テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#怪異
イキリ火の玉
1,443
暗い物思いにふけっているとミサが近寄ってきた。
「ちょっと、ボクゥ」
努の腰に手を回すと残ったほうの手で胸や脚を触ってきた。
「な、なんですか?」
「一緒に来てよぉ」
ミサはいつも拷問に参加して発情している。そして拷問が終わると自ら村人に抱かれていた。努の胸に期待が広がる。40代だと思うがこんな環境でもミサは色っぽかった。
恐怖や罪悪感を誤魔化すようにウキウキしながらミサが使っている一軒家に入った。奥原の家と同じくらいの大きさだ。
そこには四人の村人が囲炉裏を囲んでいた。
「あの、これって?」
全員奥原の取り巻きで、いわゆる上層の村人だ。
「そのネーちゃん性欲が強くてな。今日は観戦させてもらうわ」
「いやいや、そんなの無理ですよ」
「無理なら次の生け贄はニーちゃんに決定だな」
この村人たちにそんな権限はないと思ったけど、どのみち逆らうことは出来ない。この村に役立たずを養う余裕はない。だから腕の一本でも折られたらそれだけで次の候補になる可能性が高くなるからだ。
「ほれほれ、脱げ脱げ」
慣れたものでミサはストリッパーのように村人たちにアピールしながら服を脱いでいく。薄い囲炉裏だけの明かりがより妖艶さを際立たせた。
「ニーちゃんも、はよ脱げ」
「は、はいぃぃ」
努は慌てて脱ごうとしてズボンが引っかかり思わずつんのめる。それを見て村人たちはゲラゲラと笑った。
「お姉さんがリードしてあげるわ」
全裸のミサが体をくねらせながら近寄ってくると棒立ちしている努の耳にキスをして耳から頬、そして唇を重ねる。女性経験のない努はそれだけで股間が痛いほど硬くなった。
「おーおー、さすが若いねー」
村人の下卑た言葉も気にならない。
「んふ、いいわねぇ」
ミサは優しく股間に触れてささやく。それだけで射精しそうになったけど今回は頑張って我慢した。それからミサは執拗に努の乳首を愛撫した。努には経験のない快感に頭が蕩けそうになる。
「おう、ニーちゃん、大丈夫か? 入れる前に出すんじゃねーぞ?」
その言葉に危うく射精しかかっていたことに気づいて気を引き締め直した。
ミサはさすがにヤクザの愛人だけあって男の扱いがうまかった。股間には時々ソフトタッチするだけでギリギリ射精まではいかない。焦らされて焦らされて努はミサの想像以上に限界にきていた。
「うふふ、かわいがってあげる」
ミサは両膝を床に付けて顔を努の股間の前にもってきた。そして股間に口を近づけると軽い冗談のつもりでフッと息を吹きかけた。
「あっ」
思わず射精してしまった。ドブドブと大量の精子がミサの顔にかかる。
「もぉぉ」
村人たちが腹を抱えて笑っている中、顔に精液をかけられたミサは不満の声をあげる。
「すみません……すみません……」
努は何度も謝りその言葉がついさっきまで沢村に対して言っていたことを思い出して気持ちが滅入る。気持ちとともに股間もしぼんでいき、それを見てまた村人たちは笑っていた。
「ニーちゃんにはまだ女は早かったか? ププッ、もう帰っていいぞ。プププ」
村人に小馬鹿にされ努は涙目になりながら服を着て出て行った。気持ちが落ち着くまで集会所には戻りたくなかったのでお堂まで小走りで向かった。
お堂は昼間でも村人はもちろんヤクザたちも滅多に来ない。だから一人になれるこの場所が好きだった。
夜空を見上げるとほぼ満月の月が見えた。綺麗で絶望的な月。
明日、沢村が殺される。嫌な奴だった。何度も殴られた。頭が悪いのに偉そうで、そのくせ梶にはペコペコして……でも。この一ヶ月一緒にすごした仲間だった。
それが、あんなに酷い拷問を受けて殺される。可哀想と思う気持ちや次は自分かもという恐怖がごちゃ混ぜになってまた涙が出てきた。
怖い辛い助けて。叫びたかった。そんなことをあれこれ考えていたから、すぐ後ろに人が来たことに気づかなかった。
「長岡クン、みーつけた」
女の子の声に驚いて振り返るとちぃこが立っていた。一月前と同じ月に照らされて幻想的な姿で。
「ちぃこ……」
「ん? 泣いていたの?」
「い、いや」
努は慌てて目もとを擦る。
「ん、いい子いい子」
ちぃこは努の頭をナデナデした。努は情けないと思いながら安らぎを感じていた。
心の不安を全部ぶちまけたい。そんな誘惑もあった。だが、ちぃこはケツシ……アオ様の使いだと思うと喉まで来ていた言葉が止まる。
「ん? どうしたのかな?」
「なんでもないよ」
「そっかぁ」
いつもならもうちょっと絡んでくるちぃこだが、この月の下ではスッと後ろに下がって微笑むだけだった。
ちぃことの二人きりに耐えられず努は逃げるように集会所に戻っていった。集会所には梶が一人、壁を背に書物を読んでいた。
「梶さん、怪我の調子はどうですか?」
「それなりだ」
梶は怪我のせいもあり仕事は免除されている。それどころか貴重な薬草を使って治療もされていた。
努には容赦ない村人たちも怪我でろくに歩けない梶には手をまったく出していなかった。時々見舞いに来る巨漢の安田を恐れているのかと思ったが、それより梶自身がもつ迫力に本能的な恐怖を感じているようだった。
「あの……沢村さんを嵌めたんですか?」
ここ数日、訊けなかったことを訊いた。
沢村が単独で村の乗っ取り計画をするはずがない。実際、拷問に耐えられなくなると沢村は梶の指示だったと吐いた。
奥原たちはとっくに気づいていたようだがそれは嵌められた沢村が悪いという態度だった。
梶は努の質問を無視している。しばらく無言。努は改めて梶に声をかけた。
「あの、明日ですが……」
「……満月だな」
梶はボソリとつぶやく。
つまり明日の夜、沢村が殺される。そして、その翌日には新たな生け贄が決まる。
「誰が選ばれるんでしょうか……」
「さあな」
梶は素っ気なく答えた。
梶はきっと選ばれない。討伐達の生き残りの村人は沢村を裏切って奥原への忠誠心を示している。だったら次に選ばれるのは……。
考えないようにしてきたことを冷静に考えると努は気が気ではなかった。
「ぼ、僕を選んだりしないですよね?」
「……」
梶は答えない。
「梶さん!」
「……考えろ」
梶は一言だけ答えた。
考えろ。それはずっと梶が努に言ってきたことだ。
もちろん努は考えていた。でも、いまの状況では努が次の生け贄候補から逃れる術がるようには思えない。なら、もはや方法は梶に口添えしてもらうしか方法がなかった。
努は懇願の表情で梶を見た。しかし、梶は努の視線を無視して書物を読むだけだった。
コメント
1件
うわあ……今回も重かったですね。ミサとの場面、正直読んでいて辛かったです。努くんが「ついさっきまで沢村に対して言っていたこと」を思い出すところ、自分の行為と相手の境遇が重なるという構造が胸に刺さりました。そして梶さんの「考えろ」の一言。この絶望的な状況で「考える」ことこそが突破口なんだろうなと思いつつ、努くんにまだその余裕があるのか心配にもなりました。ちぃことの月夜の静かなやり取りも切なかったです。続き、気になりますね。