「飛雲商会の次男に相応しい行動をしなさい。」
そう言われて育てられてきた。
その為、いろんな商談も任されてきたし、古華派の義侠心を重んじ、養ってきた。
その度に、重圧で潰されそうになった。
行秋「おや、重雲じゃないか」
そう考えていると、古き良き友人に出会った。
重雲「行秋…また逃げ出してきたんだろう?家の者はいいのか?」
重雲には僕が逃げ出してきたことはすっかりばれていたようで、もう開き直ってサボることを決めた。
行秋「本当はダメだけどね。別にいいだろう?今日は万文集社の新刊入荷日なんだ」
特に大事な予定が入っているわけでもない。こっそり煎餅を盗んで逃げてきたことは怒られるだろうが、新刊を逃すわけには行かない。(別に次の日もいつだって売ってはいるが。)
重雲「相変わらずだな…。」
重雲「そういえばもうお昼は食べたか?」
行秋「いや、まだ食べてないよ」
今は正午の少し前、と言ったところだろうか。意識をすると腹が減ってくる。
重雲「なら後で一緒に万民堂に行かないか?」
重雲「アイスが切れてしまいそうだし…それに、最近香菱が新メニューを考えたといっていたんだ。」
重雲は目をキラキラとさせているが、本当に食べれるか少し疑う必要がある。
それでも腹が減ってきたのは事実。
万文集社の後、僕たちは万民堂へ向かった
香菱「あ!重雲に行秋!」
香菱「もしかして新メニューを食べに来てくれたの!?」
危険度8。逃げた方がいいだろうか…。
ただ、この純粋無垢な輝く友人の目を見て逃げ出すなんていかがなものか。
行秋「ああ、それと同時に重雲がアイスが切れてきたらしい。」
香菱「わかった!作ってくるからちょっと待ってて!」
そう言うと香菱は小走りで台所に向かう。
そして足元にグゥオパーがいることに気づく。
行秋「珍しいね。どうしたんだいグゥオパー?」
重雲も、よく見るはずなのに物珍しい目で見るようにグゥオパーを見つめる。
ただし、グゥオパーは僕を見つけるだけで何か動くわけでもない。
何か興味を引くものを持ってきただろうか
行秋「…!」
行秋「もしかしてこれかい?」
僕はグゥオパーに、盗んで取った煎餅を見せる。
食べたいのかと思って差し出せば、それは呆気なく返された。
重雲「盗まないで戻してこいっていってるんじゃないか?」
重雲が冷やかすように横やりを投げる。
そしてグゥオパーはそうだと言わんばかりに短い手を組んで僕を見上げた。
行秋「分かったって…」
そう待っている内に香菱が顔を出す
香菱「はい、まずアイス。」
香菱「そしてこれが…特製水晶蝦!」
行秋「待って香菱!」
これはまずい。
香菱「どうしたの?」
行秋「この料理には人参が!」
重雲「行秋…それはただの好き嫌いだろう?」
水晶蝦には基本、人参が入っている。
食べれたものじゃない。
そう感じていると香菱は少しあきれたように笑って言った。
香菱「そう言うと思って…」
もうひとつ違う見た目の皿が出される。
香菱「こっちは取っておいたから、ほら、食べてみて!」
香菱のことだ。何かしら変なものをいれていてもおかしくない。
ただし、香菱が料理を不味くすることは決してない。僕は覚悟を決めて一口食べた。
行秋「おいしい…」
そう呟くと香菱は安心した顔で話した。
香菱「江湖百味って言って少し形を変えてみたんだ。」
香菱「この形なら抜かれていても分からないでしょ? 」
香菱「美味しいものは、みんなで食べた方が絶対美味しいんだから!」
僕たちの将来はきっと交わることはないだろう。
いずれ、離れていってしまうかもしれない
だからこそ、今の内に仲間に迷惑をかけて、わがままに生きてしまおう。
そう思うのは、僕だけだろうか。
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