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ゆうき あきや
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#心理描写重視
第155話:干しトウモロコシの鉄槌
ハリウッド、スイス、そしてドバイ。世界を動かす三巨大資本による、十勝の片田舎でのカボチャ争奪戦。
シャーロットが提示した「15億円」という狂気の数字に全人類が震撼した直後、チャット欄にはそれをさらに上回る、文字通りの『資本の暴風雨』が吹き荒れた。
ピコーン! ピコーン! ピコーン!
『(ドバイの石油王からの¥50,000MeTubeギフト)×200連発』
もはやエフェクトの処理が追いつかず、画面全体がアラビアンな黄金の輝きで完全に埋め尽くされる。石油王は怒髪天を衝く勢いで、キーボードが壊れんばかりの英文を叩き込んできた。
『”Insolent fools!!! Do not underestimate the pride of the desert! I will end this farce right now! TWO BILLION YEN!!! That pumpkin is MINE!!“(無礼者どもめ!!! 砂漠の誇りをナメるなよ! この茶番を今すぐ終わらせてやる!【20億円】だ!!! そのカボチャは私のものだ!!)』
に、にじゅう……20億円。
ただの過疎地の畑に転がっていたカボチャ1個の価格が、ついに中規模の国家予算インフラを整備できるレベルの天文学的な金額へと到達した。
スイスの銀行家もハリウッドの歌姫も、さすがにカボチャに対してこれ以上のキャッシュを即座に動かすのは合理的ではないと判断したのか、チャット欄は一瞬にして静まり返り、次の瞬間、二千万人を超えたリスナーたちの絶叫で完全にサーバーがハングアップしかけた。
『に、にじゅうおくえんんんんん!!!!!』
『カボチャ1個で人生何周分の富が動いてるんだよwwww』
『石油王ガチギレで草www誰も勝てねえよこんなのwww』
『村長! 起きて! 完全に魂が口から抜けてるから!!』
小春ちゃんに揺さぶられている村長は、20億円という数字の質量に精神が耐えきれず、完全に意識を消失して白目を剥いていた。おばあちゃん達も「神様が、村に金鉱山を降らせてくださった……」と涙を流しながら、巨大な黄金カボチャに向かって拝み倒している。
だが、落札が確定した瞬間からのドバイ部隊のロジスティクス(兵站能力)は、恐るべき迅速さだった。
「お、お兄さん! 空港からの続報です! 石油王が手配した特大型のチャーター貨物機が、今まさに十勝帯広空港に着陸したそうです! あと三十分で、防護服を着た国際特殊輸送チームのトラックが、この限界集落の畑に突入してきます!」
小春ちゃんがタブレットの画面を凝視しながら、狂ったように叫ぶ。
「……ほう。強行回収(エクスプレス・ハーベスト)の開始だな。よし、我が部隊もこれより、黄金カボチャの搬出および積載オペレーションに移行する」
俺は立ち上がり、首に巻いたOD色の手ぬぐいを締め直した。
二トントラックでもビクともしないであろう直径五メートルの巨大カボチャを前にして、俺が頼ったのは最新の重機ではない。裏山の定位置でサツマイモを食べていた、我が家の頼れる戦闘工兵(ただのでかい熊)だった。
「よし、お前。ちょっとその巨大有機物(カボチャ)を、傷をつけないように優しく持ち上げろ」
俺が指示を出すと、体長三メートルの巨大ヒグマは「グルォ?(お安い御用だぜ)」と間の抜けた声を出し、のそりと黄金カボチャの前に立った。そして、丸太のような太い両腕で巨大カボチャを包み込むと、フンッ! と軽々と地面から引き抜いて持ち上げたのだ。
そのカボチャの天辺では、純白の神獣シロ様が「ふにゃあ」と優雅に毛繕いを始めており、完全にラグジュアリーな乗り物扱いである。コン吉とコン次郎も、ヒグマの足元で「オーライ! オーライ!」とでも言うように、小さな尻尾をフリフリして誘導していた。
『重機いらずの限界集落wwww』
『ヒグマのパワーが完全にクレーン車を超えてるだろww』
