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コメコパァァン
空気はまだ重い。
でも、さっきまでとは違う。
翠は泣き疲れて、赫の隣で座ってる。
でも今は、ちゃんと“守られる側”にいる。
席を外してた学年主任が
いつの間にか戻ってきてて、静かに口を開く。
「ここからは、学校が正式に動く」
全員が顔を上げる。
「退学処分は確定した。
ただ、それだけでは終わらせるつもりは無い」
机の上に書類が並ぶ。
・いじめ重大事案としての正式記録
・教育委員会への報告
・再発防止対策の義務化
・校内全体への調査拡大
「今回の件は、隠蔽もしない」
はっきりとした声。
「そして──
被害を受けたのは、赫だけじゃない」
一瞬、空気が止まる。
翠の指が震える。
赫が、その手を強く握る。
学年主任は続ける。
「翠も、被害者として正式に扱う」
桃が、静かに目を細める。
茈は拳を握りしめる。
黈の目に涙が浮かぶ。
瑞は、翠の袖をぎゅっと掴む。
「もう、“誰かのために黙る”必要はない」
先生の声は、強い。
「お前はもう、守られる側だ」
翠は、言葉を飲み込む。
喉が鳴る。
「……俺、守られていいの?」
小さな声。
その瞬間。
赫が立ち上がった。
「いいに決まってるだろ」
声は震えてる。
でも目は真っ直ぐ。
「俺、守ってもらった」
翠を見る。
「俺が逃げられたの、
笑えたの、
学校来れたの、全部──」
息を吸う。
「翠にぃのおかげだった」
部屋が静まり返る。
「今度は俺の番」
赫は、はっきり言う。
「守られた分、返す」
翠が目を見開く。
「俺が前に出る」
赫は学年主任を見る。
「俺も証言する。
俺が見たことも、感じたことも全部話す」
ぎゅっと拳を握る。
「今度こそ、翠にぃ一人に背負わせねぇ」
桃が、ゆっくり頷く。
「そうだな」
茈も短く。
「全員でやる」
黈が涙を拭いながら言う。
「一緒に学校行く。
翠君が怖いなら、俺が隣にいる」
瑞も必死に言う。
「瑞もそばにいる!」
翠は、息を詰まらせる。
今までずっと
“守る側”でいようとした。
壊れてもいいと思った。
でも今──
守られることを、拒まれない。
赫が、真正面から言う。
「翠にぃ」
視線が合う。
「もう一人で戦うな」
静かに、でも強く。
「兄弟なんだから」
翠の目から、また涙が落ちる。
でも今度の涙は、違う。
「……ありがとう」
震えながら、でもちゃんと言う。
学年主任が締めくくる。
「明日からの登校は無理をしなくていい。
別室対応、時間差登校、何でも調整する」
「保護者とも連携を取りながら、
継続支援を行うから安心してろ」
正式対応は、もう始まっている。
隠れた死角じゃない。
光の下で。
そして──
赫が小さく、でもはっきり宣言する。
「俺が守る」
翠が驚いた顔をする。
赫は、少しだけ照れた顔で続ける。
「今度は俺が、翠にぃの盾になる」
保健室の空気が、少しだけ温かくなった。