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#普通
野々さくら
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ありあ
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数日前。6月25日、水曜日。
オカルト雑誌『MW−ムウ−』編集部。
朝の編集部には重苦しい空気が漂っていた。
編集長・江波山忍は、朝刊を机に広げたまま、眉間に深い皺を寄せている。
「まったく・・馬場のやつ・・・」
低く吐き捨てるように呟くと、新聞を睨みつけた。
そこへ、MWライター・馬場龍河がいつもの気の抜けた調子で出勤してきた。
「お疲れーっス」
忍はすぐさま顔を上げる。
「おい!馬場!ちょっとこっち来い!」
突然の怒鳴り声に、龍河は首を傾げながら近づいた。
「なんスか?何かあったんスか?」
忍は机を叩く勢いで立ち上がる。
「何かあったかじゃないんだよ!」
そして、龍河を鋭く睨みつけた。
「お前が先月号で取り上げた霊貴冥孤だよ!」
龍河はすぐに思い当たる。
「ああ、あれっスね。どうでしたか?
反響ありました?」
忍は額に青筋を浮かべた。
「反響どころの話じゃないんだバカ!」
龍河は目を丸くする。
「え? どういう意味っスか?」
忍は新聞を指差した。
「パクられたんだよ」
「パクられた?」
龍河は思わず身を乗り出す。
「まさか週刊文秋にネタパクられたんスか?」
忍は呆れたように首を振った。
「そっちじゃなくて、逮捕されたって意味だ」
「え!?逮捕!?マジっスか!?」
「ああ・・・これだよ」
忍は朝刊を龍河へ手渡す。
龍河は新聞を受け取り、記事へ目を走らせた。
『狗頸学園高校の生徒が詐欺師の悪事を見事暴く』
『霊感商法詐欺師・霊貴冥孤逮捕』
記事を読み終えた龍河は驚きを隠せない。
「え!?詐欺師だったんスか!?」
忍は頭を抱えた。
「詐欺師なんかウチで扱いやがって!
おかげで今朝からクレームの嵐だよ!」
龍河は肩をすくめる。
「あ、すいません・・・」
忍はじっと龍河を見据えた。
「お前、ちゃんと取材したのか?」
龍河は気まずそうに頭を掻く。
「いやぁ実は俺も、噂程度にしか聞いた事無くて
それに締め切りもギリッギリだったんで
この際、記事に出来りゃ何でも
良いやって思いつきで書いたんスよね」
乾いた笑いを浮かべながら続ける。
「あはは・・・まさか詐欺師だとは」
忍は怒鳴り声を響かせた。
「笑い事じゃない!」
龍河は慌てて姿勢を正す。
「すいません・・・」
忍は深いため息をついた。
「今度はきちんと取材してから記事書け!分かったか?」
龍河は神妙な表情で頷く。
「はい・・・すいません」
忍は気持ちを切り替えるように椅子へ座り直した。
「次はあれか?『カルネアデスバス』だったか?
昔から言われてる都市伝説ではあるよな
実在すんのか?そんなバスが本当に」
龍河は自信なさげに頷く。
「まあ、そこは調べてみないと
何とも言えないっスね・・・」
忍は呆れたように肩をすくめた。
「適当に記事書いてたくせに
何が『調べてみないと』だ!生意気言うな!」
苦笑しながら続ける。
「まあ、いいけどな。次はしっかり頼むぞ?」
「はい・・・」
龍河は力なく返事をすると、再び朝刊へ目を落とした。
(狗頸学園高校の怪異探求倶楽部ね・・・)
龍河は記事を読み進めながら考え込む。
(何者なんだ? こいつら・・・)
さらに記事の内容を追う。
(どうやって霊貴の悪事を見抜けた?)
次々と疑問が頭に浮かんだ。
(それに、どうやって自白させたんだ?)
そして、その思考は自然と次の取材へと繋がっていく。
(カルネアデスバスのついでに調べてみるかな)
その様子を見ていた忍が、不意に声をかける。
「あと!分かってると思うがな?」
龍河は顔を上げた。
「はい?」
忍は人差し指を立てる。
「間違っても高校生を調べようとするなよ?」
龍河は乾いた笑いを浮かべる。
「あはは・・・わ、分かってますよ」
そう答えながらも、心の中では別のことを考えていた。
(なんで分かったんだ?
俺が高校生を調べようとしてるって)
すぐに我に返る。
(まあ、とりあえずは
カルネアデスバスの取材の方が先だよな)
龍河は新聞を机に置き、勢いよく立ち上がった。
「じゃあ俺は早速、取材に行って来ます」
忍はじろりと睨む。
「しっかりな?」
龍河は親指を立てて笑った。
「うーっス」
バックパックを肩へ掛けると、そのまま編集部を後にする。
──バタン。
扉が閉まり、静けさが戻った編集部。
忍は再び朝刊を手に取り、真剣な眼差しで記事を見つめる。
しばらく黙って紙面を追っていたが、不意にぽつりと呟いた。
「それにしても──」
記事に添えられた一枚の写真へ視線を落とす。
「この子・・・似てるんだよな」
写真に写る少女を見つめながら、小さく名前を口にする。
「御船愛子に似てるんだよな」
忍の表情がわずかに曇る。
「なにか関係してるのか?」
この時、怪異探求倶楽部のメンバー、それとMWの関係者は知らなかった。
この霊貴冥孤の逮捕が、のちに日本と言う国の存亡を揺るがす大きな陰謀のキッカケなるという事を。
File5−ハデスの代弁者──END。
コメント
1件
×××さん、第150話お疲れ様です!MW編集部のやり取り、すごく臨場感があって引き込まれました。馬場さん、噂だけで記事書いちゃうところが彼らしいというか(笑)。でも編集長の「御船愛子に似てる」って最後の一言がすごく気になります…!このシリーズ、たしか過去に御船愛子さん出てきましたよね?伏線が繋がる瞬間を想像するとワクワクします。次の展開が待ち遠しいです!