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つづきです🙌🏻
翌日の学校は、昨日の告白と決断が夢だったかのように、いつもと変わらない日常が流れていた。
しかし、大森元貴、若井滉斗、藤澤涼架の三人にとっては、すべてが少しずつ違って見えた。
朝、一年B組の教室で、元貴は若井の隣の席に座っていた。いつもなら「若井!」と気安く話しかける元貴だが、
昨日のことを思い出すと、まだ少し照れくさい。若井も、隣の元貴を一瞥し、何も言わない。
「…若井」
「ん?」
「あの、昨日のこと…」
元貴がもじもじと口を開くと、若井は小さく笑った。
「言っただろ、大丈夫だって。それに、涼ちゃんもOKしてくれたんだから、もう悩む必要ないだろ」
その言葉に、元貴はふわりと笑顔になった。若井の言う通りだ。二人で涼ちゃんを幸せにする。
その目標ができただけで、胸の奥が温かくなるのを感じた。
休憩時間になると、元貴と若井は自然と三年の階へ向かっていた。
涼ちゃんのクラスである3年A組の前を通ると、ちょうど授業の合間なのか、涼ちゃんが廊下で友達と話しているのが見えた。
「涼ちゃん!」
元貴が思わず声を上げると、涼ちゃんは驚いたようにこちらを見た。
そして、すぐに優しい笑顔を向けてくれる。
その笑顔に、元貴も若井も、昨日の出来事が決して夢ではなかったと実感する。
「元貴、若井!どうしたの?」
涼ちゃんの周りにいた女子生徒たちが、好奇心に満ちた目で元貴と若井を見ている。
特に元貴は、涼ちゃんが他の女子と話していると、また不機嫌になりそうになるのを必死で抑えた。
「ちょっと涼ちゃんの顔見に来ただけ。元気かなって」
元貴が少し拗ねたように言うと、涼ちゃんは「もう、元貴ったら」と笑い、元貴の頭をぽんぽんと撫でた。
その光景を、若井は穏やかな表情で見つめる。昨日の夜、三人で交わした約束が、彼らの間に新しい空気を生み出していた。
若井は涼ちゃんの隣に歩み寄り、さりげなく女子生徒たちとの間に割って入る。
「涼ちゃん、放課後、軽音部で待ってるからね」
まるで当たり前のように言う若井の言葉に、涼ちゃんの
友達が「あれ、藤澤先輩って、最近軽音部によく行くよね?」と尋ねた。
涼ちゃんは少し頬を染めて、「うん、まあね」と曖昧に答える。
元貴と若井は、涼ちゃんにしか聞こえないくらいの声で「涼ちゃん、愛してるよ」と囁き、涼ちゃんはさらに顔を赤くして「もう、二人とも!」と困ったように笑った。
周りの生徒たちには何もわからない。彼らの間で交わされる視線、そして、ほんの少しだけ触れ合う指先。すべてが、彼らだけの「特別」だ。
午後の授業中も、元貴は時折若井の横顔に目をやった。若井もまた、不意に元貴の方を見て、目が合うと小さく微笑んだ。
彼らの間には、言葉にしなくても伝わる、確かな絆が生まれ始めていた。
放課後、軽音楽部の部室で。
元貴がギターを抱え、若井がそれに合わせてリズムを刻む。そして、涼ちゃんの奏でるキーボードの音色が、二人の音に優しく寄り添う。
彼らの音楽は、以前よりもずっと、温かく、そして深みを増しているように感じられた。
演奏を終え、ふと顔を見合わせる三人。
「ねえ、三人で一緒に帰ろ?」
涼ちゃんの提案に、元貴と若井は顔を見合わせ、そして同時に満面の笑みを浮かべた。
帰り道、涼ちゃんを真ん中に挟んで歩く元貴と若井。以前と同じ構図なのに、その内側で生まれている感情は、大きく変化していた。元貴は涼ちゃんの手をそっと握り、若井は涼ちゃんの肩に腕を回す。
「涼ちゃん、今日のご飯、何食べたい?」
元貴が聞くと、若井が「じゃあ、俺が奢ってやるよ」と言った。
涼ちゃんは、二人の優しさに包まれて、心から幸せだと感じていた。
「んー、じゃあ、三人で何か美味しいもの食べに行こっか!」
涼ちゃんの言葉に、二人は同時に頷いた。
彼らの「特別」な関係は、まだ始まったばかり。
これからどんな壁にぶつかるのか、どんな喜びを分かち合うのか、それは誰にもわからない。
しかし、今の彼らには、互いを想い合う気持ちと、それを大切にしようとする強い意志がある。三人の紡ぐ新しいメロディが、これからも彼らの日々を彩っていくことだろう。