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男夢小説3作目です。よろしくお願いします。
パソコン室前の廊下。誰が言い出したでもなく、雉野は正座させられていた。
ジャージの膝が床に触れ、真っ赤なクロックスがそろえられている。
本人はケロッとしていたが、子供たちは真剣そのものだった。
「まず…オレらの名前覚えません?」
トントンが前に出る。腕を組み、眼鏡を光らせながら。
「俺は桃瀬豚平。トントンって呼んでください」
「とんとん」
柊は素直にうなずいた。
「オレはゾムや。鳥井希」
ゾムも一歩前に出る。
「ぞむ」
「俺は鬱島大。うつせんせいって呼ばれるけど、うつでええよ」
「うつ……ん〜OK、なんとかかんとか覚えてみるわ」
「おっ」
トントンが少しだけ安堵の表情を浮かべ──
「──あ、でっかい蛾!」
「脱線すなぁッ!!」
ツッコミが三連発で飛んだ。
「いや違うねんて!あんなとこにでっかい蛾止まってんの気になるやろ!?」
「この人アカンわ……会話中の集中力が3秒も保たん……」
うつが崩れ落ちる。
「よし。次は“落ち着き”についてやな」
トントンが再び主導権を握る。
「はーい!」
雉野は笑顔で手を挙げる。
「まず、急に走らない。校舎を跳ね回らない。部屋を蹴って開けない」
「了解了解!次!」
「いやいやいや。次ってなんや。今の三つ覚えた?」
「えーっと……走るな?跳ぶな?壊すな?」
「言い方が乱暴なんよ……」
ゾムが呆れ気味に言い、うつはもうパソコン室の壁に寄りかかって座り込んでいた。
「よしじゃあ俺のターンな!おまえらはパソコン使えるんか?」
「いや鍵かかってるって言ったやん!!」
「俺鍵開けられるからさ!」
「あんさん!壊すつもりやろ!!!」
「ええ…開かんならしゃーないな!」
そう言いながら、雉野柊はパソコン室の扉に正面から向き直る。
「…よーし、お兄さんやったるで〜」
ドスン!と足を踏み鳴らし、やる気十分。嫌な予感がひしひしとする。
「ちょちょちょちょい待ったあぁあ!!」
トントンが慌ててその腕を掴む。
「いーや!!この一蹴りでいけるんや!!オレを止めるなとんとーん!!」
「キジさん!あの!探索したら鍵落ちとったりするから!!落ち着けってば!」
雉野はぴた、と動きを止めた。
そしてトントンを振り向く。
「……えホンマに? じゃーここにおったら損やんけ!はよ言うてなも〜」
にかっと笑って背中をバンバン叩く柊。
「僕が悪いんかこれ…」
トントンが天を仰いだ。
「トン氏、お前は悪ないよ……」
うつがそっと肩を叩いて慰める。
「悪いのはキジやわ」
ゾムが断言した。
「俺ら、正味猿山よりこいつに消耗させられてんねん」
「ほんまそれな……」
トントン、心の底から同意。
柊はというと、勝手にスキップしながら廊下の先へ歩き出していた。
「よ〜し!鍵探しっつったらまずは職員室やな〜!次点で保健室やろな〜!」
「おいおいおい!待てってキジ!!!」
「クソッ追いつけへん!!走るなぁああ!!!」
「俺らずっとこの人の背中見てるだけやん!!」
パソコン室の光から飛び去るオオミズアオが、彼らの疲労を物語っていた。