テラーノベル
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乾燥が気になる季節だけど、俺の顔に限っては乾燥してない。化粧品会社の社長、富貴さんが「うちに関わってる人がスキンケアしないなんてありえない!」と男性用スキンケアオールインワンジェルを欠かさず送ってくれるので。
そういう訳で、風呂上がり、ヒゲ剃り後ケアとして顔にジェルをぺたぺた塗っている。俺、風呂の時にヒゲ剃る派なので。
千歳が、それをなんとなく眺めていた。
『それ、どれくらい効果あるんだ?』
「結構ある。顔だけしっとりしてる」
『へえー』
「前に咲さんにも肌きれいとか化粧ノリがいいって言われたから、まあメンズメイクする人にはいいんじゃないかなあ」
『そうだな。お前それ塗ってると肌が若いよ』
「そう?」
俺は手に残ったジェルを手に塗り込みながら答えた。食器洗い担当だと手も乾燥するからさ。
『お前31だけど、肌若いから30前に見えるって! 好きな人にこだわらずガールハントしてこい!』
「いつの時代の言葉だよガールハントって!」
千歳、知識のベースが昭和だから、たまにとんでもなく時代遅れの言葉が飛び出すんだよなあ。
俺があまりにも気乗りしてない顔をしたのか、千歳はなんだかしょんぼりしてしまった。
『ガールハントする気ないか? やっぱり好きな人一筋か?』
千歳をがっかりさせたくはないが、これに関しては俺は嘘をつけない。
「まあ……こんな気持ち抱えて他の人に行くのは不誠実だと思うよ」
咲さんとも、結局それでうまくいかなかったし。
千歳は考え込んだ。
『何とかして、その好きな人嫌いにならないか?』
「それができたら苦労してないんだよなあ」
俺は千歳に苦笑して見せた。本当に、それができたら苦労してない。恋という概念がない人に惚れてしまうのは、苦しい恋だ……。
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コメント
1件
うわ、このエピソード、めちゃくちゃいいですね。スキンケアの話から始まって、千歳さんの「ガールハントしてこい!」って昭和ノリに笑った反面、最後の「好きな人を嫌いになれない」って台詞がじわっと沁みました。31歳の男がオールインワンジェル塗りながら「不誠実だと思うよ」って言うシーン、切なさと真摯さが混ざってて好きです。長編の日常パートって、こういうキャラの体温が伝わる瞬間が一番贅沢だなあ。