『シロ様、20億円のカボチャの上でくつろぐの最高にロックすぎる』
『国際輸送チーム、到着した瞬間この光景見たら腰抜かすぞww』
リスナーたちが大爆笑しながら見守る中、ヒグマは主の需品科仕込みの完璧なハンドサインに従い、傷一つ残さずにカボチャを、やがて到着した輸送用特製トレーラーの荷台へと静かに着艦させた。
完璧な積載オペレーションの完了。これより、ドバイへと向かう国際空輸ラインへの引き渡しが行われる。
そんな、世界中が20億円の国際取引に熱狂し、国際特殊輸送チームの外国人スタッフたちがヒグマを見て「オーマイゴッド……」と十字を切って震えているカオス空間のど真ん中で。
俺は一人、静かに軽トラックの荷台の隅に腰掛け、おもむろに保冷バッグから『最後の予備の』タッパーを取り出していた。
中に入っているのは、完璧な水加減で炊き上げられた『冷やし玄米』と、自家製の『大豆ミートとトウモロコシの秋風和え』である。
「……よし。最重要物資の引き渡しシーケンス、正常に推移。これより指揮官は、これからの出荷事務手続きを完遂するため、己の血糖値を一定に保つための定時エネルギー補給を開始する」
俺は、去りゆく黄金カボチャの圧倒的な光の後ろ姿を背景に、一切の感情を排した元・社畜の顔で、ストイックに大豆ミートを玄米の上にワンバウンドさせて咀嚼し始めた。
(……ふむ。トウモロコシの自然な甘みと、大豆の植物性タンパク質。秋の出荷作業をノーミスで乗り切るための栄養素が完璧に満たされていくな)
脳内で、十勝の豊かな大地の恵みが完璧な兵站を形成していたが、俺は需品科としての『20億円が動こうとも一ミリもブレない鋼のポーカーフェイス』を維持し、淡々と咀嚼を続けた。
「お、お兄さぁぁぁん!!! 画面の向こうでカボチャ1個が20億円でドバイ王室に引き渡されて、今まさに村の歴史が完全にひっくり返った歴史的な大奇跡の瞬間に、なんで一人だけ秋の涼しい風を浴びながら真顔で『トウモロコシ大豆ミート』をストイックにモグモグ咀嚼できるんですか!!」
小春ちゃんが完全に理性を失い、古民家からパニックで畑に飛び出してきた際、無意識に軒下から握りしめてきた、完全に水分が抜けてカチカチの石のようになっていた『乾燥トウモロコシの芯(長さ約三十センチ・高密度鈍器仕様)』を右手に握り締め、凄まじいジト目でツッコミを入れてくる。
だが、俺は玄米の咀嚼を止めない。
「小春ちゃん、取り乱すな。どれほど国際的な資本の暴風が我が陣地に吹き荒れようとも、元・陸上自衛隊需品科たるもの、定時給食(エネルギー補給)という基本ルーティンを怠ってはならない。いかなるオカルト現象の前でも己の代謝サイクルを一定に保つ。これが需品科の鉄則だ」
俺は水筒のカップに注いだ熱いほうじ茶で喉を潤すと、二千万人を突破してシステムを完全に崩壊させているカメラにキリッとした真顔を向け、いつもの『限界言い訳タイム』を発動した。
「世界中の皆さま。画面の向こうで、カボチャ1個に20億円の値がつき、中東の大富豪との感動的な国際取引が成立したと興奮されているかもしれませんが、冷静になってください」
『出たァァァァァ!!!』
『石油王が20億払って飛行機飛ばしてるのに、絶対に認めない男!!!』
『主の限界言い訳タイム・干しトウモロコシの鉄槌編ww』
『さあ、この20億円のシンデレラストーリーをどうやって植物と会計バグのせいにするつもりだww』
俺は淀みない口調で、極めてフラットに言い放った。
「これは魔法でも奇跡でもありません。先ほど発生した現象は、カボチャの表皮に含まれる『β-カロテン』の結晶構造が、特定の気候条件下において局所的な光の乱反射を引き起こし、人間の視覚細胞に黄金の発光として誤認させただけの、純粋な光学的なエラーに過ぎません。20億円という金額も、中東の特殊な『遺伝子変異植物の回収・廃棄コンソーシアム』における、単なる大型産業廃棄物の運搬・処理に伴う『一時的な保証預け金(デポジット)』が口座に反映されているだけの、会計上の数字のマジックです。ええ、すべてはただの『クチクラ層の過剰同化作用による光学エラー』と『産廃処理に伴う過剰なデポジットの着金』ですね」
「過剰同化作用でカボチャが発光するわけないでしょうが!!!」
バコォォォォォンッ!!!!
