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待ち伏せの魔導士たちがサンフィアたちと交えている中、おれとミルシェはルティが留まっている給水拠点に戻ってみることにした。
このまま彼女たちの戦いぶりを見守っているだけで特に何もすることが無い――というのが理由だ。
チャルカ給水拠点は遺跡出口から入ってすぐの所にある為、何かあっても外に出られる。もっとも、シーニャたちが苦戦する相手でも無いのでそこは心配していない。
「う~んう~ん……やっぱり何も見つからないのかなぁ」
出口からダンジョン内に入るとルティはすぐ近くにいた。どうやらあらかた探し尽くしたようだ。外の様子を窺いつつ、ミルシェが先に声をかける。
「全く、まだ何かを探しているの?」
「あっ! ミルシェさん! そうなんですよ~。母さまから聞いた話では、ドワーフさんたちから力を高めることが出来るアイテムを託されるはずでして~」
「アイテムを? ……あなたに?」
「ですです! ドワーフの装備品はドワーフにしか装備出来ませんからっ!」
ルティが言うアイテムとはもしや首輪のことでは?
ミルシェもそのことに気付いたのか、おれの方を振り向いている。しかし亡霊ドワーフはおれに託したわけだが……。託された首輪はルティにはまだ見せていない。
言葉を聞く限り探しているのは首輪のように思えるので、わざとらしく首に掛けたまま声をかけてみることに。
「ルティ、あなた……」
「はい? あっ! アック様っ! お待たせして申し訳ござ……あれぇっ!?」
「……ルティが探しているのはこれのことだろ?」
目立つ彩色でも無いが、あえて着けた首輪に気付いたようだ。亡霊ドワーフから託されたのはおれではあるが、装備しても何も起きる気配が無い。
そうなると、装備と集めることには特に繋がりが無いことになる。
「ああぁっ!! そ、それをどこで?」
「ここだ」
「はぇ? ええ!? それを先に教えてくださいよぉぉ!」
「見せようとした。でも、ここで探すなんて言われたら止められないだろ」
「はうっ! ごめんなさぁぁぁい!」
やはりお目当ての物だったらしい。装備品として微妙だと思っていたが、ルティが着ければ何かが起きるのだろうか。
「まぁ、とにかく……これはルティに預けておく」
「ええっ!? い、いいんですか?」
「失くすなよ。何なら首に着けてやるから……」
「はわわっ……!」
正直なところ、装備させても何も起きる気配は無い。おそらく、亡霊ドワーフの言っていたように全てを揃えたら何かに使うものなのだろう。
それまでは問題なさそうなのでとりあえずルティの首に着けさせた。
「アック様に着けてもらえるなんて……! ルティはとても嬉しいですっ!」
「大げさだな」
ルティの用も済んだので外へ出ようとした、その時だ。
後ろの方から外への出口に向かって、ナイフのようなものが飛んできた。振り返ると、ミルシェが水属性の防御魔法を展開している最中だった。しかし、水の壁を突き抜けて何本もの刃物が壁に当たっている。
「アックさま! 何者かが攻撃を! あたしの魔法がまるで効いていませんわ」
ミルシェの防御魔法は魔法に限らず、物理系の攻撃も防ぐことが可能だ。その防御を貫通してナイフが飛んでくるということは、余程の手練れということになる。
「ミルシェはルティだけを守れ! おれが前に出る!」
「わ、分かりましたわ」
武器を投げてくる相手に対し、ルティはあまり得意としていない。拳で破壊が出来るとはいえ、今は大人しくしてもらう方が良さそうだ。
「クカカッ! どうした、どうしたぁ~?」
「――! お前か? 卑怯なナイフ投げは! どうせザームからの追っ手だろ?」
「クカカッ! オレはザーム所属のリュグナー。マジックスレイヤー《魔術師討伐者》だ。女連れの若造ってのは、てめえのことだな?」
「討伐者? それも魔術師限定か」
次から次へと敵がわいてくるが、単独で動いている奴もいるようだ。遺跡に送り込んでいるということは、遺物には相当の価値か力があるということか。
「てめえがSランク魔術師ってことぁ、聞いてんぜ? だがオレは魔術を無効化出来る武器が――」
「あぁ、分かった。じゃあ、さっそく戦ってもらう」
「人の話を聞け、若造が!!」
Sランクとか、ランクはすでに関係が無くなっているはず。しかし奴等から見て、その程度にしか思われていないということなのだろう。
「……分かった分かった。せっかく会いに来てくれたことだ。聞いてやるよ」