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レイミが驚愕するのも無理はない。ボロボロで傷みも激しいがそれでも本に記されている文字は、紛れもなく日本語だったのだ。

「言語については置いておきます。私にとって重要なのは中身なのですから。読めますか?」

シャーリィは妹の驚きと見知らぬ言語に疑問を抱くが、それよりも内容が気になっておりそれを尋ねる。

「えっ、ええ。文字が薄れていたり破れている部分もありますが、読むことは可能です」

「レイミさえ良ければ中身の解読をお願いしたいと思います。もちろん、体調が万全になってからですよ?」

「分かりました、お任せください」

最初こそ驚愕したものの、考えてみれば自分やライデン会長以外にも転生者が居てもおかしくはないため、落ち着きを取り戻すレイミ。

彼女としても中身が気になるのだ。

「では、その本はレイミに任せます。今日はゆっくり休んでくださいね」

ゆっくりと椅子から立ち上がるシャーリィ。

「もう行かれるのですか……?」

どこか寂しげに尋ねるレイミ。それを聞いた瞬間シャーリィは素早く腰を下ろした。

「いけませんね、レイミに寂しい思いをさせるところでした。今日はずっと傍に居てあげます」

「それはそれで恥ずかしいですね」

レイミも照れながらも嬉しそうな笑みを浮かべる。姉妹の一日は穏やかに過ぎていった。

翌日、正午。アークロイヤル号はその後問題に巻き込まれることもなく無事に帝都ロザリアスへと到着した。

ロザリアスにある広大な港には大小様々な船が停泊しており、その繁栄ぶりを示していた。

「流石に帝都となればシェルドハーフェンより広いですね」

甲板から帝都港を眺めながらシャーリィは感想を漏らす。

「そりぁねぇ、帝都は帝国一の港町でもあるんだ。シェルドハーフェンと比べたら大きいのも当たり前さ」

エレノアがそれに応える。

「迷子にならねぇように気を付けねぇとな。エレノア、場所は分かってるのか?」

ベルモンドが湾内を見渡しながら尋ねる。

「ああ、進路はこのまま。『ライデン社』が管理してる桟橋に着けるよ!周囲に気を付けな!ぶつけたら笑い者だからね!」

混雑している湾内を巧みに操艦しながら、アークロイヤル号は無事に『ライデン社』の保有する桟橋へとたどり着き投錨した。

桟橋では『ライデン社』と思われる社員や水夫が次々と集まり始めていた。

その中には、ライデン会長も混じっておりそれを確認したシャーリィも桟橋に降り立つ。

「お久しぶりです、ライデン会長」

「うむ、シャーリィ嬢も久しぶりであるな。自ら来ると思っていたよ」

「最初の大事な取引です。来ないわけにはいきませんよ」

「うむ、では早速ブツを拝見しようか。来なさい」

「はい。エレノアさん、積み荷を下ろしてください」

「はいよー!」

シャーリィはベルモンド、レイミを連れてライデン会長と一緒に港にあるオフィスへ向かう。その間にアークロイヤル号からは総出で積み荷の積み降ろし作業が開始された。

オフィスの応接室でライデン会長とシャーリィはソファーに座って向かい合い、互いの護衛が後ろに立った。

「では、こちらが今回積んできた品目です。お納めください」

「んっ……」

立ち上がったシャーリィはレイミの谷間から書類を取り出して差し出す。

「待ちたまえ、何故にレイミ嬢の谷間から出したのかね?」

「気分です」

「う、うむ」

いきなりふざけた行為をされて驚く『ライデン社』の面々。機先を制された形となった。

「で、では中身を拝見する」

書類を受け取ったライデン会長は中身を精査する。

「石油もあるな。むっ、いつもより生鮮食品が多いがこれは?」

「うちの妹は優秀なので」

「氷室を作りました。これで生鮮食品の保存が簡単になったんです」

レイミが代わりに応える。

「氷室……ああ、レイミ嬢は魔法が使えるのだったな。羨ましいことである。我が社に招きたいくらいだ」

「駄目です」

「あっ、はい」

笑顔だった。それはもう素晴らしい笑顔だったのだ。

「農作物については、何分氷室の利用が初めてなので不具合があるかもしれません。腐ったものなどが無いことは確認していますが、何かありましたら連絡をお願いします」

「そこは信頼している。それで、こちらが今回の代金である。確認をお願いする」

ライデン会長は金貨の詰まった袋を差し出す。

「ベル」

「あいよ。旦那、改めさせて貰うぜ」

袋を受け取ったベルモンドは中身の枚数を改める。

「……旦那、二枚ほど多いが?」

「今後を見据えた気持ちである。取っておきなさい」

「ありがとうございます。ではありがたく頂きますね」

「うむ。今後も定期的に石油と農作物を頂きたい。石油については、専用の樽ではなく、こちらを用意した」

護衛の一人がドラム缶を持ってくる。

「それは?」

「ドラム缶と言う。樽に比べて頑丈で石油を運ぶ際には重宝される。現物を渡すから、そちらで複製することも可能だろう。液体を運ぶには最適なものである」

「ふむ……鉄製ですね。これならドワーフチームが複製できそうです。有り難く頂きますね」

「ふむ、存分に活用してくれたまえ」

「それで、次回はこのドラム缶を使うとして数に希望はありますか?」

「可能な限り大量にほしいものだ。実験含め、燃料はあればあるだけ良い」

「では、出来る限りドラム缶を量産して詰め込んで持ってくれば良いと。分かりました、次回は今回とは比較になら無い数を持ってきます」

「よし、交渉成立だな。そして、だ。シャーリィ嬢。君は先進的な兵器を欲していたな。先ずは第一段として君に渡したいものがあるのだよ」

「石油を使った最新兵器ですか?」

「その通りだ。これは取引とは別に我輩と君の約束だからな。ちゃんと護るつもりである。ついてきたまえ」

ライデン会長は三人を促してオフィスの隣にある倉庫に入る。

「ライトアップ!」

ライデン会長が命じると一斉に電灯が点いて暗い倉庫を明るく照らす。

そこには菱形の巨大な何かが鎮座していた。

「なんだ、鉄の箱か?」

それを見たベルモンドが感想を漏らす。

「予想通りの反応で満足である。シャーリィ嬢、わかるかね?」

「いえ、これはわかりません」

素直に答えるシャーリィ。

「であろうな、こいつは『帝国の未来』にも記載していなかったはずだ。では、レイミ嬢。わかるかね?」

ライデン会長は、その物体を見て笑みを浮かべているレイミに視線を送る。

「ええ、わかりますよ。これは貴方の趣味ですか?気の早いことです」

「石油発見に備えて試作品を用意していたのである。チョイスについては、完全な趣味であるが」

「でしょうね」

「レイミ、これは?」

苦笑いするレイミにシャーリィが声をかける。

「お姉さま、お慶びを。これはお姉さまが求めていた兵器の一つ、戦車です」

「これが……戦車」

帝国初の戦車がその威容を見せつけていた。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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