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「義和~、ただいま~!」

私、鈴宮 愛梨澄(スズミヤ アリス)は、サプライズが大好き!

お盆休みを使い、実家へ帰っていた。そして恋人である西園寺義和と半同棲している部屋に戻るのは、「明日」と伝えていたけど。

サプライズで一日前倒し、今日、帰ってきた。

きっと義和は驚くに違いない。

そう思って鍵を開け、玄関にスーツケースは置いたまま、1LDKのリビングルームへと向かう。途中、廊下の鏡で身だしなみをチェック。

今時女子を目指しているわけではないから、髪も染めることなく黒髪でサラサラロング。身長は両親が長身なので、そのおかげで周囲の女子の平均より、数センチ高いと思う。

胸もウエストもお尻も人並みだと思うが、この身長のおかげで、モデルと間違えられることもあるのは……ラッキーだと思う。

白のTシャツにジーンズというラフな格好もなんとなく様になるのも、この身長のおかげかな。ということで身だしなみは問題なしと。

そのまま突き当りのドアを開けると、目に飛び込んでくるのは、ソファとテーブル、正面に窓。

テーブルにはマグカップが二つ置かれ、ケーキを包んでいるセロファンのったお皿が二つ、目についた。

あれ? 来客があった?

でもリビングルームには誰もいない。

すぐ右手にあるベッドルームのドアを開けながら「義和、寝ているの~?」とドアを開けた瞬間。

「え、何コレ!?」

私と義和が普段は一緒に寝ているダブルベッドに、見知らぬ女がいる。しかも今まさに、ノーブラ状態でTシャツに首を通した直後。巨乳の胸が半分隠れた状態で見えていた。

さらに、義和はそのそばで、上半身裸のまま、ズボンを履こうした状態でこちらを振り返っていた。

三人ともフリーズし、動けない。

まるで映画やドラマで見たことがあるシーンだ。

これは……間違いない。

同棲している彼女の留守中に、男が浮気をした現場ってやつだ。

つまり浮気相手とすることをしている現場に、私は何も知らず、踏み込んだと。

最悪だった。

サプライズするはずが、彼氏のこんな姿を見ることになるなんて。

もうドアを閉め、ダッシュで玄関へ向かう。

スーツケースを手に、逃げるように部屋から飛び出した。

***

なんだったのかな、と思う。

義和とは大学三年生の時に交際が始まり、同い年で、お互いアラサーとなるこの年齢まで交際が続いた。10年近い交際で、1年前から半同棲を始め、30歳になったら籍をいれようかと話していたのに。

実家に帰省した時も「いよいよ私、義和と籍をいれる! ついに結婚だよー」と話していたのに。

せっかくの夏季休暇の最後の二日間は、義和との修羅場で終わった。

つまり、別れたわけだ。

ただ、幸いだったのは、半同棲だったこと。

つまり私はまだ自分の一人暮らしのマンションの契約を続けていた。私のマンションは東京23区内にあった。でも義和のマンションは千葉にある。残業して帰りが遅くなった時、私は自分のマンションへ帰っていた。だから完全な同棲ではなく、半同棲。

よって義和の部屋にある私物で、持ち帰りたいものはそんなになかった。最低限必要な物を持ち出し、鍵を返すと「ハイ、サヨウナラ」は意外と簡単にできた。

義和の部屋から立ち去る際、私は奴に尋ねた。どうして自身の会社の後輩であり、入社1年目の女と浮気をしたのかと。対する彼の答えは「愛梨澄はさ、結婚、結婚って、最近、プレッシャーかけてきて、嫌だったんだよ。それに比べたら、咲ちゃんは『結婚なんてまだまだ考えていません~。だってぇ、咲は社会人になったばかりですしぃ~』って言ってくれたから」だった。

10年近く交際したら、その先に待つのは結婚だと思っていた。社会人になったばかりの頃は、お互いに仕事が忙しく、結婚どころではない。でもそれが落ち着いた27歳ぐらいから、両親や親戚からも「そろそろ結婚しないの? もうすぐ30歳になるのでしょう」と言われるようになり、結婚を意識し始めて……。

それで半同棲も始めたというのに。

まさか結婚をプレッシャーと感じ、大学出たての年下女と浮気をするなんて!

本当に、最低だ。

だが持つべきものは友。

既婚の友達も多いが、独身の友達もまだ多い。

彼女達はハートブレイクした私のために、毎週のように飲み会を開いてくれたり、街コンへ参加するようにすすめてくれて、マッチングアプリをダウンロードするよう、アドバイスしてくれた。

こうして元カレ……義和(クソカズ)を忘れるため3カ月。

恋活をした。

だが。

なんだろう。

恋人って作ろう、作ろうとしてもできない……ということを学習した気がする。

「12月のクリスマスに向け、彼女が欲しいと思う男子は増えるから、今、頑張るべきだよ、アリス!」と友人は声をかけてくれるが……。

正直、疲れてしまった。

何せ会う人みんな、初対面。初めての相手にする自己紹介。

就活をしているわけでもないのに、同じことを同じような笑顔で繰り返すことに、むなしくなってしまったのだ。

その結果、今の私は……。

もはや干物女状態。

ハロウィンが終わった直後から、街はクリスマスに向け、浮足立ち、イルミネーションが輝いている。世間が華やぐ一方で、私は土日になると引きこもり状態。たまに女友達と飲みに行くぐらい。

そしてその出会いは唐突に訪れた。

土曜日の夕方。

晩御飯でチャーハンを作った。

完成し、換気扇を止めると、キッチンが静かになった。

すると唐突に猫の鳴き声が聞こえた。

にゃーお、みゃーおと猫の声がする。

この猫の声はどこからするのかと考え、どうやら換気扇から聞こえていると理解する。そしてこの換気扇はマンションの外の廊下につながっていることを思い出した。

ここはマンションの12階だ。

12階の廊下に野良猫が迷い込んできている?

