気が付くともう朝になっていた。体が怠くて動かせない。空気が喉に張り付いているみたいに乾いていて喋れない。体調を崩して3日くらい経つのに何も良くならない。まぁ自業自得な部分もあるが。でもここまで治らないのは初めてで、体調の悪さと精神的辛さで涙がでる。最近ずっと泣いてしかいないが、しょうがないと思う。それ位きついのだ。流れてくる涙を止めようともせず、ただただ天井を見ていると、ドアが静かに開いた。
「…あ、舘さん。起きた、良かった。」
「…」
「あれから舘さん死んだように眠ってて。丸一日寝てたんですよ。」
「…!」
「…2人は仕事に行きました。ずっと心配してましたよ…俺らが追い詰めてたんじゃないかって。」
「…ぁ…ぅっ…」
「…水持ってきますね。…後タオルも。ずっと泣いてるから。」
そう言って目黒さんは寝室を出て行った。…まさか自分が丸一日寝ていたとは思わなかった。てか1日寝ていてまだ何も進展なかったのか。
「…ん、だ…さ、舘さん。」
「…っ!」
「ごめんなさい、驚かせるつもりはなかったんすけど…水持ってきたんで少しでもいいから飲みましょ。起きれますか?」
「…」
「…ですよね。じゃあ失礼します。」
そう言った目黒さんは、俺をそっと起こしてその後ろに回り背もたれ状態になった。所謂バックハグみたいな状態。そして後ろからペットボトルに入った水を俺の口元に当てた。
「…飲めますか?」
「…んく…ん…」
「もういいときは袖を引っ張ってください。」
2、3口飲んで目黒さんの袖を軽く引っ張る。すると目黒さんはペットボトルを離した。そして、そのままの状態で話しかける。
「お腹空いてません?もう3日位何も口にしてなかったわけだし…」
そう言われてみれば、確かに空腹感はあるかも。
「…おなか、空いた、…」
「よかった。康二がお粥つくってくれたから。ちょっと待っててください。」
そう言って目黒さんは温めたお粥を持ってきた。
「はい。…食べれるだけでいいから。…いきなりだと胃がびっくりするからゆっくりね。」
「…!」
「…?どうしました?」
「あ…いや、その…さっき、初めて敬語外してくれたなって…」
「…あぁ、無意識だった。外して欲しいですか?」
「…目黒さんにも色々あるだろうし、無理してはずしてもらわなくてもいい…です。」
「…こんなときでも優しいんすね。舘さんは。」
「いや、そんなこと…」
「ありますよ。…まぁ、俺の敬語を外したいなら…1つ、条件があります。」
「条件…?」
「舘さんも敬語を外して。そしたら敬語をなくします。」
「…え、と…」
「…無理に、とは言いませんが。」
「っ、や…分かった…目黒さん。」
「…!、ありがと、舘さん。」
「っ…」
「よし、じゃあお粥食べよう。冷めちゃうから。」
目黒さんに言われ、ようやくお粥を口にする。久々の自分以外の人が作ってくれた手料理が温かくて、すごく美味しくて、嬉しくて。涙が頬を伝った。その様子を見ていた目黒さんが慌てて俺の背中をさすってくれた。
「ちょ、どうしたの?どっか痛い?」
「ちがっ…嬉しく、て…」
「…嬉しい?」
「う、ん…誰かに、ご飯を、作って貰えた、のって久々、だったからっ…」
「…そっか。」
そのまま泣きじゃくる俺を目黒さんは抱きしめてあやすように背中を撫でてくれた。その体温が温かいのと空腹が満たされたので、俺はいつの間にか眠りについていた。
コメント
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続き楽しみです🥰