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【能力者名】半田緋色
【能力名】 パンダヒーロー
《タイプ:擬態型?》
【能力】 ???
【以下、細菌達の記録】
ションボリ…..といった風に米津高校
一年A組の生徒半田緋色は生徒指導室の
椅子に座っていた。
半田緋色のことは ロカ先生もよく知っていた。
おっとりとした 性格で皆から『パンダ』と言われ慕われていることも、 いつも目の下にクマがあることも 授業中ずっと眠っていることも、能力が 何もないところから金属バットを取り出す能力《パンダ•ヒーロー》であることも知っていた。
「先生…..どうしても心折らなきゃダメですか….ボク、トイレ掃除でも何でもします….。だから痛いのとか…..怖いのはやめてください。」
まるで注射を嫌がる子供のような顔で
パンダは言った。
パンダはロカ先生をひどくこわがっているように見えた。
ロカ先生は少し同情したがルールはルール、しっかりと守らなければ他の学生達に示しがつかなかった。
「残念だけど、そういうわけにはいかないわ。」
楽に心を折る方法はないけれどこの注射待ちのようなストレスフルな時間から 早くこの子を解放してあげようとロカ先生はパンダの肩に 触れた。
「……ッ《パンダヒーロー》。」
怯えるパンダが能力を発動しようとしたが遅かった。
ロカ先生は既にパンダの肩に触れていた。
「《エンプレス•ディスコ》。」
ロカが呟くとバリィィンとパンダの中で何かが割れる音がした。
パンダはしくしく泣いていた。
(おかしい……能力を壊した手応えがない。)
ロカ先生は能力を破壊できたかどうかを
直感的に判断することができた。
ロカ先生は確かにパンダの心をへし折った。
しかし能力を壊した手応えがまるで無かったのだ。
(半田君は無能力者だったのかしら?
じゃあバットを取り出す能力は一体….?)
すると突然、ロカ先生の背後から金属バットが現れロカを襲った。
ロカ先生は風の音からその奇襲を察知し、最小限の動きでひらりと躱してみせた。
ロカは冷静に金属バットを観察した。
金属バットは少女のような声で 喋りだした。
「ねぇぇ….ねぇねぇねぇねぇねぇ!!!!!誰の
許しを得てあたしのパンダに触ってるわけぇ!!? パンダはあたしのなの!!!!!あたしだけのものなの!!!!!!そのでかい乳であたしのパンダを誘惑するつもりなのかしら穢らわしい…..!!汚い手で パンダに触らないでよ!!!!!!!!!!! 殺す………殺す殺す殺す殺す!!!!!あんたは私が悪夢を見せて発狂させながら殺す!!!!!!!!!!!!!」
そう言って金属バットはヒステリックな悲鳴をあげながらものすごい勢いでロカ先生に襲いかかった。
ロカ先生は持ち前の動体視力、反射神経および経験則で金属バットの攻撃を全て躱した。
決してバットに触れたりはしなかった。
(このバット…….触れたらまずい。
これは……能力じゃない別の何か…..!?)
その時だった。
「….悪夢ちゃん、もう大丈夫だよ。戻っておいで。」
パンダがそう言うと金属バットはパンダの
手元に戻っていった。
「離しなさいパンダ。……離せぇ!!!!!!
あたしはまだあの女を殺してない!!!!!!!
離さないとまた悪夢をみせるわよ!!!!!!」
そう言って金属バットはパンダに捕まれながらパンダの顔をボコボコにし始めた。
「痛いよ悪夢ちゃん痛い…..あっ、きもちいい痛い…..とにかく暴力はダメだよ…..。
一旦落ち着いて…….。」
「うるさいうるさいうるさーーい!!!!!
パンダに触れていいのは私だけなの!!!!!
私以外の女がパンダに触れていい理由なんて
この世界に一つもないの!!!!!はーーーなーーーせーーー!!!!!」
じたばたと暴れまわる金属バットをパンダは 優しく撫でた。
「ひゃうっ!!!?」
と金属バットは少女のような声で喘いだ。
「よーしよーし、大丈夫だよー。ボクはずーっと悪夢ちゃんだけのものだよー。どこにも行ったりしないよー。」
そうやってパンダは金属バットを優しく
撫で続けた。
「は!!!?ちょっと……!!?..どこ触ってるのよ…こんなッ…くっ….人前でッ…… ばかぁ……。」
金属バットがじっとりと濡れだし艶やかな 声をあげ始めた。
(…..何を見せられてるのかしら?)
とロカ先生は困惑した。
「今日は心がぽっきり折れてすっごく辛いんだー。悪夢ちゃん、また夢の中で慰めてくれないかな?」
金属バットを愛おしそうに撫でながらパンダは言った。
「あっあっあんっあっあっ、….あぁッ!!!!!….
ふぅ……..。……仕方ないわね…….。……あんたの顔、覚えたからね女教師!!!私のパンダに手を出したら次こそギッタンギッタンのボッコボッコにしてやるんだから!!!!!覚えてなさいよー!!!!!」
つやっつやになった金属バットは
今日日聞かなくなった捨て台詞を吐きながら
どこかへと消えていった。
「……ねえ、半田くん?あなたの金属バットっていったい何なの?」
努めて冷静に、ロカ先生はパンダに尋ねた。
「?悪夢ちゃんは悪夢ちゃんですよ?」
質問の意味が良く分からないといった風に
首をかしげて パンダはそう言ってのっそりと立ち上がり 背中をまるめながら帰っていった。
「…….何というか、世界って広いのね …..。」
ロカ先生は冷静になるために水筒に入った
紅茶を飲んだ。