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僕は今、羽田発・新千歳行きの飛行機の中にいる。夏の観光客でごった返す機内は、冷房が効いているとはいえ、人々の熱気で蒸していた。
僕と白石さんは、エコノミークラスの狭い座席に肩を寄せ合うように座っている。これから向かうのは、白石家の本拠地だ。
だが、今の僕にとって、ラスボスが待ち構える実家よりも恐ろしい脅威が、隣に迫っていた。
「……んー、ちょっと冷房強いですね。ブランケット貰おうかな~」
白石さんが小さく伸びをした。今日の彼女の服装は、涼しげなノースリーブのワンピースだ。彼女が腕を上げるたび、滑らかな二の腕のラインが露わになり、脇のあたりが僅かに開く。
(……っ、見ちゃダメだ。見るな!)
視界の端に映る、無防備な腋窩のくぼみが艶めかしい。彼女が動くたび、普段は決して晒されないその聖域が、布の隙間からチラチラと僕を誘惑していた。
「あ、陽一さん。さっき担当さんから原稿の修正依頼が来てて……」
彼女がiPadを見せようと、僕の方へぐっと身を乗り出す。その瞬間、剥き出しの彼女の二の腕が、僕の右腕にピタリと吸い付いた。
(……っ、あつい……)
冷房の効いた機内とは思えないほど、彼女の肌は熱を帯びていた。
汗ばんでいるのか、しっとりと吸い付くような生々しい質感。服一枚という障壁すら存在しない、ダイレクトな接触だ。彼女の腕が動くたび、滑らかな肌が僕の上腕に押し付けられる。
「ここのコマの、受け(陽一さん)の表情なんですけど……」
彼女がさらに画面を覗き込もうと、トレイテーブルに身を預けた、その時だ。機内の無機質なグレーのトレイテーブル。本来は機内食が並ぶはずのその硬いプラスチックの上に、彼女の柔らかな重みが「とん」と乗った。
硬い縁に押し上げられ、たわんだ襟ぐりの奥から、こぼれんばかりの膨らみがその存在を強く主張し始める。
(……っ、これは、なんだ!? 何のバグだ!?)
それはまるで、「皿」に載せられて、「さあ、召し上がれ♡」とでも言わんばかりに差し出された、あまりに毒が強く、あまりに甘美なメインディッシュのようだった。
夏の強い陽射しすら届かない、深く柔らかな谷間の陰影。テーブルの無機質な「硬」と、白すぎる肌がもつ圧倒的な「軟」。
プラスチックの縁に押し付けられた肉感が、彼女が動くたびに弾力を伴い形を変える。胸元から覗くブラジャーのレースの白。それは、僕の視神経を焼き尽くすのに十分だった。
「……ん? 陽一さん? 顔、赤いですけど、大丈夫ですか?熱中症ですか?」
「……い、いや。……北海道(ラスボス)を前にして、システムが、一時的にオーバーヒートしただけだ……」
僕は視線を天井の荷物入れに固定し、必死に平静を装った。だが、隣から伝わる体温と彼女の甘い香り、そして脳裏に焼き付いた「トレイに乗った果実」の強烈な残像は、そう簡単に消えてはくれない。
(……地獄だ。逃げ場のない上空一万メートルで、こんな視覚的ハラスメント(ご褒美)を受け続けるなんて……)
新千歳空港まで、あと90分。僕の精神は、夏の薄着とテーブルが生み出す「視覚的オーバーフロー」によって、完全に熱暴走を起こしていた。