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こうもり@スランプ
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稀灯 夏成🩵🍸
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コメント
4件

元気そうには振る舞っていても、命の灯火が消えかけている、その繊細な描写が刺さるなぁ……泣いちゃうわグスッ(;д; )シクシク
もうツラいです、、、すごい引き込まれてしまって🥺
それからしばらくは、あの離れていた日々が嘘だったみたいに幸せしかなくて何度もいつでも好きな時に会いに行けることが嬉しかった。
どうしても会えないときにはビデオ通話をしたり写真を送り合う。付き合い始めのカップルみたいな日々の中、季節は春になっていた。
りょうちゃんが望むように仕事はちゃんとした、けど以前よりは落ち着いたペースで。
あの日、寒い長野から東京に帰った俺を若井が迎えに来てくれてその足で事務所に行って全部元貴は知った、と説明してくれた。
あの日、りょうちゃんが辞めたいと言ったのを肯定した人たち全員が病気のことを知っていたのかと思うと悔しいような、苦々しい気持ちになったけど知ってるなら話は早い。
「りょうちゃんが望むから仕事は辞めない。けどりょうちゃんに会いに行く時間はちゃんと確保するし、ずっと一緒にいて欲しいって言われたらその時はそうするつもりだから」
ピリピリする俺の肩に若井が手を置いて落ち着け、となだめる。
「みんな分かってるよ。りょうちゃんが望むとおりにする···それで元貴を騙すようなことまでしたんだから。皆、みんな···りょうちゃんの為にって思ってる」
ありがたい。
本当に。
けどなんでかな。
そうしてあげようという気持ちの側でりょうちゃんの灯火が消えかけているから、というのを感じて苦しくなってなんの返事も出来なかった。
「りょーうちゃーん、来たよ」
りょうちゃんが俺と別れた初夏からもうすぐ10ヶ月···もう何度も来すぎて顔パスの俺はドアを開ける。
今日は小さな訪問者がいて、まぁ今日だけじゃないんだけど、りょうちゃんが俺に目もくれず「いらっしゃーい」と返事した。
「折り紙のお花、上手だねぇ···これはなんだ?」
「それ、りょーちゃん先生の!ピアノだって!」
「りょーちゃん先生、おりがみとくいじゃないんだってー!」
「なるほど···」
子供たちが笑って、りょうちゃんも恥ずかしそうに笑って折り紙を続けていると看護師さんにそろそろ行こうねって言われて帰って行った。
「またねー!」
「明日もしようねー!」
ここに入院している子供たちはりょうちゃんのことをピアノの先生だと思ってるみたいでたまにこうして遊びに来たり、ピアノを見てもらってるようだった。
「りょうちゃん先生、ピアノは得意なのにねぇ」
「折り紙は元貴のほうが得意でしょ?」
「折り方なんて忘れちゃって···りょうちゃんのやつ味があるよ。これ貰って帰ろうっと」
ふにゃりと、少し斜めになった黄色のピアノを指で撫でた。
たぶん、指先に上手く力が入らないんだろう···元気そうに見えるけど長く話を続けていると苦しそうな時があったり、連絡さえ難しい時がある。
「先生はいいけどさ、あんまり子供たちといると···」
「子供たちが来てくれるとね、空気が明るくなって楽しいから···けど、無理そうな時は病院も配慮してくれててるよ···子供たちもね、ちゃんとわかってる。皆、色々な状況でここにいるから」
「···そう···けどほら、折り紙は休憩して。いい子だから」
ベッドをフラットにして寝かせてその伸びた髪を撫でる。
肩の辺りでちいさく三つ編み出来るくらい伸びてそのヘアゴムにリボンなんてついているから子供たちにされたのかな、なんて思って可愛いその光景に笑ってしまう。
「可愛いねぇ、本当に···」
少し疲れたのか、すぅすぅと穏やかな呼吸が優しく響いてそっと椅子を手繰り寄せ側に座る。
やっぱり、りょうちゃんの体力はかなり落ちている気がする。
ほっそりとした横顔が儚げで起こさないように、けどしっかりと手を繋いだ。
ふんわりと暖かな春の光が降り注ぐ静かな部屋で、その手を繋ぎ止めながらどうか誰もりょうちゃんを連れて行かないで、と願った。
例えばそれが神様だって、このひとだけは渡したくないと思った。