まさかそんなはずはと思いつつ、玄関に向かい、ドアアイを見る。

私は12階の角部屋に住んでいる。見えるのはお隣の1202号室の廊下あたりまでだが、そこに猫は見えない。でも、みゃーぉ、にゃーおの声は、さっきより近く感じる。

いるのかしら、猫は?

そう思い、ドアを開けると……。

足元を何かが駆け抜けていった。

これには驚き「うわあぁ」と叫んでしまう。慌てて振り返ると、ワンルームの部屋に、真っ白でふさふさの長毛種がいる。

ビックリした。

どう考えても、ふさふさでもふもふの毛は、お手入れをされており、飼い猫に見える。多分、これはチンチラだと思う。

ひとまず玄関のドアを閉め、部屋の中へ向かうと、チンチラは驚き、どこかに隠れようとする。でも私の部屋には、猫が隠れることができるような場所がない。

ソファはなく、テーブルと椅子。ベッドの下には収納ボックスがぎっちり置かれているから、入り込めない。

猫を実家で飼っているので分かるのだけど、見知らぬ家にやってきた猫は、まず物陰に隠れ、様子を伺いたいはずだが、それができない。

それではなくても今、チンチラは心臓がバクバク状態のはずだ。

自ら飛び込んだ部屋であるが、そこは自分の飼い主の部屋ではない。

知らない匂い、見たことのない家具、完全に動揺していると思う。

「猫ちゃん、どうしたの? あなたどこから来たの?」

私が近づくと、猫は逃げる。

逃げるが隠れられる場所がなく、完全に怯えてしまっていた。

これはどうしたらいいのか。

このマンションはペット可の物件だった。

きっと同じフロアの住人の飼い猫だと思うのだけど……。

今日は日曜日。管理人さんはお休み。いたとしても夕方17時で帰ってしまうので、管理人さんを頼るのは、そもそも無理だった。そしてマンションの管理会社もお休み。

あ、でも24時間受付の電話番号があると、入居時の説明書に書かれていた気がする。一旦そこに電話してみよう。

本棚から賃貸契約の書類をいれたファイルを見つけ、問い合わせをしてみると……。「それは我々の範疇ではないので、警察に連絡してほしい」と言われてしまう。

猫で警察を呼ぶの!?

それはさすがに躊躇われた。ため息をつき、ファイルを本棚にしまっているまさにその時。チンチラが部屋を飛び出した。

どこに行ったのかと思い、探すが、いない!

そんな、隠れるような場所は洗面所、お風呂場、トイレ、キッチン、廊下、玄関しかないはずなのに。そのどこにもいない。

まさか、と思い、確認する。

いた……!

洗濯機の下に潜り込んでいた。

洗濯機の下は想定外! 奥の方にしっかり入り込み、出てくる気配はない。手を伸ばして捕まえようとするが、ますます奥に入り、完全に籠城体制のチンチラには、お手上げた。

うーん、どうしたらいいのかしら。

すると。

声が聞こえた。

何か呼びかけているような声が、換気扇の方から聞こえる。

え、幽霊!?

そう思い、一瞬怖くなった。

だが、換気扇はマンションの廊下につながっている。

つまりは廊下で声を挙げている人がいる!?

いや、これはこれで怖い。

幽霊とリアルな人間、怖いのはどっちって後者ですよね!?

なぜ廊下で……。

そう思ったが。

普通、廊下で呼びかけをしながら歩くなんて誰もしない。

誰かを探しているから、声を出しているのでは?

誰か……ではない!

もしかして、猫を探している……?

そう思い、でも念のためチェーンをかけた状態で、ドアを開ける。

ドアを開ける音に反応し、チンチラは洗濯機の下から出てくるかと思ったが、そんなことはない。猫様は絶賛籠城中だ。

細い隙間から廊下を見ると、「シュガー」と呼びかけながら、こちらに背を向け歩いている男性がいる。その後ろ姿は明るいグレーのスウェットで、髪は亜麻色でいわゆるウルフヘア。

シュガーって砂糖? そんなこと言いながらスウェットで廊下を歩く男性は、非常に怪しく感じる。それに猫の名前がシュガー? ……猫を探しているわけではないのかもしれない。

静かにドアを閉めようとしたら、その男性がこちらを振り返った。

そしてその顔を見てもうビックリ!

知っている、その顔!

モデルであり、動画配信者で、最近、ドラマや映画にも出演している青山 悠真(アオヤマユウマ)だ!

年下男子と年上男子二人はフツーの女子に夢中です

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