮らす町なの……」
末裔というと代々続く血筋の一番最後の者か。元々の能力者や術者はすでに世界から忘れ去られている者が多い。勇者や賢者は放っておいてもまた生まれてくるが、特殊なスキルを持つ者は血が絶えればいなくなってしまう。
そんな特殊スキルを使う末裔がひそかに生き残っていたということになる。
「イデアベルクを取り戻さなければ知らないままだったな……」
生命力を高める温泉村もそうだし、この地には不思議な場所が人知れずあるようだ。フィーサの言葉に少し驚きはしたが、おれ自身もレアなスキルを持っているので戸惑うほどではない。
「アック様、町に入らないんですか~? わたしはどこかで休みたいですっ!」
「ウニャッ! そうなのだ。シーニャも休みたいのだ」
「まぁ、待て。外門から中へ入ったらすぐに戦うことになるかもしれないから準備を整えておくぞ」
今さら強さのランクに警戒する必要は無いが、末裔が繰り出すものは冒険者のそれとは異なるだろうし気を付けておく必要がありそうだ。
「イスティさま。魔石を使うの?」
「あぁ、そうだ。久しぶりすぎる気もするが、ここでガチャをする」
「……じゃあわたしとシーニャの魔石も混ぜて欲しいの」
「専用魔石か?」
「うん。きっとソロの戦闘で必要になると思うから……」
フィーサの言うとおり、パーティー戦闘となった場合は個々で戦う場面が出てくる。彼女たちはそれぞれ苦手な戦いがあるが、苦手なことの克服は容易でもないし全て守ることが出来るわけでもない。
そういう意味でもここは魔石に懸けてみることにする。
「あれれ~? アック様、魔石ガチャをするんですか~?」
「まぁな」
「そういえばわたしの専用の魔石って……まだ無いんでしたっけ?」
「……ルティの魔石はまだ覚醒してないな。名前だけは魔法文字《ルーン》で見えているが……」
何でかは分からないけど。
「えぇぇ~!? わたしだけ何でなんですかぁ?」
「まぁ、そのうちに変わるだろ」
「むむむむ……」
ルティに魔石を触れさせても何の変化も起きない。つまり、今の時点ではまだその時ではないということなのだろう。それはともかく、シーニャとフィーサの魔石を混ぜながら魔石を握りしめ、地面に放り投げた。
【Lレア エレーヴクローク 木属性を覚える 潜在:攻撃を受ける 獣人専用】
【Lレア ミンストレルリキッド 潜在:対象の攻撃を受けると? 神剣専用】
「ウニャッ! シーニャの新しい装備なのだ?」
「わたしのは一体何かなぁ?」
「シーニャ、そのクロークを着てみるといいぞ」
「分かったのだ!」
シーニャ用は分かりやすい。
「悪い。フィーサのは分からない。透明な液体のようだが……」
「シーニャのもわたしのも攻撃を受けるのが条件なんだ~? 痛いのは嫌なのに~」
「剣に戻れば問題無いんだろ?」
「そうだけど~……」
人化の時は大人びていると思っていたが、慣れてきたのか剣の時と変わらない。それにしても、やはり彼女たちの魔石を混ぜるとおれに関係したアイテムは出てくれないようだ。
もっとも今の時点では恐れるものは何も無いわけだが。
「アック様は出さないんですか~?」
「いや、必要ないだろうと思って」
「駄目ですよ! 何か起こるかもしれないじゃないですか! わたしの代わりに、何か出しちゃってくださいっ!! さぁさぁさぁ!」
「ん、そうか? それなら……」
自分のアイテムが出ないにもかかわらず、ルティがじっとおれを見つめている。シーニャは真新しいクロークに着替えているし、フィーサは出たものを眺めまくりだ。
何が出るか、魔石をシャッフルさせて地面に放り投げた。