手がおでこに触れたあの瞬間。
自分のSub性が抑えられなくなった。
教室のドアに手をかけ、ふと今さっきのことが頭をよぎる。薬が効いたおかげでやっと歩けるまでになった。でもまだ、完全回復ではない。気配りはしていたと言うのに。あまりの展開に状況が掴めていなかった。
昔、本で見た記憶がある。
「入ってきていいぞ」
担任の教師の合図でドアを開け、教室に入っていく。入った瞬間、妙な黄色の歓声が聞こえたが聞こえなかったことにしよう。教卓の前に立ち、辺りを見渡す。何度も見たこの状況に。
🎈「神代類と申します。」
黒板に僕の名前が書き出される。見た感じ、校門であった彼はいない。少しほっとした。って、何探しているのだろうか。
「神代の席はぁ…そこな、」
後ろの席をさされ、そこに向かって歩き出す。人の視線がやけに痛く感じる。これから1年間はこのクラスなのか、少しだけ憂鬱になりながらも本で見た事を思い出す。
“運命的に相性が良いDomとSubは、体の一部に触れるだけで、相手のダイナミクスを知ることが出来る。”
馬鹿馬鹿しい。悩まされていたあの時はそう感じていたし、絶対にそんなことありえないと思っていた。誰かが作った夢のまた夢。でももし、あの感覚が本当だと言うのなら。彼のダイナミクスは…
「神代くんはどこから来たのぉ〜?」
「身長高すぎなぁい〜??」
女子から声をかけられ目を前へと向ける。あまりの光景に「え、」と思わず声が出てしまった。外を見ていた少しの時間で周りには輪ができている。それも僕を取り囲むようにして。
🎈「えっと……」
「おいおい、あまり転校生を困らせるんじゃないぞ〜。周りの男子が可哀想だろ〜。」
いや、全然フォローになってないけど、!?あまりの光景に唖然としてしまう。どうしよう、困ったな。流石にここまで周りに囲まれていると溜まったもんじゃない。この中にDomでもいたりしたら。気が気じゃなかった。どうにかして抜け出さなくては。
四方八方塞がりでキョロキョロしていると廊下を歩いてる彼と目があった。それも誤魔化せる範囲ではない。彼は目が合うなり、ニコッと笑ってこちらに近づいてきたのだった。まずい。
?「すみません、先生が呼んでましたよ。」
輪を切り裂くように声をかけられ動揺する。ここは…仕方ない
🎈「え、あっ、ありがとう、」
恐る恐る立ち上がり、クラスの人たちに一礼をして教室を後にした。
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