テラーノベル
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僕がスタジオに戻ってから暫くして若井は帰って来た。元貴に遅いよって叱られてもいつもの元気はなくて、僕もいつもの感じでは居られなくて曲を演奏することにだけ集中して仕事は進んでいった。
「なんか2人ともテンション低すぎない?大丈夫?」
元貴が僕たちを見てそう言った。なんで若井がそんなに辛そうにしているのか僕には分からなくて、けど僕のせいなんだろうなっていうのは感じていた。
「大丈夫だから。今日しっかり休んで明日も頑張るから」
若井はそう返事をしてギターを手際よく片付けて足早に帰っていった。
それを僕も小さくため息をついてキーボードを片付けていると元貴が寄ってきて僕に声をかけた。
「涼ちゃんは大丈夫?ちょっといい?」
「うん?」
「もうスタッフさんもいないからさ、ちょっと話そうよ」
片付け終わるのを待って元貴はここに座りなよ、と椅子を用意してくれた。
「ありがと、話ってなに?」
「若井のこと。休憩から帰ってきて明らかに元気なかったでしょ、涼ちゃんなにかやらかした?」
笑いながらそう聞かれる。
「なんで僕がやらかしてる前提なの···けどまぁ、僕のせいなの、かな?」
「だいたい、なにかいきなり切り込むのは涼ちゃんって決まってるし、ってやっぱり心当たりあるの?」
「そんなつもりは···うーん、休憩中にね、その···若井がいつもみたいに甘えてくっついてくるから、そういうのは好きな人にだけしなよって言ったんだよね···」
さすがにキスしたことは黙っておいた。けどこの説明でだいたい伝わるだろう、と元貴をチラッと見るとめちゃくちゃ驚いた顔をしている。え、僕ってなんかやっぱりいけないこと言ったんだろうか。
「それ、若井に言ったんだよね?」
「う、うん」
「はぁぁ···そんなこと言われたら俺でも傷つくけど。涼ちゃんひどすぎ」
元貴は頭を抱えておっきなため息を聞こえるようにもう一度吐き出した。
「なんで?だってそういうのって好きな人にするのが普通でしょ、なんで僕なんかに···」
「わかってるじゃん。なのになんで若井にそれ言っちゃうかなー」
「ごめん、元貴が言ってる意味が僕わからないんだけど、ちゃんと説明してくれない?」
話しが噛み合わなくて少しムッとした僕に元貴がその10倍くらいの怒りを込めた目で僕を睨んだ。
「だからっ、好きな人に『そういうのは好きな人にだけしなよ』って言われたら傷つくでしょ!好きなことが伝わってないんだなとか、その人は自分のことを好きじゃないんだなとか!若井は涼ちゃんの事好きなのにそんなの言われたらなんだよってなるでしょ!」
はぁぁっ、と元貴はもう一度ため息をついて、意味わかる?と俺を見た。
「けど、若井は元貴が好きなのに?」
そう言った僕は本日もう何度目になるのかわからないくらいのおっきなため息を元貴から聞くことになった。
コメント
5件

呆れモードの大森さんたまらん
♥️くん、ここでも良い仕事を🤭♥️💛💙