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『永遠の愛を誓いますか』
「はい。誓います」
桜の花が美しい絨毯を作る春。私は高校時代から付き合っていた男性とめでたく結婚をした。人生の春に例えられる高校生の青春。
きっと周りの人達が思うより甘くて苦い恋をした私は、高校時代をそっと思い出し始めた。
__明日には明日の風が吹く
第1章 出会いは偶然 第1話
ガタン…。ゴトン…。
満員電車になりかけの車内で私は音楽を聞きながら揺られていた。電車の外には多くの桜の木が並んでおり満開を迎えていた。
春、入学シーズンのこの頃は誰しも心が踊る季節だろう。でも、私の心はどんより暗かった。
小学生の頃から続けていたバレーボールを高校でも続けようと思い、都内最強の【井闥山学園】に受験するも試験には不合格。その前にはポールに足を挟まれ複雑骨折。最初は復帰可能だったもののリハビリ中に転倒してしまい足の骨はもっと複雑な形になってしまった。その後も諦めずにリハビリを続けるも前と同じようにバレーボールをプレーすることは不可能となってしまった。
暗い気持ちのまま私が入学することになったのは「都立音駒高校」。男子バレーボール部が最近力をつけてきているとことは耳にしていたけれど正直こんな体になったからには心底どうでもよかった。 「はぁ…。」と深いため息をつきながら高校手前の駅で電車を降りた。駅から出ようとして歩き始めた数分後、不意に足がズキっとして立ち止まってしまった。松葉杖をつくほどではなくなったが、まだ完治するまでに数週間かかる足は歩く度痛さを倍増させていった。何とか駅を出るもそこまででいっぱいいっぱいになってしまい、道端で座り込んでしまった。
(まずい…このままじゃ高校初日そうそうに遅刻になってしまう…何とか動いて私の足…!!)
そう自分に言い聞かせ立ち上がるも痛さでふらついてしまった。地面に倒れてしまう。そう思った瞬間誰かが私を受け止めてくれた。
「大丈夫??」痛みが走る足を何とか踏ん張りながら顔を上げるとそこには音駒高校の制服を着た男子高校生が立っていた。癖のあるとかさ髪に私より頭2つ分ほど大きな彼は威圧感がかなりあったが、表情は穏やかで私を優しく支えてくれていた。 ハプニングだったとしても男性に支えられたことにびっくりし私は慌ただしく彼から離れた。
「だっ大丈夫です!!」 驚きと照れそれに痛みを隠すように私は精一杯笑ったが足がまたズキっとして表情を崩してしまった。
「大丈夫じゃなさそーなんだけど。どうしたの?」 彼は私の顔をのぞきこんで心配そうな表情で聞いてきた。さすがにここで大丈夫の一点張りにするのは失礼だと思ったので簡潔に事情を話した。すると彼は元々自分が乗ってきたであろう自転車を急いで持ってきて私を後ろに乗せていくと言い出した。見ず知らずの私にそこまでしてくれなくても大丈夫だと何度も断ったが最後には結局乗せてもらうことになってしまった。自転車の後ろに乗るのは人生上初めてで内心すごくドキドキしていたが彼の大きな背中が私の気持ちを和らげてくれた。
もうすぐ高校に着くというタイミングで彼が私に話しかけてきた。 「君、新入生だよね??」
「はい。御守 紬 (みもり つむぎ)と言います」
「ほ〜いい名前じゃないの。俺は黒尾 鉄朗 (くろお てつろう)。よろしくな」
「はい! よろしくお願いします。黒尾先輩」
私が彼を呼ぶと彼はなんだか浮かない顔をしていた。 「…どうかしたんですか…??」
もしかしたら自分が悪いことを言ってしまったのかもしれないと思った私は恐る恐る彼に聞いてみた。すると彼からは意外な答えが返ってきた。
「いやさ、黒尾先輩って呼ばれるのに慣れてないんだよな。後輩もみんな黒尾さんって呼んでくるからさ。」
「なるほど…?? なら私もそう呼びますね!黒尾さん!!」私がそう呼ぶと彼は春の桜に負けないぐらい赤らんだ顔で私に笑いかけてくれた。
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