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一ノ瀬ルナ
10
#日記
QuartoMew
1,527
62
フユめん
380
第6話 知らないはずの人
――朝。
蓮「…………Zz……」
教室は朝から騒がしかった。
生徒「昨日の宿題やった?」
生徒「やってねぇわ…やべぇ見せてくれ!頼む!」
生徒「お前またかよ!」
そんな声が飛び交う中――
ガラッ。
結翔「……」
生徒「おっ、結翔おはよ!」
結翔「おー。おはよ」
結翔は軽く手を上げながら、自分の席へ向かう。
だが――
結翔「…………?」
何かに気づいたように、教室を見回す。
結翔「……なんか静かじゃね?」
生徒「あ〜、まぁいつも騒がしいモブ谷くんはまだ来てないしな」
結翔「いや、そういうんじゃないんだよ……。」
結翔「アイツは?」
生徒「あ〜もしかして蓮のこと?」
結翔「お前、よく話してたじゃんか。朝っぱらから。」
結翔「騒がしい教室が静かだったらいつもと違うって思うだろ」
結翔「で、アイツまだ学校に来てないのか?」
生徒「俺、出席番号蓮と近いから下駄箱見れるんだけど靴あったからいるだろ……」
窓際を指差す。
生徒「寝てるぞ。そこで」
結翔「……は?」
結翔「そんなわけ――」
結翔が振り返る。
窓際の席。
机に突っ伏して眠っている蓮。
蓮「……Zz……」
結翔「…………。」
結翔「って、まじか……!」
結翔「本当にいたわ……」
結翔「寝てる時は存在感薄いんだな……こいつ。」
女生徒「なんか蓮くんが寝るなんて珍しいよねー」
女生徒「それな!今日、槍降ってきそー」
結翔「大げさだろ……!」
結翔は蓮を一度見る。
だが、何も聞かない。
――しばらくして。
先生「はーい、みんな席につけー。出席確認するぞー。」
生徒「はーい。」
先生「田中!」
生徒「はい!」
先生「佐藤!」
生徒「はーい!」
次々と名前が呼ばれていく。
そして――
先生「次。」
先生「神崎。」
「…………。」
先生「おーい?」
返事がない。
結翔「…………。」
結翔「……(いや、こいつまだ寝てんのかよ)」
結翔が蓮の肩を突く
結翔「おい、蓮。」
肩を揺らす。
蓮「…………。」
結翔「蓮起きろ。」
蓮「…………。」
結翔「………マジかコイツ」
先生「……おい。」
先生が蓮の机まで歩いてくる。
先生「神崎」
反応なし。
先生「…………。」
そして――
先生「いい加減に起きろ!!!!!!!!!!!」
教室中に響き渡る。
生徒「うわっ!?」
女生徒「びっくりした!!」
結翔「うおっ!?」
しかし――
蓮「…………。」
ピクリとも動かない。
先生「…………。」
結翔「…………。」
先生「……はぁ…もういい。」
先生は呆れながら教卓へ戻っていく。
結翔「……寝すぎだろ、こいつ。」
――昼休み。
蓮「…………あ。」
ゆっくりと顔を上げる。
蓮「……俺、寝てたんだ……。」
結翔「お前やっと起きたか。コノヤロー。」
蓮「……結翔くん。」
蓮「おはよう。」
結翔「って、もう昼な!?」
結翔「今はこんにちはだろ!」
蓮「でも、俺今目覚めたんだけど。」
結翔「いや、そういう問題じゃねぇだろ!」
蓮「俺からしたら、おはようなんだよね。」
結翔「屁理屈こねんな!」
蓮「屁理屈じゃないって」
結翔「…………。」
蓮「反抗してこないの?」
結翔「なんでもねぇ…」
蓮「ふーん。」
蓮は欠伸をする。
蓮「……腹減った。」
結翔「まぁお昼だしな」
蓮「力入んなーい」
結翔「飯俺も今からだから食べに行くぞ」
蓮「……一緒に?」
結翔「嫌なら置いてく」
蓮「…………。」
蓮「いや、行く。」
結翔「ん。」
結翔はそれ以上何も聞かなかった。
ただ、いつもより少しだけ歩く速度を落とした。
