テラーノベル
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「───だから、そいつのことをよく分かってる奴は、そいつのことが嫌いな奴なんだよ」
まるで映画のワンシーンだ。名台詞を言うと書かれた台本。一同リアクションと書かれたテレビの台本。
そんなものよりも、断然輝いている。
「だから、いい?」
───君達は、ずるい大人だ。
「トラゾーの”嫌い”は、反対言葉なんだよ」
まるで仕掛けられたトリックが、全て解決したかのような爽快感。繋がれた鎖が壊れてゆく開放感。数本の糸が一本になる喜び。
───トラゾーさんは、僕のことが嫌いらしい。
きっとそれは嘘なんだろうけれど、脚本をする彼にとってはなんてことのない軽口だ。
ただ、僕にとってはそれは軽口なんかじゃない。ひどく立派な、小説の一文のような言葉だ。
「──────僕も、みんなのこと大嫌いですよ」
自分には、きっと相手の真似をしてこう返すことしかできない。
───こう返すことを、望んでいるんだろう?
「俺も、大大大っ嫌いだよ」
ぺいんとさんも、きっとその返事しかできない。
ただ、それでもいいのだ。
暖かいのだ。優しいのだ。安心するのだ。泣きたくなるのだ。眠くなるのだ。
───ああ、僕には語彙力がない。文豪でもなけりゃ、文章を読むことさえ苦手だ。
「そんなこと、とっくのとうに知ってますよ。だって僕、嫌いなんですから」
「奇遇じゃん! 俺も嫌いだったから知ってたよ」
「奇遇じゃないですよ。必然なんです」
ふざけた会話で、もうわけがわからない。頭が混乱して仕方がない。けれど、それでも笑ってるのは意味わかんないからだ。
知識のある人と話すのは面白いと聞く。 だからといって、知識がない人が面白くないわけではない。 ただ、相性が合うか合わないかの問題だ。知識のある人同士が話し合えば、もちろん意気投合は確実だろう。
バカ同士が話し合えば、意味がわからなくなって面白い。
「アホ」
「バカ」
バカでアホだから、こんな罵り合いしかできないことに対してまた笑いが込み上げるものなのだ。
僕たちはきっと、すごいくらいバカだ。それはきっと知識に関することではなくて、考え方が、なのだ。
……………
「おおー! 痛みがなくなりましたよ!!」
これまた朝一に元気よくそう言ったのはトラゾーさんだ。
どうやら下腹部の怪我は完治───というわけではないけれど、痛みは完全になくなったらしい。
いつでも元気だな、なんて思いながら、あっ、と声を出した。
「トラゾーさん!!」
彼の服の裾を引っ張ると、相手は困惑したような、どこかぽかんとした表情でこちらを見据えた。
自分は大きく息を吸い、その言葉を口にした。
「僕、トラゾーさんのこと嫌いですからね! わかりましたか?」
人差し指をピンと相手を指せば、相手は驚きながらも、たちまち笑顔でこう言った。
「俺がしにがみさんのことを嫌いになった瞬間から、そんなこと分かってましたよ」
パグモチ
1,611
♡玲香レイ໒꒱.+
732
#とかね?( 笑 )
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