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颯真が成仏して3ヶ月が過ぎた。
梨那は、新婚旅行で行ったケアンズでハネムーンベイビーを授かった。
『ホス狂いの風俗嬢』は卒業して、家庭を守る主婦になった。
桜志郎は「楽に大金を稼げる」と聞いて、違法薬物の『運び屋』になった。
スーツケースに隠した薬物が見つかり、海外の空港で逮捕された。
美緒は、心身のバランスを崩して〈歯軋り〉することが増えた。
しばらく引き籠っていたが、実家近所のカフェに行くようになった。
総合商社を退職した後、アルバイトしていた店だ。
カフェのオーナーに「また働いてほしい」と言われた。
「よろしくお願いします」
美緒は「一つだけ」自分に言い聞かせた。
(これからは相手に自分を伝えよう。相手のことも教えてもらおう)
これだけで、美緒の未来は大きく変わる。
人生は何度でもやり直せるのだから。
「いらっしゃいませ。御荷物をお預かり致します」
香帆は、宅配便の営業所で〈正社員〉として働いている。
美緒の後に入社した女性は、5歳年上のパート主婦だ。
(パート主婦と組むと、仕事の負担や責任が重いな)
(美緒の苦労や気持ちが解った)
美緒のすべては理解できない。
でも相手の立場になれば、少しは解かる。
「大変だ」と思うことも増えたが、天国から颯真が見守ってくれる。
「いつ、何に生まれ変わるか判らない」って言ってたけど、颯真はずっと颯真の気がする。
香帆が天国に行ったら「久しぶりやな。弁当作ってくれや」っていうはずだ。
(それまで一人で頑張ろう)
香帆は、お客様から荷物を預かった。
「こちらの御荷物を神戸にですと、1500円でございます」
[おわり]