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(どっちが本当のリュリュなんだろう?)
見惚れていたのは一瞬で、佳蓮は猜疑心からじっと目を凝らす。一方リュリュは、佳蓮の強い視線を受けても目を逸らさない。
見つめ合った二人はしばらく沈黙が続いたが、夜風が吹いたのを機に、リュリュはふっと肩の力を抜いて笑みをこぼした。
「急所蹴り……未来の皇后さまの行動としては、はしたのうございます」
「っ……!」
(嘘っ……ど、どうしよう?!見られてた!?)
予想だにしなかったリュリュの発言に、佳蓮は恥ずかしさで顔が赤くなる。
そんな佳蓮にリュリュは「ですが」と付け加えて、表情を厳しいものに変えた。
「わたくし個人の意見を申し上げますと、まだまだ生温うございます」
「……そう……かな?やりすぎだと思った……けど……?」
ごにょごにょと言葉尻を濁しながら答えた佳蓮は、ちょっとだけ笑っていた。
リュリュが自分の気持ちに共感してくれて嬉しかったのだ。リュリュもつられるように笑う。
「いいえ。それとあの後、ヴァーリは自身の子種の事を心配されておりましたが……まぁ、あんなゴミカスのような|輩《やから》の遺伝子など残す必要はありません。ま、そのような行為に辿り着けるかどうかも怪しいものですが」
リュリュが紡ぐ辛辣な言葉に、佳蓮は全て共感した。
「うん。私もそう思うよ、リュリュさん」
二人の間に言葉にできない連帯感が生まれ、佳蓮はくすりと笑う。この世界に来てから、一番自然な笑みだった。
でも次の言葉には、共感することはできなかった。
「さて、ここは寒いです。そろそろ戻りましょうカレン様。それに、初めての夜会でお疲れでしょう。お湯の用意も整っておりますし、お部屋も暖かくしております」
「嫌、そこに行きたくない」
それはそれ、これはこれといった感じで、佳蓮はぷいっと顔を横に向けた。
「いけません。帰りましょう。カレン様」
ため息混じりにそんなことを言うリュリュの態度に、佳蓮はカッとなる。
「帰るって言わないでっ。私が帰るところはあんな離宮じゃないっ」
肩にかけられていたストールをつかんで地面に投げ捨てて、佳蓮は立ち上がろうとした。でも、素早い動きで、リュリュに腕を掴まれ抱き込まれてしまった。
もがく佳蓮を抱き込んだまま、リュリュはこんな言葉を囁いた。
「それでも帰るのです……|今《・》|は《・》」
「……今は?」
オウム返しに問うた佳蓮の言葉に、リュリュは力強くうなずいた。
それから地面に投げ捨てられたストールを拾ったリュリュは、汚れを払い落としてから、もう一度佳蓮の肩に掛けた。
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#ゾンビ
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