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「……くっ…」
突き出された包丁を目の前に、キッチンへ押しやられると、上に覆い被るように男を押さえ込んだ
暗殺ターゲットとナイト
「…呆気なかったなこんなものか」
つまらなそうに呟くが、男の方も包丁が目の前にあるのにも関わらず挑発的な言葉を告げた
「クソガキではありますが…動きは猿並ですね」
「…19だ…これでもな」
「あの…先生はこれでも24です」
入口に立っていたロボットがそう告げると2人がロボットを睨みつける、縮こまるようにほかのロボットの後ろに隠れた
「まぁ死ねばそんなの関係無い」
「…お前口と態度は悪いが……戦闘力は悪くは無いですね」
「……はぁ?」
ずっと大人しかった男が首元と手元を掴み、グイッと反動でひっくり返し立場が逆転する
「……っ!?」
力の込められた手首から重い痛みが走る
冷たい目でその歪んだ顔を見つめながら選択肢を迫った
「選びなさい。ここで死ぬか、俺のナイトになり死ぬまでこき使われるか…」
「……ッいっっ…!!」
すると入口付近に屯っていたロボットが一斉に目の前までやってくると、男を引き剥がし始めた
「ッ!何する!お前たち!」
「先生!相手は怪我人です!大怪我を追わせる気ですか!!」
するとほかのロボットも口々に喋り始めた
「そうです!!勝負はついてるのですから!!」
「殺す気が無くなったと言ってたでは無いですか!!」
「先生!女性相手に本気になっては行けません!!!」
ロボットの1人がそう呟くと、周りにいたモノ全ての動きが止まる
「……女?」
足を思い切り蹴り上げられた
「ッいっ…!!」
痛みに耐えていると、尽かさず髪を掴まれ、目を合わせられる
「なんだ…文句あるか?」
「ッ……女には見えない態度と口調ですね…」
再び戦いが始まろうとしたが、その場にいたロボット達が全員で2人を取り押さえ,場は静まったのだった
「人間様…お食事の時間です」
当たりが暗くなり始めた時、部屋に閉じ込められ、大人しくベットに座っていると、ワゴンを押しながら入ってくるロボットの姿があった
「……飯…?」
食器を机に並べ、蓋が乗った食事が机の上に置かれる
「……」
「スタミナの付くローストビーフと…食べやすい梅のお粥とフルーツヨーグルトです」
蓋を取ると、ホカホカの食事が目の前に現れた
ベットから体を投げると、食事の前の椅子に腰を下ろした
スプーンを手に取るとお粥をすくい上げ口に入れる
「…美味しい」
とても暖かい味にスプーンが止まらない
その様子をロボットはスコープ越しに捉えていた
「口に合うようで良かったです!我々は先生の口に合うものしか作ることが出来ないので……」
「……ふーん…その所はどうでもいい」
ローストビーフはもっと美味かった
しばらく食事を進めていると、ロボットから話を吹き掛けてきた
「人間様……,何故先生を殺そうと?」
「……お前らが知る必要ないだろ…」
動かしていたフォークを止め、食事を中断する
「しかし気になるのです。生きた人間がここへ訪れたのは本当に久しぶりなので」
「……知るか…それに、あいつだけじゃなく,あんたも暗殺対象だ。やがて焼き払ってやるこの屋敷ごとな」
「……簡単には口を割らない…か」
誰も居ない男の部屋ではロボットに取り付けた盗聴器から音声を聞いている男の姿があった
耳につけた器具を外し、カーテンで仕切られた部屋に入ると、昨夜の銃弾で壊れたロボットと先程ショートしたロボットが目の前に並べられていた
男は手袋を嵌めるとカーテンの奥に1人で入り、閉めた
真夜中…ロボットが部屋の巡回に,そっと扉を開けた
ベットでは頭ごと布団に埋め、静かに眠り込んでいる姿が伺えた。それを確認すると、無闇に近寄らずゆっくり扉を閉めた
「……行ったか…」
布団から降りると、棚の前へ移動する