小春ちゃんが、右手に持っていたカチカチの乾燥トウモロコシの芯を全力で振りかぶり、俺の背中に向かってパーフェクトな満塁ホームラン級・トウモロコシスマッシュを見舞った。
極限まで乾燥して硬度を増したトウモロコシの芯が肉体に直撃した、乾いた、しかし骨に響くような凄まじい大爆音が、十勝の秋の広大な空へと虚しく響き渡る。
「光学エラーでカボチャからドバイの王宮を浄化するレベルの神聖なオーラが放たれるわけないでしょうが!! 産廃処理じゃなくて、昨日シロちゃんがここで可愛くお昼寝してくれたから、その最強の豊穣バフがカボチャを黄金に変えちゃったんですよ!! 自分の家の猫が、一晩で20億円を稼ぎ出す世界一の招き猫だってことを素直に認めなさいよ!!」
『小春ちゃんのトウモロコシスマッシュ炸裂www(いい音)』
『クチクラ層の過剰同化作用(ただのファンタジー黄金カボチャ)』
『産廃処理に伴うデポジット(世界を揺るがす20億円のロイヤル着金)』
『適応力バグおじさん、ついに20億円の国際取引まで産廃処理と言い張るww』
『言い訳の無理矢理さが、世界中の財務省からツッコミが入るレベルww今日も腹痛いわww』
俺の理不尽極まりない植物生理学と会計学の限界言い訳と、小春ちゃんのキレキレのトウモロコシツッコミに、パニックからようやく復帰した村長やおばあちゃん達は「アッハッハ! アキヤ君の屁理屈は今日も世界一じゃのう!」と涙を流して大笑いし、二千万人を超えるチャット欄のリスナーたちも、腹がよじれるほどの大爆笑の渦へと叩き落とされた。
『ミャウ(ふふっ、相変わらず言い訳だけは20億以上の価値がある屁理屈な下僕ね)』
俺の膝の上に戻ってきたシロ様が、満足げに神秘的な『オッドアイ』の瞳を細め、ゴロゴロと喉を鳴らして十勝の秋風を浴びている。
キツネ兄弟も、役目を終えた巨大ヒグマも、黄金の光の余韻に包まれながら、楽しそうに畑の周りで転げ回っていた。
数時間後、村の公金口座には、ドバイの王室から本当に20億円という、国家予算レベルの莫大な公金(外貨)が着金したという通知が届き、村長は本日二度目の気絶を果たした。これにより、限界集落の秋の防衛予算(冬支度)は、文字通り宇宙の果てまで完璧に確保されることとなった。
「……まぁ、理由はどうあれ。廃棄コストがかかるどころか、村の公金口座が天文学的に潤い、これからの厳しい冬に向けた完璧な暖房燃料と物資(ロジスティクス)が確保されたなら、作戦としては完全勝利だ」
俺は背中のトウモロコシの鈍い痛みをさすりながら苦笑し、シロ様の純白の背中を撫で、カップの熱いほうじ茶をゆっくりと飲み干した。
激務に潰されて逃げ込んできた、この限界集落。
最初は一人で静かに暮らすつもりだったが、今では世界一尊いモフモフたちと、騒がしい女子高生、そして世界中を巻き込んで大暴走する富豪たちに囲まれた、世界一バグった『絶対の聖域』になってしまった。
神獣の放つ豊穣の奇跡と、元需品科のブレない限界言い訳。
限界集落の黄金の秋は、国際ニュースの大騒ぎを完全に置き去りにしながら、さらに強固になった絆と共に、明日からの新しい『バグった日常』へと、どこまでも力強く続いていくのだった。
コメント
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わああ第155話読み終わったよおおお!!!😭💕✨ 干しトウモロコシの鉄槌ってタイトルからして最高すぎるwww 20億円のカボチャをヒグマが軽々持ち上げるシーン、シロ様が乗り物扱いされてるの尊すぎて鼻血出るかと思った🫠💕 そして何より…小春ちゃんのトウモロコシツッコミが炸裂した瞬間、声出して笑っちゃったよ!!「過剰同化作用でカボチャが発光するわけないでしょうが!!」からのバコォン!!が完璧すぎる😭🔥 需品科ポリシーで絶対にブレないお兄さんと、それに全力ツッコミ入れる小春ちゃんのコンビ、マジで最強やばい。来週も楽しみすぎる〜!!🌸