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ライブに行った翌日。私の心の中は、整理のつかない感情でごちゃごちゃになっていた。
PCのモニターに映る複雑なガントチャートを見つめながら、ふとした瞬間に光のあの「カブトムシ」のネタを思い出して、マスクの下で口角が緩んでしまう。
「桜川さん? 今、笑ってました?」
隣の席の後輩、美咲が、不思議そうにこちらを覗き込んでいる。
「えっ……。いや、別に。この進捗、面白いなと思って」
「進捗が面白い……? さすが桜川さん、ストイックすぎて怖いです。仕事が恋人って本当なんですね」
美咲が呆れたように笑う。
完璧な上司。隙のない女。
その仮面を被り直そうとするけれど、一度緩んだメッキは、どうしたって元通りにはならない。
昨夜、光からもらったあの安いたこ焼きのレシートが、バッグの底で「お前の正体はこれだぞ」と囁いている気がした。