テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
白山小梅
白山小梅
12
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「リサです、保育士目指して大学通ってます」
「ユカです。私はリサと同じ大学でーす」
「はーい。みんなの芽依ちゃんです。本名は芽依子だけど、芽依ってよばれてまーす」
「芽依と同じ大学の、ほとりです。よろしくお願いします」
一人足りないまま軽い自己紹介を終えると、乾杯をした。合コン特有の、ぎこちなくさぐり合う、甘ったるい空気感が漂う。
「T大って、顔面偏差値高くない?」
「あ〜、学祭とかやばい。去年、一部握手会みたいになってたよな」
「そうなんだ〜。同い年だと…経済学部の牧瀬くんと、教育学部の千景くんが有名じゃない?……え、まさか今日来ないよね?」
「あいつらたまにくるけど、女の子があいつら狙いにしかなんないから呼ばない」
「呼んでよー!」
お酒も入っていい感じの雰囲気になると、席もバラバラになった。芽依は、芽依が好きそうなカッコイイ系の男の子をユカちゃんと囲んでいて、楽しそうだ。
あたしはというと、一杯目のハイボールが思った以上に薄くてちょっと残念。すぐにカシオレにチェンジして、運ばれた甘いカクテルで口の中を潤していたその時。
「おじゃまします。席、とられちゃった。ほとりちゃんだよね?」
「うん。えっと、ルイくん?」
あたしの隣には、ルイくんっていう子犬顔の男の子がやって来て、ルイくんは笑顔で「そ。よろしく」とだけ言い、乾杯って軽くグラスを交わした。カッコイイ系よりも、カワイイ系の男の子が実はタイプだったりするので単純にときめく。
「で、一昨日彼氏と別れたって女の子は、ほとりちゃんだったりする?」
安直なときめきを感じていたって言うのに、一瞬で現実に戻ってしまい、思わず吹き出しそうになる。
「待って、その情報、シェアされてるの?」
「うん、普通に。 でもほとりちゃんって、なんとなくモテオーラ出てるよね?」
「ルイくん、もしかしてそういうの見えるタイプ?」
「全く見えないタイプ。でも、ほとりちゃんはなんというか……安全そうっていうのかな」
「たしかに、道とかよく聞かれるけど……待って。安全そうって、騙されやすそう、と同意語だったりする?」
「素直って同意語で受け取って。結局、女の子は可愛くて素直なのが一番じゃん。で、彼氏と別れてすぐ切り替えられるタイプだったりする?」
「割と。引き摺ったこと、ないかも」
高三のあの日が一発KOものであれば、あとは全部ジャブみたいなものって意味でね?
そんなこと三年引きずってんの?と思われそうなので、これはお口チャックだ。
「はは、あっさりした感じっていうの?すげー好き」
ルイくんの気持ちの籠っていない笑い声が、胸にざらっとした感覚を植え付ける。
さらっと可愛いって言うのも、さりげなく褒めてくれるのも、言い慣れている感じがして、なんだかなあ。
最初は女子列と男子列ときちんと整列していたのに、もう、ごちゃごちゃだ。誰かがトイレに立ったり、料理が上手く取れないといった理由に移動する度に、コロコロ変わっていく。
そのうちユカちゃんとリサちゃんが御手洗から帰ってきて、それぞれ別の男の子の隣に腰掛ける。打ち合わせを済ませたらしい。
狙いが被らないように《ホウレンソウね!》とLINE上で口酸っぱく言われていたのを思い出す。
あまったるい空気感の中に、殺伐とした感じが漂うのを皮膚で感じたそのとき。
「おつかれー……」
気怠い声が、あからさまに空気を変えた。右肩下がりのくせに、やけに触りが良い声は、なんとなく、聞き覚えがあって、つられて見上げる。
──……っ、え?
脳内に何十もの「え?」が木霊する。ぱちり、あたしがゆっくりと瞬きをする間に、その人は友人らしい男子の隣に腰を落とした。あたしの視線なんか気づく訳もなく。
色白の肌と、アイスブルーの瞳。
韓国風っていうのか、センターパートで分けられた前髪と光に当たって淡く光るアッシュグレイのマッシュヘア。二重でシュッとした切れ長の目、通った鼻筋はしっかりと顎のラインと結ばれており、横顔をとっても造形の美しさが見て取れる。
可愛いとは程遠く、完璧にかっこいい系に分けられるだろうこの男を
──……あたしは知っている。
ぎゅうっと懐かしさに似た侘しさが、胸に込み上げると同時、いそいで目を逸らした。
あたしが知っている人であれば、三年ぶりに会うことになる。今まで会う機会はごまんとあったくせに、なにもこんな合コンで会うって、そんなこと、ある?
いやいや、世の中に三人は同じ顔の人がいるらしいし、他人の空似って可能性もあるのだ。