夏の昼下がり。
蝉の声が響く中、倉斗は校庭で爽やかに微笑んでいた。
「いい天気だな、後輩ちゃん!」
「……まあ、暑すぎて溶けそうですけど。」
鈴は日陰でアイスを食べながら、汗ひとつかいていない倉斗を見上げた。……いや、違う。ただの錯覚だった。よく見れば彼は信じられないほど汗だくで、制服のシャツがすでに 透けている。
「先輩、めっちゃ汗かいてますよ……?」
「当然だろう!」倉斗は堂々と胸を張る。「夏は汗を流してこそ輝くんだ。ほら、見てくれ鈴ちゃん。この滴る汗を!」
「……いや、汗まみれの先輩見ても何の感想もないんですけど。」
「はははっ、遠慮するなよ!」
倉斗はキラキラした笑顔で前髪をかき上げた。見た目は完全に夏の青春ドラマの主人公。 だが——
「……っていうか、先輩、なんでそんなに汗かいてるんです?」
「ん? さっきまでマラソンしてたからな。」
「え、授業でもないのに……?」
「もちろん!」倉斗は誇らしげに笑う。「夏の暑さに耐えられる体を作るためには、まず炎天下で自分を鍛え上げることが重要なんだ!」
「いや、普通に倒れますよね?」
「倒れてこそ成長があるんだ!」
「ないですよ!?!?」
鈴の冷静なツッコミも届かず、倉斗は汗を拭いながら遠くを見つめる。
「……いや、それにしても、本当に最高だな……。この灼熱の太陽の下で、自分を追い込むことこそ、真の青春って感じがする!」
「うわぁ……」
鈴は心底引いた顔で、アイスを一口齧る。
「いや、普通に教室で涼んでる方が青春だと思うんですけど。」
「甘いな、後輩ちゃん!」
倉斗はグッと拳を握りしめた。
「青春は苦しみの先にあるんだ! つまり——」
「いや、いいです。聞かなくてもわかります。」
「えっ」
「先輩のことだから、『Let’s鞭打ち』とか言うんでしょう?」
「……さすが鈴ちゃん、俺のことがよくわかってるな。」
「わかりたくないんですよ!!!!」
鈴の絶叫が校庭に響き渡る中、倉斗は 爽やかすぎるドM笑顔 を浮かべるのだった。