開けると夜ご飯の際使われたナイフが入っていた
1つ、使わずに残しておいたのだった
「今夜…で終わりだ」
火花を散らかしながら、壊れたロボットの修理をしている男
マスクを取り、時計に目をやるも、もう夜中の2時を示している
座り込んでずっと作業を行っていたせいか、体が重い
体を伸ばしている男の背後でカーテンが揺れる
「……」
視線を向けるも誰も居ない
何も疑う様子もなく、男はカーテンを空け隣の部屋へと移動をする
マスク、そして手袋を机に乱雑に放り投げ扉の取っ手に手を掛ける__が、開けない
ゆっくり取っ手から手を離し、本棚にしまわれた本をひとつ取り出すと取っ手に投げる
扉がゆっくり開くと、足元にガラスがむき出しの状態で散らかっていた
トラップだ
「……引っかかれば簡単に終わったのに…」
ベランダの窓辺のカーテンに隠れていたのをゆっくり見せた
「相当の殺意ですね…何処からこんなもの用意したんですか?」
「……そこらの窓ガラス」
「やれやれ…明日また修理しなければ…それと,お前のお葬式も」
「ッハハハッ!!お前のだろ!!」
ナイフを手に握り締めて男に近寄り首元を狙う
横へ交わすも読まれ、足蹴りを食らわせる
受身を取った男は本棚に体が叩きつけられるが,その間もナイフが男を襲う
「底なしの体力ですね……女の癖に…ッ」
「お前も男の癖に押されてるなぁ?」
ふと腹部あたりを鋭い何かが迫ってくるのを感じ取り、距離を離す
男が立ち上がると手元に先程敷いたガラスの破片が握られていた
「くっそ……まさかそれが裏に取られるとはな」
「能ある鷹は爪を隠す…まさにこの事ですよ」
男の手の平から血が流れるも、そのまま目の前まで迫ると尖りきった破片が顔の横を素通りする
「……ッ!危な……ッ」
破片がナイフとぶつかり…夜の光が男を照らす
白髪の髪に金色の目は目の前の獲物を狙う獣のようだ
力が押され…刃物が自分の首元まで近付いてくるのを感じ取ると、ベランダの扉を開け,身を後ろに捻った
雨の止んだ外は風が強く、押されてしまいそうだ…3階のこともあり、かなり高さがあるが…戦いは収まらない
「……はぁ…っ…はぁ…っ…」
男の方が苦しそうに呼吸をする
首筋から汗が伝っていてもはや限界そうだ
「……お前…まさか病気か?」
「……」
しかし無言で攻撃を吹っ掛けてくる
相手が弱ったこの状況に,口元から笑みがこぼれる
「何がおかしい…!」
男がそう答えるも、その瞬間男の破片が昼間のようにどこかへ吹き飛んだ
「……終わりだ」
風が吹く夜の事だった
丁寧に洗われ、1本に縛られた長い黒髪は本来の美しさを取り戻し風に靡き綺麗な輝きを放っていた
月の影が、身体 形を包み込み、白い肌を持つ顔からは不気味に光る赤黒い瞳が男の目に映り込む
膨らんだ唇はピンク色で…不気味に微笑んだ三日月の形を作り上げていた
殺されるすぐ手前…男は一言呟いた
「……少々お前を見くびっていた様です…お前は死んだ俺の母親によく似ています…」
「……っ!?」
「……」
黄色の瞳が瞼に隠され,フッと男は無防備に抵抗をしなくなる
(殺すなら今だ……)
脳内に、自分を奴隷のように扱ってきた人間の姿が浮び上がる…
会ったことは無いが……スクリーン越しで見た事がある
研究服を来た男女達…その中央に立っていた歳のとった男…
そうだ…人間は皆欲望のままに人を動かす侵略者だ…!!
手元のナイフを__そのまま振り下げた
直後夜の森からは…どこからか狼の遠吠えが聞こえたのだった
「おはようございます…人間様,よく眠れましたか?」
ロボットの声__ボイスに眠る為に潜り込んでいた体をゆっくり起こし,そのまま歩き出す
「そ、、その姿!!どうされたんですか!?」
服はまるで返り血を浴びたように血だらけだ
今にもショートしそうなロボットの動きをまるで無視し、不満そうに顔を歪ませながら,その部屋を後にした…