私
にとって、それは「死」だった。
「生」とは「死」に向かって進むことだ。
「生」には「死」しかないのだ。
それなのになぜ、「生」にしがみつく必要があるのか。
「死」を恐れて生きることになんの意味もない。
この世界に「死」が存在しないのならば、「生」にも価値はない。
だから私は「生」を捨てた。
ただひとつ残ったものさえ、失ってしまったけれど。
それでもまだ生きている。
それが不思議でしょうがないよ。
「生」を諦めてまで手に入れたものはなんだったのか? 愛していると囁きながら、お前たちは裏切るのだ。
それなのにどうして信じようと思う? 希望は絶望の裏返しだと言うけれど、それは違うよ。
希望がなければ絶望もないんだよ。
そうやって人は生きてきたんじゃないのかな? 幸せになりたいと思っているうちは幸せなんじゃないかな? 自分の力で掴めないモノなんてこの世にはないと思ってた。
だから、何もかも欲しいと思った。
だってそれが当たり前でしょう? みんなそうだよね? 私は特別な人間じゃないもの。
私にはなんでもできた。
できないことなんかなかった。
それでも満たされることはなかった。
空っぽのまま、時だけが過ぎて行った。
それはまるで砂時計のように……。
この世に生を受けた瞬間に、 人生の全てが決まっているなんて馬鹿げている。
そう思っていても……運命からは逃れられない。
どんなに足掻こうとも、決められたレールの上を走ることしかできない。
抗うことすら許されないのか……。
だったらいっそ全てを諦めようと思った。
だけど、諦められなかった。
夢を見るくらい許されてもいいじゃないか。
夢を見たまま死んだとしても構わない。
未来を望まずにはいられない。
未来を信じずにはいられない。過去を振り切らなければ生きていけない。
今を受け入れて前に進もうとする。
だが、それはとても難しいことだ。
人には人のペースがある。
無理強いするのはよくないよ。
君たちのペースでゆっくりと進めばいいさ。
ゆっくりでいいんだよ。
焦らず、一歩ずつ歩いていこう。
人生なんて短いものじゃない。
長い旅路の途中だと思っていれば大丈夫だよ。
人はいつか必ず死ぬものだ。
死を恐れるのは仕方がないことだけどね。
それでも恐れすぎる必要はないと思う。
人は死んだあとにどこに行くのかわからないけれど、 もし行ける場所があったとしても、 そこでまた何かを見つけて生きるしかないんじゃないかな? だから今を大切に生きていきたいよね。
未来のために頑張ってきたけど、疲れちゃったよ。
もう休ませてくれないか? ああ、君には見えないかな? じゃあ教えてあげるね。ほら、見えるだろ? 僕はこんなにもボロボロだよ。これでもまだ頑張れると思うかい? 僕の声を聞いてくれ! 僕の言葉を信じてほしい。
きっと皆んな幸せになれるはずだ。
そうさ。だって僕たちには力があるじゃないか。
君は僕の運命を変える。僕にはそれがわかる。
僕は君を守るよ。だからお願いだ。
君の瞳の中に映る景色を見せてくれないかい? ああ!なんて美しいんだろう!この世界にこんなにも素晴らしいものがあるなんて信じられないくらいだよ!! 成功、希望、向上、幸運、夢の実現。
不調、絶望、失敗、不運、破滅、後悔。
あなたに会ったことで、私は変われたんです。
もうあの頃には戻れないけれど……。
今となっては全てが懐かしくて、愛おしい。
私にとって、あなたとの出会いは全てだったのです。
さようなら。どうか幸せになってくださいね。
喪失感、虚脱感、失望、空っぽの心。
あなたのせいで何もかも失ったわ。
私がどれだけ苦しかったと思う? 責任取ってよね。じゃないと許さないんだから。
あなたのせいよ。全部あなたが悪いの。
わかってるでしょうけど。
あなたのことなんか好きじゃなかった。
ただ都合が良かっただけ。それだけのことなのに。
なんで勝手に勘違いしてたわけ?馬鹿みたい。ほんっと笑っちゃう。
ねえ、何か言ってみてよ。
いつもみたいに怒らないの? それとも泣きそうな顔とかしてくれるのかなあ。
そしたら少しは優しくできたかもしれないのに。
ごめんなさい。本当はずっと前から知っていました。
それでも私はあなたを利用した。
最低なことをしている自覚もあった。
だけど止められなかった。
きっとあなたに惹かれていたんだと思います。
だからあなたのことをもっと知りたかった。
だけどもう遅いんですね。
あの頃の私には戻れないみたいだわ。
それはきっと私が悪いのでしょうけど。
今更言っても仕方がないわよね。
だって、あなたは遠くへ行ってしまったのですもの。
さようなら。
あなたにとってはどうでもいいことかもしれないけれど、 わたしにとってはとても大切なことだったのよ。
ありがとう。
そう言うと、少女は少し困ったような顔をして、首を傾げた。
その表情の意味するところを知る者はいない。
彼女はもう二度と笑うことはないだろう。
この世で最も美しいモノを壊すことには成功したが、 それを手に入れることはできなかったのだ。
しかし、それはそれで悪くない。
それが欲しかった訳じゃないしね。
彼女が笑えなくなったとしても、 俺が傍にいる限り問題はないさ。
俺はずっと一緒にいてあげるよ。
だから、安心していいんだよ。
ねぇ、お嬢さん?
「愛している」「好きだ」なんて言葉じゃ足りないくらい、キミを愛している。
「好き」という言葉だけでは伝えきれない程に、キミが好きだよ。
「愛している」という言葉では表現できない程に、キミを大切に想っている。
きっと、「好き」よりも「大好き」の方が近いと思うけれど、それでもやっぱり何かが違う気がする。
こんなにも胸の奥が苦しくなるほどの想いなのに、言葉にするだけで満足してしまうだなんて……不思議だと思わない