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泣きました、ボロ泣きです お前やっぱり激重感情持ってたりしない?大丈夫??
「カナリアの気楽な生活」
どうも皆様。バレナ・カナリアです
ええ、そうです
『混沌の魔女』イラベル・イトラン様の従者
安定を愛する26歳独身長髪男です。
取り柄は顔とスタイルの良さ、家事能力です。
今日はそんな私について少々お話させて下さいませ。
私の両親は俗に言う毒親というものでして
犯罪に手を染めているとかなんとかだった様です。
思い出したくも無いので詳細は省きますが、
まぁそのせいで幼少期はとても苦労しました。
そして幼少期の私はかなり感情の起伏が乏しく
お恥ずかしいことに捻くれた子供でした。
当時の私の感情の希薄さを例えるとすれば…
メルマさんLv100億といったところでしょうか
おっと、本人に聞かれてしまっては大剣の的にされてしまいますね。
しかし、そんな私の人生にある大きな転機が訪れました。
その日私は部屋でクソ野…両親の罵声が聞こえる中
眠ろうとして目を閉じていました。ですが、私がふと気を緩めた頃には
両親の罵声は悲鳴のように変わっており
幼き私は好奇心のような不信感のような感情に負け
殴られるとわかっていながら両親のいる場所に向かいました。
するとなんということでしょう!
家にとてもとても巨大な烏がいたのです。
そう、烏です。それも超特大サイズのです。びっくりですよね
ド深夜の部屋に悲鳴をあげてる両親とそれを捕まえる烏がいたんですよ
こんなの誰だって驚きますよね。
そして私が烏を眺めながら「羽落とさないでほしいな…」と思っていると
烏の不気味な黒い瞳が私のことを捕えました
まぁその烏さんも今となれば可愛い子なのですがね。ほんとですよ?
ですがその烏は次の瞬間私に飛びかかり
そのまま、幼き私の意識は飛びました。
そこが処刑場だと気が付くまで幼い私でも
そう時間はかかりませんでした。
石畳の冷たさを背中で感じ鉄のような嫌な香りが漂っていて
空ががやけに高くいやに静かだった気がします
そしてその場で私が最初に思ったことは
「随分趣味の悪い夢だなぁ」だったのですが
それはどうも夢ではなく、現実だったようですので
両親は既に片付けられ、結果としてそこにいました
本当に汚らしくて一瞬吐き気を催しましたが耐えましたよ
幼い私、偉いでしょう。それに実に不運ですね、知ってます。
何を考え、行う訳でもなく
私がただ、もう動かない赤くなった両親を眺めていると
「オボッチャン大丈夫?」と声をかけ私を覗き込む若い女性が居ました
その女性は床にいる赤く染ったモノと対象的なくらい綺麗な白が特徴的でした
もう分かりますでしょう?
その方こそ、イラベル・イトラン様
後に私の主人となるお方なのです。
私は音もなく突然話しかけられたことに驚いて一瞬呼吸が止まりました。
「ん〜、罪人以外遊んじゃダメって言われてるし〜」などと言っていて、何か私を品定めするような目で見つめていましたが
私は無意識のうちに口が開き、
「お姉さんがやって下さったのですか?ありがとうございます」
と言いました。捻くれた子供にしては珍しい本心でした
だって本当に感謝したかったのですもの。
私の声を聞いた時、イラベル様は黙り込み数度瞬きをして
またすぐにいつもの底の見えない笑みに戻ったのをよく覚えています。
その時なんとなく「あ、この人頭おかしい」と思ったことは
一応墓まで持っていくつもりです
そこからのことは本当にただの流れ作業…
というか嵐のようなものでして
説明も確認も、選択肢もなにもありませんでした。
ですがそれが私の人生において一番最初の保護であったことは間違いありませんね。
まぁ、だからといってそこからの人生が安定していたことはもなかったのですがね。
だって聞いてくださいよ
私ってば10代前半でイラベル様に強制的に引き取られ
そこから10年以上片時も休む暇がないままイラベル様に仕えていたのですよ?
従者としての通常業務以外にもおままごとやお絵描きの後始末にイラベル様のお召し物の修繕。しかも修繕した次の週にはまた何処かしらがシミになってるか修繕が必要になっているの繰り返し。毎日毎日頭痛に悩まされ苦労の耐えない生活が、私の従者人生でした。
ですが!そんな生活ももうおしまいです
これからの生活のなんと気楽なことか!
所構わずな命令は降ってきませんし先回りしてトラブル対策をする必要はありませんし生活基準も単純になります
彩りと栄養を考えた食事を毎日三食作る必要も無いですし、掃除範囲が極端に減りましたし、これからは多少起きる時間がズレても問題がないのですよ
知ってます?男一人分の洗濯物の量を。楽すぎません?最高ですよ。だってもうあかぎれするほど手洗いする必要も、スカートやブラウスの修繕や刺繍をする必要もないのですよ?
そうそう、最近煙草を再開したんですよ。
元々嗜んでいたのですがイラベル様の為に禁煙をしていたのですので…って、これでは私が好き好んで禁煙していたようになってしまうでは無いですか。
まぁ、何はともあれ
気楽なこの生活を満喫しなければいけませんね。
独身男なりに頑張っていきましょうかね
ええ、一人で酒を飲んで一人で煙草をふかして一人で食事をして一人で眠り一人で起きますよ
これが私がずっと望んでいた安定なのです
誰にも振り回されず誰にも邪魔されない。
これが、本当の幸福なのでしょう?
でないと、この静けさにもちゃんと意味が着くはずです。
ほら、私
ちゃんと一人を満喫できているでしょう?