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🌸「……御意。」
…とはいえ情報は全く無い。
あのあとボスから教えられた情報だって、敵の名前のみ。
あの紫髪の男の名前は、「ゆぺ」というらしい。
いかにも偽名らしい名前。
マフィア界で相手に自分の名前を名乗るときは、基本的に偽名がほとんどだ。
おれも本当の名は名乗らないし。
🌸「…さてと、どうしようかな。」
次の日になって、今更ながらにそう考える。
こんなに情報が少なければ、このゆぺとかいう奴に出会える可能性だって低い。
まずは相手を探ることからだな。
ボスが期間を半年と言った理由を、痛いほど思い知らされる。
🌸「とりあえず今日はシフトが入ってるし、お店に行くか。」
一旦この件は後回しにすることにした。
🌸「お疲れ様です。」
店長「あ、お疲れ様。今日も頑張ってね。」
🌸「もちろんです。」
モブ「おにーさん、これ一つちょーだい?」
🌸「はい、今から作ります、!」
おれは頼まれたお酒を作って、お客さんに出した。
モブ「うまー!おにーさんの作るお酒って、どれも美味しく感じるわー!」
🌸「それは良かったです、笑」
モブ「でもなんでだろー?イケメンなおにーさんだからかな?笑」
🌸「そうですかね…?
でも、ありがとうございます、笑」
モブ「おにーさんって、彼女とかいるのー?」
🌸「え?それは流石に言えませんよ笑」
上辺だけでも笑い合えるこの空気感、賑やかで明るいお店がおれは好きだ。
🌸「はぁ…」
店長「どうしたの、ため息なんか吐いちゃって。」
🌸「え、…」
それは完全に無意識だった。
お客様の前では笑顔で明るく対応する、これは前に店長に言われた言葉。
今はちゃんとそれができているのだろうか。
店長「悩み事でもあるの?俺で良かったら、何でも聞くよ?」
流石優しい店長だ。
こんなおれにも気遣ってくれる。
店長にはおれがマフィアであることを言ってないから相談はできないけど、その気持ちだけで充分嬉しい。
カランカラン。
お店のドアを開いた音が聞こえた。
?「お店、まだやってますよね。」
店長「いらっしゃいませ。はい、当店はまだ閉めてませんよ。こちらへどうぞ。」
その時やってきた男の顔を、おれは覚えていないわけがない。
整った容姿に紫髪、おれよりも身長が高いその姿に、”知らない”なんて言えない。
🌟「ありがとうございます、店長さん。そこの店員さんとお話ししても?」
店長「え?あぁ、もちろん良いですよ。」
そうしておれは呼び出された。
🌟「こんにちは。君、”さくら”でしょ。」
“さくら”
それがおれのマフィア界での偽名だ。
その名前で呼ぶということは、相手もきっとおれがマフィアであることを知っているんだろう。
つまり今からこの人がおれに話したいことは、きっとそっち関連の話だろう。
🌸「…その話は控えて貰えませんか。」
🌟「それはどうしようかな?じゃあ、仕事が終わったらここに来て。」
おれは一つの紙切れを渡された。
それを見ると、何やら住所が書いてあった。
🌟「もし来なかったら…」
「君がマフィアであることをバラすから。」
その表情はどこか笑っているようなのに、目は全く笑っていない。
これが俗に言う、不気味な笑顔というやつなのかな。
🌸「…了解です。」
でも、これはチャンスだ。
こんなにも早く出会えるなんて。
彼がおれの居場所を突き止めて会いに来た可能性は高いけど、情報が掴めるならそんなのどうだって良い。
こんな絶好のチャンスを逃すほど、おれは馬鹿じゃない。
おれは仕事が終わった後、書いてある通りの場所へ向かった。
🌟「…あ、ちゃんと来てくれたんだ。偉いね、君。」
🌸「来ないと正体をバラすとか言って脅したの、誰だったかな。」
🌟「ふっ、それはごめんって。」
そう軽々しく彼は笑った。
まるで悪意はなかったんだけどね、とでも言いたそうに。
🌸「…それで、なんの用。」
🌟「僕はね、君と仲良くなりたいの」
🌸「そんなの無理。」
🌟「それは僕を殺せと命令が出ているから?」
🌸「…さぁ。」
🌟「ねぇ、僕と組もうよ。」
「君と僕が組めば、きっと最強になれる。」
🌸「…そんなの結構。」
どういうつもりで言っているのかは分からない。
ただ、目の前には隙だらけの敵。
おれは隠し持っていたナイフを振り下ろした。
🌟「…おぉ、やっぱ流石だねー君は。」
🌸「そっちこそ。」
おれが振り下ろしたナイフは、いとも簡単に避けられた。
やっぱり、そう簡単には殺せないらしい。
🌸「…もういいや。」
おれはその場を去ることを決めた。
武器も少ないこの状況で勝てるとは到底思えなかったから。
🌟「へぇ。判断力が良いね。」
「別に帰っても僕は構わないけど。」
🌸「…。」
🌟「あ、近いうちにまたお店に行くね。」
🌸「…勝手にしたら。」
そう一言だけを呟いて、おれはその場から立ち去った。
不思議だな。
おれが攻撃を仕掛けた時に反撃してくると思ったけど、結局してこなかった。
もしかして、本当にあれだけを言いに来たのか?
🌸「変な奴、」
世の中、おかしな人でいっぱいだ。