tn「6時に起きて、朝食。8 時から当番は軍兵のほうに行って、挨拶と点検。その他は訓練なり任務なりやってもらう。で、12時昼食。14時からまた各自訓練とか任務とかやな。で、18時夕食。19時風呂。終わってからは特段の事情がない限り館内で過ごすように。そして23時就寝。週一で射撃とか全員での訓練があるから」
トントンさんがそう話せば、俺はあくびをして口を開く。
ゾムさんと俺が幹部になってから3日ってところか。今日は改めて1日のスケジュールを説明してもらっている。
shp「……いきなり幹部でいいんですか。任務…とか心配かなー…って」
tn「グルさんの勘は結構当たるんやで」
shp「………」
ばぁん、と勢いよくドアが開く。
金髪……コネシマさんか…たぶん。
コネシマさんは息を切らしながら俺らにこう言った。
kn「今すぐ…会議室…やって……」
tn「そんな緊急なんや?」
kn「そうでもない…」
全員が集まり、最後にグルッペンが入る。
gr「今日集まってもらったのは、彼のことについてだ」
と、グルッペンがむけた視線の先にはーー俺。
shp「…えっ?」
gr「名前」
shp「いや………でも」
gr「大事なのは素質だと私は考えている」
== ut ==
素質。今まで飽きるほど聞いてきたが、俺にはなんなのかよくわからない。
shp「…じゃ、話しますね」
冷淡だけれど、どこか震えているような。そんな声で、空気が静まり返った。
グルッペンは、ショッピの目一点を見つめる。
shp「……ショッピです。名前は」
gr「あぁ………なるほど」
それで?と言わんばかりの目に、一度深呼吸をする。
そして、下を向いて口を開いた。
・・・
本当に、この世界が嫌いだった。
どうやら、うちの国で能力者が生まれると生活が豪華になるらしい。っていうのは、「保護」という意味で。
「ねえ、能力者が生まれたらしいわよ」
「えっ!ほんとう?この国も恵まれたわねぇ〜」
俺は普通の家に生まれた。
生まれたての頃は、奇跡だとかチヤホヤされたらしい。
俺は普通の家に生まれたはずだった。普通の暮らしで幸せになりたかった。
でも、どうやらそういうわけでもなく、生まれてすぐに王家の城に入れられた。
良質で高価な服、3食並べられる豪華な食べ物、無駄に広い部屋に無駄に大きなベッド。
そんな毎日に、両親は幸せそうだった。
俺も笑って言う通りにしていれば、お母さんとお父さんが褒めてくれるから、それで良かった。
5歳。勉強というものが始まった。残念ながら、俺にはすぐに覚えられるような脳も集中力もなかった。両親も裕福になってしまったせいか謎のプライドが芽生え、俺を一流で、優秀な人間にしようと、少し厳しかった。
「なんであんなのもできないのかしら…」
俺に隠れてお父さんに愚痴をこぼす母親と、母親の圧に潰されて流されることしかできなくなった父親。俺は本当に両親が嫌いだった。
「ほら、次はお稽古でしょ?」
お稽古。毎日木刀や弓矢を持たされる。だったら学校に行かせろよと思うし、正直死ぬほどつまらない。戦闘のセンスはあったらしいから、幸運なことにとても褒められた。
そして、初めて自分は嫌われているのだとわかった。
親は頑なに俺を城から出さない。それは自分たちの評価を守るため。
たまに外に出れば、たくさんの大人たちに話しかけられる。
『君の能力すごいね』『君のおかげで元気をもらっているよ』『うちの国の宝だよ』
気色悪い柔らかな声。俺はわかっていた。
「あの子あんまり……あぁショッピくん…ううん。なんでもないよ。今日も頑張ってね〜」
みんな嘘。陰口が、嫌でも耳に入ってくる。
12歳。市民たちが俺を罵る。
『市民の金で贅沢しやがって』『誰もお前を必要としていない』『使えない能力だな』『死ね』
母が部屋に入ってきたかと思えば、花瓶に黄色のカーネーションを挿す。
「姿勢が悪い」「これしか食べられないの?」「字が汚いわ…」「もうちょっとコミニュケーションをとったら?」「あまり外で人と関わらないでちょうだい」「ほんっと何もできない…」「使えない能力」
16歳。ある日、部屋がノックされた。
返事をして立ち上がる。部屋に人が入ってくる。
知らない人。市民だろう。
まさか、そう思った時には、地面に倒れていた。
これくらいなら、避けれたはずなのに。避けようとも思わなかった。
「ーーーッあ、?」
クスクスと笑う声。
痛い。
意識が遠くなる。目の前で、血のついたナイフが落ちた。
目の前に、男がしゃがみ込む。
「お前が生きてる価値なんてねぇから」
何の感情も湧かなかった。
「ほら、バレる前にさっさと行くぞ」「バレるってなんだよ…w」「早く報酬もらいにいこーぜ〜w」
あぁ、このまま死ねるのか。
少し、安心している自分がいた。
コメント
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温泉で母と間違って知らん人に声をかけた時は恥ずかしかったです