お嬢様、果報でございます

「……やっぱり苦いわね」
　砂糖も入れてないブラックコーヒーを飲みながら愛華は自室から空を見つめていた。
　一橋にフラれて以降、愛華は砂糖を入れずにコーヒーを飲むのが日課になってしまっていた。
（苦い思いを忘れたくない……それにこの苦さが全てを塗りつぶしてくれる気がする）
　そんな思いの発露から出た行動だった。
「お嬢様、たまには砂糖を入れてみてはどうでしょうか？」
　果報は眉間に皺を寄せながらブラックコーヒーを飲む愛華に心配そうに話しかける。愛華の恋人を倒したのは自分だ。
　しかも強制的に別れるように告げ、そして愛華に別れを告げた後に『二度と会わないように』とまで言ったのだ。
　果報は自分が正しいことをしたという自負はあったが、愛華がここまで引きずるとは思っていなかった。
「いいのよ、果報。私はしばらくこのコーヒーを＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

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