蓮は、それに気づいていた。
――放課後。
教室には、蓮一人。
夕暮れの光が机を赤く染めている。
蓮「…………。」
スマホを見る。
父親からの通知。
【追加情報を送る。】
添付された資料。
名前――
またあの女
蓮「…………。」
資料を読み進める。
異能力。
過去。
そして最後の一文。
【接触時、殺害の必要なし。】
蓮「…………は?」
もう一度読む。
【殺害の必要なし。】
蓮「は?」
蓮「普通殺すだろ……コイツからでか被害が無くても…こんなやつが居たら…処理するべきだろ…!!!」
拳を握る。
蓮「俺がこうなっちまった以上……俺は逃げたくねぇんだよ……」
蓮「……クソ親父のせいだ」
蓮「俺がこうなったのも。」
蓮「何も感じなくなったのも……。」
蓮「全部、アイツが…。」
スマホを睨みつける。
蓮「………」
蓮「俺に命令ばっかしてんじゃねぇよ……!」
――ガラッ。
蓮「…………!」
教室の扉が開く。
蓮「誰だ……?」
そこに立っていたのは――
彗音。
彗音「あ。」
蓮「………!?(気配…全く感じなかった…!やっぱコイツ普通じゃない…)」
彗音「また会えた」
蓮「………なんで学校に来てんだ」
彗音「ある人に言われたから。ここで待ち合わせだって」
蓮「は?待ち合わせ場所他にもっとあるはず…なんでここを選んだ?」
彗音「分からない」
彗音は首を傾げる。
彗音「ここが教室なのね」
蓮「…………。」
彗音「すごい緑の板に落書きできる」
蓮「……お前やっぱ変だよ。黒板も知らないなんて」
彗音「そう?」
蓮「お前の年齢なら義務教育も終えてるはずなんだけど…」
彗音「義務教育…貴方はコロシ屋なのに学校に通ってる」
蓮「……だったらなに?」
彗音「両方を背負ってやってるのね」
蓮「……喧嘩売ってんのか?」
彗音「売ってるつもりはないわ」
蓮「………信用出来ないんだけど。敵の癖に…攻撃してこないし」
彗音「本当の事。私に二言はない」
蓮「…………」
その時。
――パチン。
教室の電気が消える。
蓮「…………!」
夕暮れの光だけが、二人を照らす。
??「あれ〜?」
軽い声。
蓮「…………誰?」
彗音の後ろから、一人の青年が入ってくる。
青年「彗音ちゃん、お待たせ〜待ったー?」
彗音「ううん。おかしなコロシ屋さんとお話してた」
青年「そう。なら良かったわ」
青年は蓮を見る。
青年「へぇ。」
蓮「…………ッ」
青年「君が蓮クン?」
蓮「……なんで俺の名前知ってんだよ」
青年「知ってたらアカン?」
蓮「……気持ち悪い」
青年「ははっ。辛辣やなぁ〜」
青年は楽しそうに笑う。
青年「でも、ええなぁ。」
蓮「何が。」
青年「その顔。」
蓮「…………は?」
青年「お兄さんは好みやわ〜もっと見せてや」
蓮「…………近づくな」
青年はニヤッと笑う。
蓮「さっきから何喋ってる?好みとか知っちゃこっちゃない」
青年「そんな警戒せんくてもええのに、何もせんからさ」
蓮「話の辻褄が合わない奴と話したくない」
青年「お兄さん悲しいわ〜」
蓮「…………💢(一々、ムカつく…)」
青年「怒んなって、蓮クン。」
その呼び方に、蓮が反応する。
蓮「……は?」
青年「ん?」
蓮「なんでそんな呼び方なんだよ」
青年「なんとなくやけど」
青年「めっちゃ呼びやすいやん?」
蓮「意味わかんねぇ。」
青年「そう?」
青年は楽しそうに蓮を見る。
まるで――
蓮の反応そのものを楽しんでいる。
青年「なぁ、蓮クン。」
蓮「……何だよ。」
青年「彼女の事を今頑張って調べてるみたいやけど」
蓮「……彗音の事か」
青年「そうそう。」
青年「気になるやろ?」
蓮「…………。」
青年「彗音ちゃんが、なんで人を殺すのか。」
蓮「…………。」
青年「なんで自分の昔を覚えてへんのか。」
