1ヶ月を過ぎた頃、仕事から帰宅したら阿部ちゃんがいなかった。
今日はとっくに仕事が終わって帰っているはずなのに。
スマホを開くと、メッセージが来ていた。
『ごめんね』
電話は出ない。メッセージも既読がつかない。
俺は部屋をひっくり返す勢いで探し回り、もちろんいないので次は片っ端からメンバーに電話をかけた。
最初に繋がったのは、海の向こうにいる康二だった。
🧡「どしたん?」
🖤「わからない、どうして?なんで?」
🧡「めめ落ち着き、俺身動きとれんからしょっぴーに行ってもらうわ」
30分くらいして、しょっぴーが家に来た。
💙「うわ、泥棒でも入ったのかよ」
🖤「違うけど、阿部ちゃんがいなくなっちゃって、ごめんねって」
💙「わからんから落ち着け」
🖤「落ち着けないよ!だって今朝まで一緒にいたのに急に……」
💙「バカ、そんなの阿部ちゃんだって同じだろ」
しょっぴーの言葉に、ぐちゃぐちゃになっていた思考が少しずつ解ける。
💙「阿部ちゃんもずっと一緒にいて、いきなりお前の世界から自分だけ締め出されたんだぞ。同じだ」
🖤「それは…そうだけど、でも」
しょっぴーはソファにどかっと座った。
💙「お前、この1ヶ月でなんか思い出したことあんの?」
🖤「何もない……」
💙「それだよ。お前は阿部ちゃんが好きで一緒にいるんじゃなくて、阿部ちゃんを好きだった自分として生きようとしてるだけでしかない。思い出せないんだし仕方ないけど、仕方ないからこそ割り切れない事だってあるだろ」
ぐうの音も出ない正論をぶつけられた。
🖤「でも、思い出せないんだから作り直すしかないし」
💙「お前はそれに乗っかってればいいけど阿部ちゃんにとってどれだけ負担かって話だよ、自分のこと知らない奴にあなたは彼氏でしたよって教えて恋人として過ごすって相当ストレスだろ」
🖤「ストレス……」
しょっぴーはそこまで言うとため息をついた。
💙「…ごめん、言い過ぎた。気づけなかった俺らも悪いし」
で、心当たりないの?と聞かれ、『心当たりなんて…』と言いかけた時、急に脳裏に砂浜がよぎると同時に頭痛が襲ってきた。
💙「めめ!おい大丈夫か? 」
座り込んだ俺に慌てて近寄るしょっぴーの声も遠い。
頭が割れそうに痛い、でもなぜかさっき見た場所に行かないといけない気がする。
🖤「行かなきゃ」
💙「え?」
身体を奮い立たせ、家を飛び出す。
しょっぴーが慌てて追いかけてきたけど、サンダルだからすぐに見えなくなった。
コメント
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サンダルだから、で笑っちゃった。真剣なシーンなのに笑