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こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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黒視点(短め)
「何?あにき。用事って」
20時頃になって、呼び出したりうらがようやく家にやって来た。
ソファを顎で指し示すと、聞き分け良くそこに腰を下ろす。
「用事って言うほど大げさなもんちゃうけど…りうらお前、結局今日ないこに会いに行ったん?」
昨日の夜、りうらから電話があったのはもう俺が寝ようとしていた時間帯だった。
あにきなら知ってるんでしょ、と堅い口調で告げる声は、いつもの天然と言われるような最年少のものとは異質だった。
ないことまろが付き合っている事実はメンバー全員に知らされている。
だけどりうらだけは、その信憑性を訝しんでいるようだった。
2人の様子がおかしいことに感づき、自分がまろの髪に触れたり家に行ったりしたことがないこに対して配慮が足りなかったかもしれない、と気にしていた。
だから、りうらには本当のことを告げた。
俺から言うべきことでもなかったかもしれないとも思うけれど、不思議と悪いことをしたという気には一切ならなかった。
りうらがもしそれを知って何か行動を起こすなら…それがないことまろの拗れた関係を修復する一助になるかもしれないと、微かな希望に似た何かに縋るような思いだったのかもしれない。
「行ったよ」
はっきりと頷いて返す赤い髪の前に、とりあえず冷蔵庫から出してきたコーラを差し出す。
それに口は付けないまま、りうらは右膝を抱えるようにして両手の指を絡ませた。
「ないくんに対してりうらの配慮が欠けてたのは本当だしね。謝ってきた」
『謝った』という割に、それほど悪びれる様子もない気がする。
向かいのソファでその顔を見つめ返すと、そこでりうらは唇の端を持ち上げて笑んだ。
「後はあにきの話聞いて思ったこと、全部言ってきた。本当にさぁ、ないくんって頭もいいし鋭いのに変なとこだけ鈍いよね」
自分の気持ちとかさ、と付け足して、りうらは「ふふ」と囁くような笑みを零す。
「さっさと素直になって、ちゃんと付き合えばいいのにね」
そう言ってから、りうらは「でも」と改めて言葉を継いだ。
そこでようやくコーラのボトルに手を伸ばし、ぐいと顎を上げて呷る。
「2人見てたらもどかしくはあるけど、ちょっと羨ましくなるね。あぁ人を好きになるっていいよね、って」
ローテーブルの上にボトルを戻すと、コツンと少し硬めの音がした。
それを指先で弄ぶようにくるくると触れるりうらは、目の前のボトルではなくもっと遠くの何かを見据えているようにも見える。
「…お前やったらすぐにそういう相手できそうやけどな。りうらが誰かを好きになったら、落ちひん奴はまずおらんやろ」
自信家で、でもそれ以上に努力家で、まるで物語の主人公。
きらきらとした何かに常に覆われているようなりうらは、俺の言葉にまた声を立てて楽しそうに笑った。
「ね。りうらもそう思ってたよ、最近までは」
自信に溢れたような言葉は、それでもこいつが言うから嫌味がない。
「調子に乗るな」と諫める気すら起こらない。
そう言えるだけの努力を人よりも重ねてきていることを知っているし、自負するだけの魅力をうちの最年少は持ち合わせているから。
「でも、そうでもなかったね」
ふふ、と眉を下げて意味ありげに笑う。
その言葉と表情に「ある事実」に気づかされ、俺は思わず一瞬言葉を失った。
しばらくの間の後、「…えぇ…」と、何とか声を絞り出す。
「…まじ? どっち?」
「さぁ、どっちだろうね」
問いに問いで返して、りうらは「あはは」と更に楽しそうに笑った。
そんなりうらの表情を見据えながら、俺は今までの状況を思い起こす。
ないことまろの姿を脳裏に浮かべ、りうらのこれまでの言動を振り返ろうとした。
けれど、きっとどうせ答えは得られないんだろう。
りうらが簡単に正解を口にするとは思えない。
「…ご愁傷様」
嫌味でもなく、そうとしかかける言葉がない。
ないことまろがうまくいくのはきっと時間の問題だ。
そんなことは当然分かっているらしい。
言われた当の最年少は、自分のことだというのに本当に楽しそうにただしばらくは声を上げて笑っていた。