中部地方での戦闘は激化の一途をたどっていた。幕府軍の猛攻を受け、雅也たちの勢力は一時的に撤退を余儀なくされる。そして、その戦場の中、仲間であり友であった橘真治が命を賭ける決断を下す。
「このままじゃ、全滅するで。」
加藤清政が焦りを隠せない声で言う。天雷剣を握る手が震えていた。
橘真治が銃をカチャリと調整しながら不敵に笑う。
「そやな、確かに状況は最悪や。でも、どんな悪い手札でも勝つ方法はある。」
雅也が鋭い目で橘を見る。
「橘、お前、何を考えとるんや?」
橘は肩をすくめた。
「俺が囮になる。それで嶋崎の注意を引きつけてる間に、みんなは敵本陣を叩け。」
「ふざけんな!」加藤が激昂し、橘の胸ぐらを掴んだ。
「お前一人であの双蛇嶋崎を相手にするなんて無謀や!死ぬ気か!」
橘は加藤の手を振りほどき、静かに言った。
「俺の銃の腕は伊達じゃない。嶋崎を足止めするくらいのこと、やれるさ。」
雅也は拳を握りしめながら言葉を飲み込む。橘の決意が揺るぎないことを知っていたからだ。
夜明けとともに、橘は一人で嶋崎の部隊に向かっていった。
「おーい、幕府のボンクラども!俺を捕まえられるもんなら捕まえてみろ!」
嶋崎はその挑発に乗り、部隊を橘の方へ向けた。
「面白い。貴様一人で私を止めるつもりか?」
橘は笑いながら銃を撃ち込む。命中する弾丸に嶋崎の部下たちが次々と倒れる。だが、嶋崎は異能「分身」を使い、次々と橘を追い詰めていく。
「くそっ、厄介な異能やな…でもまだいける!」
橘は最後の弾丸を嶋崎の本体に放った。だが、彼の視界がぼやける中、自分の胸に突き刺さった刃を見た。
橘の最期の通信が雅也たちの元に届く。
「雅也、加藤、聞こえるか?」
雅也が血相を変えて通信機を握り締める。
「橘!?おい、どこにおるんや!戻ってこい!」
橘は弱々しい声で笑った。
「戻れるわけないやろ…俺は…もう終わりや。でも、敵の本隊はそっちから離れた…頼んだで…」
加藤が泣き叫ぶ。
「橘!てめぇ、ふざけんなよ!お前、死ぬなよ!」
「…加藤、雅也、俺のことは忘れてええ。でも…この戦いだけは、勝ってくれ…」
通信が途絶え、橘の命は尽きた。
橘の囮作戦は成功し、雅也たちは敵本陣を叩くことに成功する。しかし、その勝利の代償はあまりにも大きかった。
雅也は橘が倒れた戦場に足を運び、その銃を拾い上げた。
「橘…お前の想いは無駄にはせん。絶対にな。」
加藤は泣きながら天雷剣を握りしめ、静かに誓った。
「橘の分まで、俺たちがこの戦いを終わらせる。」
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