テラーノベル
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※ネタに行き詰まった時に回すお題ガチャより
『拷問は気乗りしないが相手がトラゾーを傷付けた相手ならば話は別なクロノア。
くれぐれもやりすぎないようにと周りから釘を刺されている。』
目覚めて最初に目にしたのは、先ほどまで尋問とは似つかわしくないくらいのやり取りをしていた男だった。
「よくもまぁ、懲りずに彼に手を出せたものだね」
目の前で恐怖に震える哀れな男。
それに対して微塵も可哀想と思わない。
あるのは怒りと殺意。
「ゔー!ゔぅ!」
「何言ってるか分かんないけど?ちゃんと分かる言葉で喋りなよ」
猿轡をされて尚且つ喉を潰されてる男は言葉を発することはできず、出てくるのはくぐもった何の意味もなさない声だけ。
「誰に手を出したかもう知れ渡ってると思ったのに…。まだそういうことする人間…いや、ゴミがいたなんてね」
無表情の顔に抑揚のない静かな声。
「ぺいんとたちにはあんまやりすぎないようにって言われてるけど、モノさえ残らなければ分かんないし。ほら、殺人も死体がなきゃ立証されないしね」
彼の手に握られるのは錆びて刃こぼれしている鋸。
「これで切られたら痛いだろうな。…どうする?どこがいい?」
涙や鼻水、涎やら汗でぐちゃぐちゃになる男に優しく微笑みかける。
「まずは右手からかな。この手でトラゾーのこと触ったんだろ」
手首に刃先を充てがう。
「ゔゔ⁈」
それを勢いに任せて引く。
「!!⁈い゛ゔあ゛ぁ!!」
「うーん、やっぱ刃こぼれしてるのは切りづらいな。…えい」
更に上下に引く。
「〜〜──!!」
男は既に声にならない絶叫をあげ失神しかけた。
男は失神することができない。
何故なら、失神すれば己の頭を目の前で光る杭が貫くからである。
「楽になれば死ねる。でも、俺はそんなの許さない。この杭もゆっくりお前の頭を貫くだろうけど、それもまださせてやらない」
不意に猿轡を外した。
男はどういうことだと見上げる。
「口開けて」
「?」
「開けろ」
「!!」
その絶対的な命令に大きな口を開ける。
「舌、出して」
有無を言わさぬ声色に従う。
一瞬、何が起きたか分からなかった。
理解する前に焼けるような感覚に襲われて、次いでじわじわと痛みがそれを追うようにして襲ってきた。
叫ぶ前にまた猿轡をはめられ、口の中に血が溜まっていく。
もうどこが痛いのか分からなくて、己の血で窒息しそうになる。
しかも舌が機能しない為、溢れるそれをうまく飲み込むことができない。
「さて、次は左腕にしようか」
血で鈍く光る鋸を片手に笑いかけられ、男は遂に諦めて意識を失った。
─────────
「クロノアさん、あんたやっぱり怖いですよ」
「えぇ?こんなのまだまだ生ぬるいよ」
「これ以上のことしてるのも知ってるし、見せたくない理由も分からなくもないですけど」
「可哀想って?」
「いや、それは絶対にない。まぁ、ある意味ではカワイソウかもしれませんけど。…俺的にはトラゾーに知られた時の方が嫌です」
「それは同感」
「だから、お互いにやりすぎないようにって約束したじゃないですか。…今回は見なかったことにしますけど」
「ぺいんとも同じようなことしてただろ」
「当たり前じゃないすか」
「ま、次からは気をつけるよ」
「(ホントかな…)頼みますよ。あなたの部下が泣きついてくるんですから」
「それはぺいんとも同じだからね」
「…すみません」
「やり過ぎないようにお互い気をつけようね。くれぐれもトラゾーにバレないよう、俺らも部下たちにも釘を刺さないとね」
「今んとこトラゾーのとこに泣きつく馬鹿はいないんで」
「さ、戻ろう。しにがみくんがそろそろ連絡してくるからだろうし」
「ほーい」
Q.何をしたんですか?
A.彼を心身共に傷付けて泣かせて無体を働こうとしました。
Q.何故そんなことをしたのですか?
A.情報を盗られた腹いせと好みの顔をしていたからです。
Q.彼に手を出すことは禁忌だと知らなかったのですか?それとも知っていた?
A.知ってました。それでも欲しくなってしまいました。
Q.死ぬとしても?
A.開けてはならない箱を開けたくなるのは人間の心理だからです。
Q.…パンドラの箱のことですか?
A.希望なんて何もない。ただの絶望が詰まった箱でしたけどね。
最後の質問です。
「糠に釘ということわざを知ってますか?」
「ぇ、あ゛…?」
お前みたいな有象無象の頭スカスカ野郎共に何を言っても意味がねぇってことだよ。
喉が焼け付くように痛み出した男は質問の意図も、懇切丁寧なやりとりの意味も分からぬまま意識を失った。
───そして、冒頭に戻る。
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