あれから向井は一人仕事が続き、他のメンバーに会えない日々が続いていた。宮舘や目黒に会わなくて済むのは正直助かるが、一方で渡辺にも会うことができない。
しかしこちらから渡辺に連絡するのも憚られた。せっかく渡辺と距離が近づいたかと思っていたが、また離れてしまったような寂しさを向井は感じていた。
向井は今、ほとんど無感情で機械的に仕事をこなしている。
オフの日に気晴らしにとカメラを片手に出掛けてみたが、なかなか思うような写真が撮れず、余計にイライラが募るのでそれも止めてしまった。
そんなある日のこと。
ベッドに入り、明日の予定を確認していたら、見慣れたバラエティ番組の収録が入っていた。
🧡…めめと一緒のやつや
その番組は、デビュー以来メンバー内で向井と目黒だけがずっとお世話になっている番組だった。目黒が多忙になってからはあまり一緒に参加しなくなっていたが、共有スケジュールによると、明日の収録には目黒も来るらしい。
🧡行きたないなあ…
向井はぼやく。
しかし、今はたまたまこの状況が続いてるだけで、もうすぐ冠番組の収録やダンスの練習もある。いつまでも目黒たちから逃げているわけにはいかない。
向井はなるべく何も考えないよう、布団を被り目を閉じて眠ることだけに集中した。
その番組ではいつも向井と目黒は同じ楽屋だ。仲が良いのが伝わっているので、スタッフがわざわざ同室にしてくれている。その配慮が今日だけは向井にはありがたくなかった。
向井が楽屋に入ると、既に中には目黒がいた。
🖤康二、久しぶり!
🧡おはようさん
目黒はいつも通り爽やかだ。柔らかい笑顔で向井に手を振る。ぎこちなく感じているのは向井の方だけだ。
🖤最近、現場で一人が多かったから、康二に会えてうれしい
🧡俺も
目黒はにこにこしている。向井も平静を装って相槌を打つ。
向井は自分が卑しい、ちっぽけな存在に思えた。目黒に優しくされればされるほど惨めな気持ちが増した。
まあいい。仕事が終わったらさっさと帰ってしまおう。
向井はいつものように感情を殺して、収録に臨んだ。
無事に収録が終わり、向井が急いで帰ろうと荷物をまとめていると、目黒の方から話し掛けてきた。
🖤俺、康二に話があるんだけど
🧡……なんや?
🖤しょっぴーのこと
🧡聞きたない
反射的に向井は言い返した。
目黒は向井の反応に驚いている。
しかし向井の方では、目黒の話を、特に渡辺絡みの目黒の話を聞く余裕がなかった。
聞きたいが、聞きたくない。向井の頭の中には早くこの場を離れることしかない。
🖤康二、どうかした?
目黒は小さい子をあやすように、いっそう優しい口調で向井に語り掛けた。
しかし、向井はその目黒の気遣いにさえも苛立っていた。
🧡聞きたないもんは聞きたないんや!
まるで駄々っ子のようだと向井は思った。そしてしだいにそんな自分が情けなくて泣けてきた。
目黒を見上げる向井の目にいつの間にか涙がたまっている。
目黒は向井の肩を掴んだ。
🖤康二、いいから俺の話を聞いて
🧡嫌や!
🖤康二はしょっぴーの好きな人が誰なのか知りたいんだろ?
向井は涙が落ち着くのを待って、絞り出すように言った。
🧡どうせ……めめ……なんやろ?
穴があったら入りたい。ライバルに負けそうで悔しくて泣くなんて恥ずかしいし、情けない。でも涙は向井の思うように止まってはくれなかった。
目黒は事情がようやく呑み込めたらしく、小さくため息をついた。
そして、泣きじゃくる向井を慰めるように言った。
🖤しょっぴーが好きなのは俺じゃないよ。もちろん、舘さんでもない
向井はそこで初めて目黒と目線を合わせた。
目黒の目は嘘を言っているようには見えなかった。
🧡………そうなん?
🖤あとは、しょっぴー本人に聞いてみて
🧡それって…
目黒は微笑んだ。
🖤ちゃんとしょっぴーに康二の素直な気持ちを伝えなよ
🧡めめぇぇ…
🖤康二はほんっとにばかだな(笑)
🧡何も言い返せんわ……
🖤でも、そういうところが可愛いよ
目黒は向井を優しく抱くと、その背中をぽんぽんと叩いてやった。
🧡疑って、ごめんなぁぁぁ……
全ては向井の勘違いだったのだ。
勝手にネガティブになって、向井は心を閉ざしていた。ましてや親友を疑ってしまった。本当に申し訳ない。 謝っても謝り切れない。しかし、目黒は許してくれた。
向井は早く渡辺と話がしたいと思った。
楽屋を出るとすぐに渡辺の家に向かう。
一分一秒でも早く、渡辺に自分の気持ちを伝えたい。
向井は駐車場へと走った。
コメント
5件
えぇーそうなの?? 楽しみ🧡
この後、あと書き(まきぴよの休憩所2)書いたら寝ます💤 そちらもよかったらよろしくお願いしまーす🙇