彗音「…………。」
彗音の表情が、ほんの少しだけ変わる。
蓮「…………お前」
青年「でもな。」
青年は笑う。
青年「忘れたんやなくて――」
青年「忘れさせられたんかもしれへんで?」
蓮「…………!」
彗音「…………。」
蓮「……どういう意味だよ。」
青年「さぁ?」
蓮「ふざけんな!」
青年「俺の勝手な想像や」
蓮「…………。」
青年「それに。」
青年は自分を指差す。
青年「俺のことも気になるやろ?」
蓮「……お前に関しては…弱点まで知っときたい💢」
青年「えーさすがに弱点までは教えへんよ〜?あと怒っとるし…お兄さんなんかしちゃった?まぁでも知りたい事はたくさんあるやろ」
青年「俺が誰なのか。」
青年「どこから来たのか。」
青年「なんで彗音ちゃんと一緒におるのか。」
蓮「…………。」
青年「知りたい?」
蓮「……知りてぇよ。」
青年「そっか。」
青年は嬉しそうに笑う。
青年「じゃあ、ヒント一個だけ。」
青年は蓮の目を見る。
青年「俺はな。」
青年「蓮クンが思ってるより――」
一拍。
青年「ずっと近くにおった人間や。」
蓮「…………は?」
青年「でも。」
青年「蓮クンは俺を知らん。」
蓮「…………。」
青年「変やろ?」
蓮「……お前が俺を知ってる事の方が変だろ」
青年「それでええねん。」
青年は笑う。
青年「分からん方がおもろいやろ?」
蓮「…………。」
青年は踵を返す。
蓮「待て。」
青年「ん?」
蓮「お前名前教えろ」
青年「…………。」
一瞬だけ、青年の笑顔が消える。
そして――
青年「…………七瀬碧斗」
青年「しっかり覚えてへんとめーよ?」
歩き出す。
蓮「…………七瀬、俺はお前とそこの女の真相を暴いてやる」
青年が足を止める。
そして振り返らずに――
青年「……威勢はええのに、言っとることがな」
青年「じゃそんな蓮クンにお兄さんから一個だけアドバイスや」
蓮「…………?」
青年「人間ってな。」
青年「失ったもんほど、忘れたふりして残っとるもんやで。」
蓮「…………。」
青年「ほな、またね」
蓮「…………。」
青年「……蓮」
――一瞬。
蓮「…………。」
青年「……んー。」
青年は笑う。
青年「やっぱ、蓮クンの方がええな。」
蓮「…………は?」
青年「いや呼び方が気に食わんって言うとったから変えようと思ったんやけど…やっぱ蓮クンがしっくりきたわ」
青年はそのまま歩いていく。
廊下の角を曲がる。
蓮「…………!」
追いかけようとする。
――だが。
誰もいない。
蓮「…………消えた?」
彗音「…………行っちゃったね」
彗音は、青年が消えた廊下を見つめている。
蓮「…………あいつ、何なんだよ」
彗音「さぁ。」
蓮「お前も知らねぇのかよ。」
彗音「( . .)“コクでもおかしい人」
少し間を置いて。
彗音「」
彗音「コロシ屋さん。」
蓮「……何?」
彗音「きっと、また会える」
蓮「…………。」
彗音は小さく笑う。
蓮「…………アイツも消えた…!クソ…!」
夕暮れの教室。
蓮の手元には、父親から送られた彗音の資料。
頭の中には、青年の言葉。
――忘れたふりして残っとる。
蓮「…………もう逃げたりなんかしない」
蓮「この気持ちが無くなるまでな…」
蓮はまだ知らない。
彗音の過去も。
あの青年の正体も。
そして――
自分自身が忘れているものの存在も。
コメント
1件
うわっ、第6話めっちゃ重かった…🥀 蓮の寝ぼけてる朝のギャップと、結翔くんのさりげない優しさ(歩く速度落とすとこ)にじんときた。でも放課後の彗音と七瀬碧斗の登場で空気が一変。七瀬の「忘れたふりして残っとる」って言葉、めっちゃ刺さる…。蓮が過去と向き合おうとしてるのが伝わってきて、続きが気になりすぎるよ。蓮の闇、ちゃんと描けてて好きです🌙